我が国では、高度成長期に整備された土木・インフラの深刻な老朽化と維持・更新のコスト増大、そして現場の人員不足・熟練作業者不足等が大きな社会的な課題となっています。
日々変化する土木・インフラの変位を、人の目や航空機で把握するには多くの時間と費用が必要です。そこで、一度に広域を観測できる合成開口レーダ(SAR)センサを活用することで、都市の地盤沈下やインフラ施設(ガスパイプライン等)の監視を行うことができます。
例えば、地下水の過剰な汲み上げ等が原因で、地盤沈下が生じることがあります。広域的な監視を目的に、環境省が現地での計測に加え衛星データの併用するためのマニュアルを作成・公開しています(図 1)。
また、インドネシアの首都であるジャカルタは、急速な発展を遂げている一方で、地下水の利用増加により地盤沈下が進行しています。独立行政法人国際協力機構(JICA)は、インドネシア政府の要請を受けて、衛星データを活用した地盤沈下のモニタリングを実施しています(図2)。
JAXAは衛星データの特徴である、広域性と定期的な観測を生かした、インフラの変位を自動解析できるツール*を開発しました(図 2)。本ツールにより、効率的な土木・インフラの調査に貢献しています。
* 「衛星SARデータによるインフラ変位監視ツール」(ANATIS:Automated Nationwide Application of Timeseries InSar)
このように、土木・インフラの維持・点検を効率的に行う際に、衛星データが活用されています。今まで人や航空機で行ってきた作業を、衛星データを併用もしくは代替することでより効率的に実施できることが期待できます。また、衛星データと他のデータを組み合わせることで、Society5.0やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった社会の実現に、貢献していきます。