
物理量プロダクトの紹介
地球観測衛星は、単純なRGB画像だけでなく様々な地球物理量を観測しています。目的とする物理量に応じて様々なアルゴリズムが存在し、それらに合わせて観測する波長や計測手法も異なります。ここではJAXAが提供している代表的な地球物理量プロダクトと、そのアルゴリズムについて簡単に紹介します。
プロダクト名 | 作り方 | 代表的な衛星 | 参考 |
True Color RGB画像 | 肉眼で見える色合いに近いカラー画像プロダクトを表します。赤色、緑色、青色の波長域で撮像された3枚の画像を合成することにより作成可能です。直感的に理解しやすいため、様々なシーンで活用されています。![]() 図 1 True Color RGB合成画像(2018年1月23日バハマ諸島/GCOM-C) |
ALOS ALOS-3 GCOM-C GOSAT GOSAT-2 |
GCOM-C_LTOA_ATBD https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/data/ATBD/ver1/V1ATBD_G2ABC_geo_Takaku_20200908.pdf |
正規化植生指数(NDVI) |
Difference Vegetation Index)は、植生の被覆や活性度合いを表すプロダクトです。一般に植物の葉は赤色や青色を吸収し、緑色や近赤外線の波長域の光をよく反射します(図2)。そのため以下の式でNDVIを計算することにより、植物の分布を調べることが可能です。 ![]() 図 2 一般的な植物の吸収、反射の特性 ![]() 図 3 NDVI(2020年4月日本域/GCOM-C) |
GCOM-C | GCOM-C_VGI_ATBD https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/data/ATBD/ver1/ATBD_T2A_VGI_JAXA_v1.pdf |
エアロゾル光学的厚さ | 大気中に存在するエアロゾル(微粒子)の光学的厚さを表すプロダクトです。基本的には衛星観測値から地表面や海面反射成分を差し引いた後の大気による散乱成分から推定することが可能です。また一般に近紫外線域や偏光観測を用いることで地表面の反射成分の寄与が小さくなり精度良くエアロゾル成分を推定することができます。砂漠等の土壌粒子が舞い上がった場合や都市域や森林火災が発生した地域等で高い値となります。![]() 図 4 エアロゾル光学的厚さ(2020年9月全球/GCOM-C) |
GCOM-C | GCOM-C_ARNP_ATBD https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/data/ATBD/ver2/V2ATBD_A3AB_ARNP_Yoshida.pdf GCOM-C_ARPL_ATBD https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/data/ATBD/ver2/V2ATBD_A4AB_ARPL_Mukai.pdf |
クロロフィルa濃度 | 海表層における植物プランクトンに含まれるクロロフィルα(光合成に必要な色素)の濃度を表すプロダクトです。クロロフィルαに特有の青と赤の光吸収の違いを利用し、可視光域の波長を組み合わせて推定することが可能です。漁場探査や海洋水産資源の分布、海域における炭素循環の把握等に使われています。![]() 図 5 クロロフィルα濃度(2021年3月全球/GCOM-C) |
GCOM-C | GCOM-C_CHLA_ATBD https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/data/ATBD/ver2/V2ATBD_O3AB_Chla_Murakami.pdf |
積雪・海氷分布 | 積雪及び海氷の分布を表すプロダクトです。雪や氷のスペクトルの特徴を元に、様々な波長域(特に可視光、赤外線)を用いて積雪や海氷の分布を検出します。また、氷と海の放射率の違いをマイクロ波で観測し、海氷密接度(海面を覆う海氷面積の割合)を算出することもできます。地球温暖化による海氷面積変化のモニタリングや北極海航路の決定等に使われています。![]() 図 6 積雪・海氷分布(2020年2月全球/GCOM-C) |
GCOM-C GCOM-W |
GCOM-C_SICE_ATBD https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/data/ATBD/ver2/V2ATBD_C1C2_stamnes_r1.pdf |
海面水温(SST) | SST(Sea Surface Temperature)は、海面の温度を表すプロダクトです。一般に物体はその温度に対応して電磁波を放射することが知られています。海表面から放射される熱赤外線やマイクロ波を捉えることにより、海面の温度を推定することが可能です。漁場探査やエルニーニョ/ラニーニャ現象、その他様々な気象現象の研究に使われています。![]() 図 7 SST(2021年4月1日全球/GCOM-W) |
GCOM-W GCOM-C |
GCOM-C_SST_ATBD https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/data/ATBD/ver2/V2ATBD_O1AB_SST_Kurihara_r1.pdf GCOM-W_L1L2_ATBD https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_W/data/doc/NDX-120015A.pdf |
降水量 | 降水量の2次元分布や3次元分布を格納したプロダクトです。一般に雨粒はマイクロ波の波長域に感度があります。衛星に搭載されたセンサを用いてマイクロ波の強度を捉えることにより降水量を推定することが可能です。また、降雨レーダを用いて衛星から電波を発射し、雨粒や雪粒子からの反射強度や返ってくるまでの時間を調べることにより降水強度の3次元分布を把握することも可能です。![]() 図 8 衛星による降水量の観測手法 ![]() 図 9 降水量の3次元分布(2019年7月4日九州地方/GPM) |
GPM GCOM-W |
GPMDPR_L2_ATBD https://www.eorc.jaxa.jp/GPM/doc/algorithm/ATBD_DPR_201811_with_Appendix3b.pdf |
土地利用土地被覆図(LULC) | LULC(Land Use and Land Cover)は、土地利用の状況や土地被覆分類を表すプロダクトです。様々な波長域の光を観測することにより、地表面の被覆の違いを分類することが可能となっています。農業、防災、都市域の把握や自然環境のモニタリングなど様々なアプリケーションで活用されています。![]() 図 10 10 m解像度LULC Ver.21.03(日本域/ALOS-2, Sentinel-2, Landsat-8) |
ALOS ALOS-2 ALOS-3 |
ALOS_HRLULC https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/jp/dataset/lulc_j.htm |
全球高精度デジタル3D地図(AW3D) | AW3D(ALOS World 3D)は、世界最高水準の2.5m/5m解像度で世界中の陸地の起伏を表現した3D地図プロダクトです。ALOSの3D立体視に特化したセンサで撮像された画像を用いて推定しています。地図の整備や自然災害の被害予測、水資源の調査など、様々な用途に活用することが出来るのが特長です。![]() 図 11 AW3D(エベレスト) |
ALOS | ALOS_AW3D https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/jp/dataset/aw3d_j.htm |
温室効果ガス濃度 | 二酸化炭素やメタン、一酸化炭素といった温室効果ガスのカラム平均濃度を表すプロダクトです。一般に気体分子は特定の波長域で吸収帯を持ちます。衛星に搭載されたセンサを用いて吸収スペクトルを測定することにより、各気体が大気中にどれだけ存在するか推定することが可能です。地球温暖化を予測する上で様々な研究に使われています。![]() 図 12 二酸化炭素濃度(2019年5月全球/GOSAT-2) |
GOSAT GOSAT-2 |
GOSAT-2_PartialcClumnGHGs https://www.eorc.jaxa.jp/GOSAT/GPCG/guide.html |
■各衛星のプロダクト紹介ページ
JAXA地球観測研究センター(EORC:Earth Observation Research Center)により、運営・公開されている各衛星の紹介ページを以下に示します。
GCOM-C
https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/data/product_std_j.html
GCOM-W
https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_W/data/data_w_product-2_j.html
GPM
https://www.eorc.jaxa.jp/GPM/index.html