災害
2023.11.10(金)
硫黄島南岸に出現した新島の衛星観測(第1報)
1. 概要:
硫黄島は東京から南へ1,200kmに位置する火山島(図 1)で、北東から南西までの長さは約8kmです。水深200m以深からそびえる直径40km以上の火山体の頂上部に位置します(日本周辺海域火山通覧第4版、海上保安庁)。2023年10月21日に、硫黄島南岸の翁浜沖で噴火が発生し(火山活動解説資料、気象庁)、噴煙や軽石を噴出し、さらに新島を形成しました。JAXAでは、これらの火山活動を各種の地球観測衛星で観測・解析して、関係機関へ提供しています。今回は新島形成について、人工衛星による観測結果を紹介します。
ほかにも、今回の噴火では軽石や火山由来の変色水など、複数の活動が観測されています。今後これらについても、続編としてご紹介します。
2. 新島出現と成長
10月21日の噴火開始後、10月29日に衛星「だいち2号」(以下、ALOS-2という)が観測データにより新島らしき形状を確認しました(図 2a:全体図、図 2b:拡大図)。その直径はおよそ80mでした。図 2bでは、黄色枠内が新島とみられます。枠外の明るい領域は、画像の特徴から軽石ラフト(いかだ)を捉えている可能性があります。
11月2日には、欧州宇宙機関(以下、ESAという)の衛星「Sentinel-2」のデータによれば、新島が成長し、南北がおよそ200mに成長していました。図 3aは可視画像で、新島が南北に長く成長し、南端から噴煙を生じている様子が分かります。また、緑色の海水(変色水)が新島全体から西に流れています。さらに新島の北端からは、褐色のものが西に流れ出しており、軽石が流出していることが推察されます。図 3bの画像は短波長赤外線と可視光線を組み合わせた画像(RGB= 2.19µm/865nm/665nm)です。高温部が赤色に見え、その温度は250℃以上と推定され、火口であると考えられます。そこから噴煙が西へたなびいていることが分かります。
翌11月3日には、米国USGSの衛星「Landsat 9号」が観測しました。図 4aが可視画像です。新島は東西250m、南北350mに成長していました。引き続き噴煙や変色水を産出している様子が分かります。また、図 4bは短波長赤外線画像(RGB=2.2µm/865nm/655nm)です。海岸線が青く見えていますが、その内側は褐色で、海水が被っていない島となっていることが分かります(赤外線が吸収されていないため、褐色となります。詳しくは軽石の判読原理の解説記事を参照ください)。
そして11月8日、9日、10日には、再び衛星「だいち2号」が新島を観測しました。11月8日の画像(図5b)では、11月3日の観測時と比べて、大きく形が変わりました。波に浸食された可能性があります。この画像では、新島の南端には、暗い箇所、明るい箇所が認められます。これは新島南端に火口丘などの起伏があること、あるいは南端の中央部に岩が存在している可能性を示唆します。
さらに、11月9日、10日にも衛星「だいち2号」により観測を行いましたが、島の形に大きな変化はみられていません(図6、図7)。
このほか、軽石や火山由来の変色水など、複数の活動が観測されています。今後、得られた情報をご紹介します。
3. 関連記事
硫黄島の他にも火山噴火に伴う現象の衛星観測について、下記の記事を掲載しています。
■ 噴火活動全般、および火山由来の変色水に関する記事
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