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リモートセンシングと放射伝達

 

リモートセンシングって何?

リモートセンシングとは、遠く離れたところ(リモート)から、対象物に触れずに対象物の形や性質を測定する(センシング)技術のことです。
地球観測衛星は、地球のはるか上空の宇宙空間から、地球上で起きる自然現象や災害、私達人間の活動が地球にもたらす変化を測定しているので、まさに「リモートセンシング」を行っているといえます。

地球観測衛星によるリモートセンシング

では宇宙からの地球のリモートセンシングとは具体的に何をしているのでしょうか?
地球観測衛星は、地球のはるか上空の宇宙から、大気や地表面近くの地球環境の状態や自然現象を測定するために、主に地球から放射・反射される電磁波を観測しています。

「電磁波」というと、最も身近な例として、私達の目に見える「可視光」があります。しかし、図1に示すように、可視光とは電磁波の中のほんの一部分の波長帯の電磁波のみを指します。他にも可視光よりも波長の長い、「赤外線」や「マイクロ波」と呼ばれる波長帯の電磁波が存在し、地球観測において広く用いられているのは可視光線、赤外線、マイクロ波の波長帯の電磁波です。

地球観測衛星に搭載されているセンサ(観測機器)は、これらの広い波長域の電磁波をキャッチすることができるので、図1の例で示すような、普段私たち目で見ることのできない地球の姿を捉えることが出来ます。

図1 電磁波の波長と呼称。波長域ごとに得られる地球観測データの例。

リモートセンシングの仕組み

では地球観測衛星は、様々な波長の電磁波をどのように利用して地球の様々な姿を観測しているのでしょうか?比較的波長の短い「可視光・近赤外」と波長の長い「熱赤外・マイクロ波」の場合について、観測の仕組みを図と共に簡単に紹介します。

まず、可視光・近赤外の波長帯の光は、太陽光(「太陽放射」)に多く含まれるため、可視光・近赤外を観測する地球観測衛星は、太陽光が地球の表面等で反射・散乱・吸収した電磁波を観測しています。例えば、図2に示すように、可視光・近赤外は地表面の状態(植物か土か水か等)によって、強く反射される電磁波の波長が変化するので、この特性を利用することで地表面の土地被覆情報(都市か森、及び植生の種類等)などが衛星データから得られます(図3 (a))。

一方、熱赤外・マイクロ波の波長帯の光は、地球自身(地表面や大気)が放射する光に多く含まれるため、この「地球放射」を利用します。普段私達の目には見えないですが、地表面や大気からは熱赤外・マイクロ波帯の電磁波が常に放射・散乱されており、衛星は図2のように、地表面や大気の状態によって変化する地球放射の強さを捉えます(図2にマイクロ波帯は示されていませんが、マイクロ波の場合は観測周波数間での相対的な放射の強さを利用します)。

地球放射を観測することで、地表面の温度や大気に含まれる水蒸気量(図3 (b))などの状態を知ることができます。これらの観測データは、太陽の光を必要としないため、昼夜を問わずにデータを得ることが出来るという強みがあり、気象予報等の身近な分野でも活用されています。

また、太陽光の反射・散乱光や、地表面・大気からの放射光を受け取るだけでなく、能動的に電磁波を射出し、その反射・散乱光を観測するセンサを搭載した地球観測衛星もあります。初めに説明した電磁波を受け取ることに特化したセンサを「パッシブセンサ」と呼ぶのに対して、こちらは「アクティブセンサ」と呼ばれています。

図2波長域ごとのリモートセンシングの仕組み
図3(a) 可視・近赤外センサを用いた関東平野の土地被覆分類データ
図3(b) マイクロ波放射計で観測した大気中の鉛直積算水蒸気量データ。

放射伝達計算について

では、図2の衛星で観測した太陽放射や地球放射の強度から、どのようにして図3で示すような土地被覆情報や大気中の水蒸気などの物理量に変換しているのでしょうか?それを知るには、もう一歩踏み込んで、宇宙からのリモートセンシングを行う上で欠かせない放射伝達計算について学ぶ必要があります。

放射伝達計算とは、太陽からの光がどのように大気中を伝搬して地表面に届き、また地表面や大気からの散乱光や放射光がどのように伝搬して宇宙空間へと出ていくかを計算するものです。この放射伝達の計算式をもとに、衛星で観測された放射強度を地表面や大気の情報に変換することができます。図4に太陽放射と地球放射の放射伝達の概念図を示していますが、太陽放射も地球放射も、地表面や大気による吸収・散乱・放射を何度も繰り返した後に宇宙空間へ出ていった結果を衛星で観測しています。

図4では単純な例を示していますが、実際の宇宙からのリモートセンシングでは、植生、積雪などの地表面の状態や、雨や風などの大気の状態も放射強度に影響します。衛星によって観測された情報から、実際の地球や大気の状態を推定するためには、これらの複雑な過程を可能な限り考慮した放射伝達計算をもとに、物理量を推定するアルゴリズムを構築する必要があります。宇宙からのリモートセンシングにおいて、放射伝達計算は地球や大気の状態をより正確に推定するためのとても重要な基盤となっています。

図4 太陽放射と地球放射の放射伝達概念図

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