災害

2021.12.21(火)

沖縄本島に接近・漂着している軽石の衛星観測情報(続報)
~大規模に噴出した軽石の面積、衛星観測による軽石の判読原理・見え方の違い~

■概要

前回までで、福徳岡ノ場噴火により噴出された軽石に関する衛星情報をまとめた特設サイトについて紹介しました。今回は、洋上に大規模に噴出した軽石の分布面積、特設サイトで見られる最新の衛星画像の詳しい解説について紹介します。

■洋上に大規模に噴出した軽石の分布面積

JAXAが運用している気候変動観測衛星「しきさい」によって観測された2021年8月17日(噴火4日後)の観測画像から判読した軽石の分布面積を求めました。図1の茶色い部分を軽石と判読しており、黒く囲った面積を調べると約150 km2でした。図2のように軽石の分布面積を東京の地図と重ねるとその大きさがよく分かり、山手線の面積の約2.5倍でした。また、150 km2は宮古島の面積とほぼ同様であり、非常に広範囲なものとなっています。
(「しきさい」観測範囲外にも軽石が存在する可能性があるため、全ての軽石を観測したものではありません)。

図1:2021年8月17日 の「しきさい」可視画像(色調補正済み)
(茶色:軽石、黒く囲った軽石の分布面積:約150 km2、硫黄島面積:約24 km2
図2:2021年8月17日の軽石の分布面積と山手線の面積比較
(背景画像はGoogle, Landsat/Copernicusを使用)

■特設サイト内の「しきさい」軽石分布

「しきさい」で観測された画像を地域ごと、観測日ごとに随時公開しています。
図3のように、軽石画像を見たい地域から探す、また見たい日付から探すことが可能です。

図3:「しきさい」で観測された軽石画像を探す方法(2021年10月15日の沖縄を例に)

「しきさい」は近紫外線から可視光線、赤外線まで19種類もの光を見分けることができます。図4は沖縄周辺域の「しきさい」の可視画像ですが、このままでは軽石の判読は難しいです。そこで「しきさい」の特徴である多くの波長帯(見え方の違い)を活かして、目立たせたい情報、今回では図5のように軽石を際立たせています。

図4:2021年10月15日の沖縄周辺域の「しきさい」可視画像
図5:2021年10月15日の沖縄周辺域の「しきさい」疑似カラー画像
(水色:軽石、青色:海、灰色:雲、黒色:陸、衛星の観測外でデータなし)

上記の図5は疑似カラー画像で軽石部分は水色で見えていますが、その原理を説明します。軽石は元々赤~近赤外線~短波長赤外線波長で反射率が高いですが、水を被ると短波長赤外線の反射率は低くなります。雲は通常、赤、近赤外線、短波長赤外線を含むすべての波長で反射率が高くなります。これらの特性により海面、雲、軽石を識別するために、画像上の光の3原色のうち、赤に短波長赤外線(1.6 μm)、緑に近赤外線(870 nm)、青に赤色(670 nm)をあてはめます。その場合、図6のように、水は赤外線を吸収するので画像上で海面は青に見えます。

図6:疑似カラー画像での海面の見え方

一方、軽石が海面を覆っている場合、図7のように、近赤外線の反射率が高く、水を被った軽石は短波長赤外線の反射率が低くなるので青と緑の重ね合わせにより画像の上で軽石は周囲よりも水色に見えます。

図7:疑似カラー画像での軽石の見え方

■特設サイト内の衛星画像による軽石の見え方

「しきさい」と欧州のSentinel-2が観測した衛星画像で、軽石がどのように見えるのか確認することができます
このサイトでは、JAXAが衛星画像から軽石が判読できたエリアに赤い枠を付けています(図8)。ブラウザ上で、地図の拡大・縮小、場所の移動などの操作が可能です。
「しきさい」とSentinel-2はどちらも光学衛星であり、写真のような画像が観測できます。「しきさい」の方がSentinel-2より観測幅が広く、また全球を撮っているので沿岸域だけではなく沖合域を含め洋上を広く観測できます。一方、分解能はSentinel-2の方が良く、より小規模な軽石を見つけやすいという特徴があります(表1)。

表1:「しきさい」とSentinel-2の観測性能
「しきさい」 Sentinel-2
観測幅 1150 km 290 km
観測場所 全球 陸域・特定の沿岸域など
分解能 250 m 10 m
図8: 「しきさい」(左図)とSentinel-2(右図)による軽石の見え方の違い

■特設サイト内の軽石解析レポート

上記で示したように「しきさい」とSentinel-2と両方のデータを活用することで、洋上の状態を確認できる範囲が広がり、軽石を確認する頻度を増やすことができます。これらの衛星画像から軽石分布を解析した日々のレポートはこちらよりご覧頂けます。

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