災害

2026.09.30(水)

【速報】人工衛星が捉えた台風25号による千葉県の記録的大雨
-衛星降水観測と水循環シミュレーションで見る豪雨と水災害-

2026年9月20日から21日にかけて、台風25号の影響により千葉県を中心とする関東地方で大雨となり、広い範囲で浸水や土砂災害など甚大な被害が発生しました。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。
JAXAでは、全球降水観測計画(GPM)主衛星による降水観測に加え、複数の衛星観測データを組み合わせた衛星全球降水マップ(GSMaP)により、継続的に降水の状況を把握しています。さらに陸域水循環シミュレーションシステムToday’s Earth(TE)を用いて、河川流量や土壌水分量などを推定しています。JAXA地球観測研究センターでは、今回の大雨や浸水被害の特徴を明らかにするため、GPMおよびTEデータを解析しました。

【概要】

9月16日に発生した台風25号は、21日に大型で強い勢力を保ちながら伊豆諸島や関東甲信地方へと接近しました。千葉県では長時間にわたって強い雨が続き、21日の特定の時刻における24時間降水量が市原市牛久で392.5 mm、佐倉市で322.0 mm、千葉市で352.5 mmに達したと報告されています。(※1)この豪雨により、千葉県内では14河川で浸水が発生したほか、印旛沼では複数箇所で堤防の決壊が確認されました。(※2)

【GPM主衛星による降水の三次元観測】

GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)は、レーダを用いることで、雨や雪が上空のどの高さに、どの程度存在しているのかを三次元的に観測することができます。
GPM主衛星は9月21日午前0時頃に、静岡県の南方海上に位置していた台風25号と、関東付近に広がる降雨域を捉えました。

GPM/DPRが捉えた台風25号と関東地方の降水(2026年9月21日0時ごろ)

DPRの観測から、台風本体に伴う降水域が海上で発達し、台風の眼の周辺では25mm/hを超える強い降水が確認されました。また、台風本体から遠く離れた千葉県、茨城県、神奈川県などの関東地方でも、強雨域が5 kmの高さまで発達した雨雲がかかっており、台風が関東地方へ最接近する前から強い雨が降っていたことがわかります。

【GSMaPによる降水観測】

GSMaPは、GPM主衛星をはじめとする複数の衛星観測データから全球の降水分布をモニタリングしており、陸上だけでなく海上も含めた広範囲の雨を継続的に把握できます。

図2:GSMaPが捉えた2026年台風25号による降水。赤丸は台風25号を示す。(左)1時間降水量(右)積算降水量

台風25号は、9月16日にマリアナ諸島で発生し、19日に小笠原諸島へ接近、21日に伊豆諸島や関東地方に接近しました。
関東周辺では、台風25号の発生前から降雨が続いていました。また、台風25号の関東地方への接近に伴って降水域が広がり、千葉県周辺で強い雨が繰り返し発生する様子が確認できます。GSMaPによる、台風25号が発生した9月16日21時から台風が関東地方を通り過ぎる9月22日の0時までの積算降水量を見ると、関東地方の沿岸部では300mmを超える降水量が確認されました。

【Today’s Earthによる河川の応答】

Today’s Earthは、JAXAと東京大学が共同で研究開発している陸域水循環シミュレーションシステムです。日本域版のToday’s Earth – Japan(TE-Japan)では、気象データを利用したシミュレーションにより、河川流量、河川水位、氾濫面積割合、土壌水分量などを約1 kmメッシュで推定しています。

図3には台風25号が接近した際の千葉県を中心とした関東地方周辺の降水量と、TE-Japanによって推定された河川流量、氾濫原水深の変化を示しています。

図3:台風25号接近時の降水量とTE-Japanによる推定結果
左から順に降水量、TE-Japanによって推定された河川流量、氾濫原水深

この図から、台風の接近により降水量が増加すると、それに対応して千葉県を中心に河川流量の増加が推定されていることがわかります。また、氾濫原水深の大きい領域が広がっている様子も推定されていることがわかります。

千葉県内では、複数の河川で水位が上昇し、観測水位がはん濫危険水位を超過した水位観測所も見られました。
図4にははん濫危険水位を超過した水位観測所のうち、桑田(夷隅川)、雨城橋(小櫃川)、牛久(養老川)の3つの水位観測点における、流域平均降水量、TE-Japanにより予報・推定された河川水位、観測された水位の推移を示しています。

図4:水位観測所における流域平均降水量、TE-Japanによる予報・推定水位および観測水位の推移
TE-Japanにより予報・推定された河川水位(中)は黄~青色は予報された河川水位、赤色は解析雨量を入力して推定された河川水位を示している

図から、雨量の増加とともに河川水位が上昇しており、この様子をTE-Japanのシミュレーションでも、観測された河川水位の変化を概ね再現できていることがわかります。また、39時間先までの予報河川水位(黄~青)をみても、これらの河川水位の変化をTE-Japanが事前に予報できていたことがわかります。

【最後に】

今回紹介したGPM/DPRの観測データは、気象庁の数値気象予報に定常的に使われており、日々の天気予報でも役立てられています。
JAXAは第5期中長期計画にて重点テーマ「水災害・水資源管理」として、国内外の水災害・水資源問題の解決に役立てることを目指し、GSMaPやToday’s Earthの研究開発を進めています。
今後もJAXA地球観測研究センターでは、衛星による降水観測や水循環シミュレーションを通して、気象や防災判断に役立つ情報の提供を続けていきます。

【関連サイト】

JAXA GPMウェブサイト
JAXA世界の雨分布速報
Today’s Earth Japan
気象庁でのJAXA衛星降水データの利用方法の改良により降水予測精度が向上します(JAXA, 2022年6月30日)
重点テーマ:水災害・水資源管理

参考:

※1:特定期間の観測史上1位の値 更新状況(2026年 9月19日~2026年 9月22日)(気象庁)
https://www.data.jma.go.jp/stats/data/mdrr/periodstat/20260917a/20260922/24/rank_update.html#pre24h_m

※2:令和8年台風第25号による被害状況等について(第10報) (国土交通省 令和8年9月26日)
https://www.mlit.go.jp/common/002024380.pdf

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