重点テーマ:水田クレジット

― 衛星観測によるMRVの高度化とカーボンクレジット実装 ―

目指す便益:衛星観測による水田メタン削減クレジットの信頼性向上とMRV・報告コストの低減

JAXAは便益共創パートナーと共に、水田メタン削減によるカーボンクレジットの創出において、衛星観測による客観的エビデンスを提供し、クレジットの信頼性を確保すると共に、生産者および地上観測による報告に伴うコストの削減を目指します。具体的には、以下の便益創出を目指します。

① 中干し・間断灌漑による水田メタンクレジットの創出

メタンガス(CH4)は、二酸化炭素(CO2)の28倍(※1)の温室効果があると言われており、水田は、我が国のメタン排出の約4割超を占める主要な排出源です。水田からのメタン排出削減策として、国内では「中干し」、海外では「間断灌漑(AWD:Alternate Wetting and Drying)」という水管理手法が注目されています(図1、図2)。

図1. 水田からのメタン(CH4)発生のメカニズム
図2. 中干し実施中の水田

② 衛星観測による水田の水管理の可視化とクレジット創出への貢献

衛星観測により、水田の湛水・非湛水を広域かつ均質・継続的に把握することで、カーボンクレジットの事業者や農業者が個別に実施してきた記録や報告の負担を軽減すると共に、水管理の実施状況を客観的に「見える化」し、カーボンクレジット市場において信頼性の高い水田メタン削減クレジットの創出に貢献します(図3)。

図3. 衛星観測による水管理の把握とクレジット創出

共創活動:官民・国際連携による「実装を見据えた研究開発」

水田メタンを巡る課題は、科学技術だけでなく、政策、制度、現場実装が密接に関係する分野です。JAXAは、以下のように国内外の便益共創パートナーと連携しています(図4)。

図4. 共創体制と役割

国内では、研究機関、民間企業と連携し、検証サイトで衛星と地上観測を組み合わせた水管理把握手法の開発・検証を実施しています。国外では、アジア・太平洋地域宇宙機関会合(Asia-Pacific Regional Space Agency Forum: APRSAF)の枠組みの下、ASEAN各国と連携し、SAFE CH4Riceプロジェクトを通じてカーボンクレジット制度を見据え、衛星データによるAWD実施の測定、報告及び検証(Measurement, Reporting and Verification: MRV)手法の技術実証を進めています(図5、図6)。

図5. 国内での実証
図6. 国外での実証サイト

技術開発:Lバンド合成開口レーダSARを用いた水管理把握技術の高度化

水田メタン削減クレジットの信頼性を確保するためには、「いつ・どこで・どの程度、水管理が実施されたか」を客観的に把握する必要があります。JAXAでは、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)および先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)を中核とし、地域差や生育段階の違いを考慮した湛水・非湛水判別手法の開発を進めています(図7)。

図7. だいち2号による反射特性を用いた湛水・非湛水の把握(青:湛水 赤:非湛水)

参考文献

※1:農林水産省 農産局農業環境対策課
「水稲栽培における中干し期間の延⾧」のJ-クレジット制度について(令和7年5月)

関連サイト

地球にやさしいお米作り~「だいち2号」、「だいち4号」によるカーボンクレジットへの貢献に向けた実証~

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