重点テーマ:インフラ管理DX

― インフラ点検の効率化や予防保全に向けた衛星観測データの活用 ―

目指す便益:予防保全型メンテナンスの実現と海外への事業展開

衛星観測による道路土工構造物、橋梁、堤防やダム等の河川施設、砂防施設、港湾・鉄道・空港などの交通施設、建築物などのインフラ監視能力・サービス等により、インフラ点検の効率化等を進めるとともに、当該技術を起点とした競争力の高いグローバルビジネスの創出を目指します。

2024年7月にJAXAが打ち上げた先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)は、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)では50kmであった観測幅を200kmへ拡大したことで、2週間に1度の観測を可能にしました(図1)。レーダ衛星は、異なる時期に取得した観測データの差分を解析することで、火山活動や地震などによる地殻・地盤の変動量を、数センチメートルの精度で把握できます(図2)。「だいち4号」では、従来よりも多くの観測データを蓄積できるようになったため、より高精度な変動把握が期待されています。さらに、海外の衛星や国内外の民間企業による衛星との連携により、より一層有用な情報を取得できるようになることも期待されています。

図1. 「だいち2号」と「だいち4号」の観測範囲および観測頻度比較
図2.干渉SAR解析(※1)の模式図とインフラ観測活用例 (出典元:CONSEOインフラDX勉強会)レポート

共創活動:官民連携によるインフラ管理DXへの衛星データ活用の現場実装と事業化

(1) 便益共創に向けたパートナー機関

① 国土交通省、地方自治体
 ▶︎ JAXAと連携した実証活動などを通して、インフラ老朽化への対策などへの衛星画像データの活用に向けた取り組みを検討します。

② 国土技術政策総合研究所
 ▶︎ 国土交通省の研究機関として、住宅・社会資本分野における技術政策の企画・立案や普及を支える研究開発を担っており、衛星データ活用の研究開発等を行います。

③ 国土地理院
 ▶︎ 国家地図作成機関として電子国土基本図の整備・更新や地盤変動の監視を担っており、衛星データを用いた地表変位計測手法の研究開発および解析情報提供を行い、現場測量・点検の効率化や、国家座標の維持管理への利活用を推進します。

④民間企業(衛星観測サービス・事業者)
 ▶︎ 衛星データを活用した情報提供サービスの実装・提供を担い、実証活動を行うなどして、市場を開拓します。

(2) 便益獲得に向けた共創活動

JAXAは、衛星観測によるインフラ監視能力・サービス等を通じて、国土管理の効率化に貢献するとともに、当該技術を起点とした競争力の高いグローバルビジネスの創出を目指します(図3)。また、衛星観測を活用したインフラ管理DXのユーザやサービスプロバイダの拡大を目的として、共通課題の解決に向けた産学官によるコミュニティ形成や、潜在ユーザへの認知拡大・普及活動を実施します。
具体的には、国土交通省や地方自治体、民間企業等のパートナーと連携し、多様な観測対象の中でも、インフラを支える基盤情報として重要で海外ニーズも高い「地盤・斜面」に関する監視手法・サービスを優先的に実証し、現場実装や事業化を推進します。これにより、道路や周辺斜面、堤防、地すべり地形・土砂崩壊地、地盤沈下、鉱山、パイプラインなど、ニーズの高い対象の点検や調査への活用を目指します。

図3. インフラ分野における実証イメージ

さらに、国土地理院との連携を強化し、「だいち2号」及び「だいち4号」を含むSAR衛星データを活用して全国の地殻・地盤変動を把握することにより、地盤沈下調査などに必要な現地測量の効率化や、国家座標の維持管理への活用を推進します。この一環として、国土地理院は、日本全国の衛星SAR地盤変動測量成果ダウンロードサービス(図4)及びその利用マニュアルを公開しています。

図4. 国土地理院による日本全国の解析結果「衛星SAR地盤変動測量成果ダウンロードサービス

技術開発:将来も見据えたLバンドSAR(※2)等による精緻な変動解析技術の研究開発

衛星データ解析結果の信頼性を確保し、インフラ管理に活用するためには、「だいち4号」で取得可能となる高頻度・時系列のLバンドSAR観測データに対応した最適な解析アルゴリズムを確立する必要があります(図5)。また、干渉SAR解析において大きなノイズ源となる対流圏、電離圏、地形誤差などの外部要因による影響の除去も課題です。JAXAは、深層学習技術等を活用し、地表やインフラの変位を高精度に推定することを目指します。

図5. 時系列干渉SAR解析の例

さらに、海外衛星や民間企業によるXバンドSAR小型衛星コンステレーション、光学衛星、JAXAが開発中の高度計ライダー衛星など、多様な観測データを統合した解析技術の研究開発を進めます(図6)。
あわせて、2030年代以降の観測継続と機能強化を見据え、将来のLバンドSAR衛星に向けた利用ニーズの体系的な収集、ミッション要求・システム要求の整理、シミュレーション等によるシステム概念の検討を実施します。

図6. 多種衛星の融合により、地形把握からインフラ監視、災害状況把握までを高精度に行う統合システムのイメージ
成果)

参考文献

・ デジタル庁 デジタル庁 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」 (2025年6月13日)
・ 国土交通省 「インフラ分野のDXアクションプラン(第2版)」(2023年8月8日)
・ 国土交通省 「インフラ長寿命化基本計画」(2013年11月29日)
・ 内閣官房 「第一次国土強靭化実施中期計画」(2025年6月6日)
・内閣官房 経協インフラ戦略会議 「インフラシステム海外展開戦略2030」(2024年12月24日)
・ 国土交通省 国土地理院 「基本測量に関する長期計画」(2024年4月1日)
・ 宇宙政策委員会 衛星開発・実証小委員会 第20回会合 資料2、参考1
衛星開発・実証小委員会「宇宙開発利用加速化戦略プログラムに係る戦略プロジェクトの選定について」 「戦略プロジェクト概要(SX実現に向けた高分解能光学衛星のデータ解析技術の研究と利用実証)」(2023年7月6日)

関連サイト

CONSEOインフラDX勉強会 開催レポート(2025年10月27日)
JAXAと国土交通省道路局が災害発生時の人工衛星画像データの活用に関する協定を締結 ―道路の被害状況把握にJAXAの衛星画像データを活用― (2025年10月28日)
JAXAと和歌山県は、インフラ予防保全等に関する衛星データ活用の共同実証の検討を開始します(2026年2月20日)

※1: 干渉SAR解析とは、2回のSAR観測における電波の往復時間を比較することで、地表の変位(どの程度動いたか)を面的に調べるデータ解析手法。(参考:干渉SAR画像の見かたについて
※2:  LバンドSAR(SAR:Synthetic Aperture Radar)は、人工衛星等から地表に向けて電波を照射し、地表から戻ってきた電波を受信して、その信号に合成開口処理を施すことで、高解像度の画像を得る技術。Lバンドは、マイクロ波のうち周波数1.2 GHz帯を指し、植生を一部透過して地表まで到達する性質を持つため、地殻変動の観測に適した特徴を持つ。

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