気象・環境
2012.08.25(土)
北極海の海氷 観測史上最小に前回の最小値を1ヶ月早く更新 初の400万㎞2割れへ
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8月22日掲載の「地球が見える」で、今年の北極海氷が観測史上最速で縮小し続けていることをお伝えしましたが、8月24日の面積値が421万km2となり、2007年9月24日に記録された衛星観測史上最小面積(425万km2)を1ヶ月も早く更新したことを確認しました。
依然として海氷面積は下降線をたどっており、例年9月中旬頃の年間最小時期まで、さらに面積の減少が続く見込みで、観測史上初めて400万km2を下回る可能性も出てきました。
図3は、2003年以降の5月-8月の一日あたりの海氷面積変化量を示しています。プラス側が海氷域の拡大を、マイナス側が縮小を表しています。8月22日付の地球が見えるでお伝えしたように、2012年は8月上旬に急激に海氷面積が縮小しましたが、その時期に北極海上空に台風並みの低気圧が発達していた様子をNASAの光学センサMODIS(図4)が捉えていました。
風向風速表示
風向風速非表示
図4 北極海上空に発達した低気圧の衛星画像(2012年8月7日)
(気圧場及び風向・風速は気象庁提供のデータを使用)
低気圧の大きさはほぼ日本列島をすっぽり覆ってしまう程の大きさです。巨大な低気圧に覆われていた北極海上で、海氷が急速に縮小していく様子は、図5のAMSR2の輝度温度合成画像の動画でも映しだされています。8月中旬以降も、海氷は縮小し続け、8月24日の記録更新に至りました。
9月の海氷面積最小時期に向けて北極海氷の縮小は、まだしばらく続きます。JAXAでは、今後も「しずく」による北極海氷の監視を続けていき、また「地球が見える」で最新の状況をご報告する予定です。
なお、北極海の海氷密接度の分布画像および海氷面積値情報は、JAXAが米国アラスカ州立大学北極圏研究センター(IARC)に設置しているIARC-JAXA情報システム(IJIS)を利用した北極海海氷モニターwebページ上で日々更新を行い、公開しております。
(海氷モニターURL:http://www.ijis.iarc.uaf.edu/cgi-bin/seaice-monitor.cgi?lang=j )
観測画像について
(図1a)
観測衛星: | 地球観測衛星Aqua (NASA) |
観測センサ: | 改良型高性能マイクロ波放射計 AMSR-E (JAXA) |
観測日時: | 2007年9月24日 |
(図1b)
観測衛星: | 第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1) |
観測センサ: | 高性能マイクロ波放射計2(AMSR2) |
観測日時: | 2012年8月20日 |
いずれもAMSR-EあるいはAMSR2の6つの周波数帯のうち、36.5 GHz帯の水平・垂直両偏波と18.7GHz帯の水平・垂直両偏波のデータを元に、アルゴリズム開発共同研究者(PI)であるNASAゴダード宇宙飛行センターの Josefino C. Comiso博士のアルゴリズムを用いて算出された海氷密接度を表しています。データの空間分解能は25 kmです。
(図4)
観測衛星: | 地球観測衛星Aqua (NASA) |
観測センサ: | 改良型高性能マイクロ波放射計 AMSR-E (JAXA) |
観測日時: | 2012年8月7日 |
MODISのch7,ch5,ch2の反射率ををカラー合成した画像で、データの空間分解能は5kmです。
(図5)
観測衛星: | 第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1) |
観測センサ: | 高性能マイクロ波放射計2(AMSR2) |
観測日時: | 2012年7月3日−8月24日 |
AMSR2の36GHz-V、18GHz-V、89GHzPR(水平偏波と垂直偏波の差を和で除したもの)
海氷域は白〜水色に、海域は濃い群青色に色付けしたもので、その上空をもやのように漂うのは雲が移動する様子を捉えたもの。