災害

2022.02.21(月)

トンガ火山噴火起因の津波によるペルー沖油流出事故の「だいち2号」観測(続報)

2022年1月15日に南太平洋のトンガ王国で発生した火山島の大規模噴火による津波により、南米ペルーで大規模な原油流出事故が発生しました。これに伴い、「だいち2号」ではこの事故に合わせて、ペルー沖の観測を実施しています。このうち事故発生5日後の2022年1月21日の観測については、こちらに掲載しています。今回は、事故発生11日後の2022年1月27日の「だいち2号」の観測結果について報告します。

図1 「だいち2号」合成開口レーダによる過去の観測画像との比較
A: 2022年1月27日16:43(標準時)、広域モード(分解能100 m)、右観測、HH偏波、オフナディア角35.2°、降交軌道
B: 2022年1月21日5:36(標準時)、高分解能モード(分解能10 m)、右観測、HH偏波、オフナディア角39.7°、昇交軌道
C: ペルーの油流出事故場所の周辺地図
A、Bに共通して、海岸近くは風が弱いために暗くなっている可能性がありますが、さらに暗くなっている筋状の領域が見られ、流出した油の可能性が高いと判断しました。(黄色の枠で囲んでいます)。

「だいち2号」による油流出観測

「だいち2号」は、事故発生11日後の2022年1月27日16時43分(標準時)に、ペルー沖の観測を実施しました。

図1は1月27日(図1A)と1月21日(図1B)の観測画像を、同じ領域に合わせて出力したものです。また同じ領域の地図も併せて示しています(図1C)。油の可能性が高いと判断される領域を黄色で囲んでいます。今回(1月27日)の観測でも、引き続き油の可能性が高いと識別できる暗い筋状の領域を識別することが出来ます。1月21日に比べると、筋状の領域はより沖合に進んでいる(拡がっている)ようです。

図2にペルー沿岸で「だいち2号」の合成開口レーダ(PALSAR-2)による観測画像を拡大した画像を示します。この図でも周りの海面の明るさに対して、急に暗く(黒く)なっている場所に油が拡がっている可能性が高いと判別しており、黄色の枠で囲っています。流出場所付近の海上には、引き続き多くの船舶があり、流出元となった原油タンカーも、まだ停泊しているのが見えています(図2B)。発生場所付近の油は、前回よりもさらに北に拡がっているように見えます(図2B)。さらに北側のアンコンやチャンカイの海岸から沖合にかけて、より多くの油が見えていて(図2C,D)、特にアンコンの沖合では、1月21日に比べて、油が非常に広範囲に拡がっていることが分かります。

報道によると、事故の発生から1ヶ月経ちますが、まだ現地の油の処理はあまり進んでいないようです。JAXAは「国際災害チャータ」の要請に基づいて、「だいち2号」観測データの提供を行っています。

図2 「だいち2号」合成開口レーダによる観測画像(A)及びその矩形領域の拡大図(B,C,D)(2022年1月27日16:43(標準時)、広域モード(分解能100 m)、右観測、HH偏波、オフナディア角35.2°、降交軌道)。
流出した油の可能性が高いと判断した領域を黄色の枠で囲んでいます。海上の明るい点は船舶で、そのうちの一つは流出元となった原油タンカーです。特にアンコンの沖合海域で、油が拡がっているように見えます。

参考リンク

トンガ火山噴火起因の津波によるペルー沖油流出事故の「だいち2号」観測
モーリシャス沿岸における油流出事故を受けた「だいち2号」の観測協力

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