災害

2023.04.07(金)

フィリピン・ミンドロ島沖におけるオイルタンカー転覆事故による
油流出の「だいち2号」による観測(続報)

フィリピン共和国ミンドロ島沖で沈没したオイルタンカー「プリンセス・エンプレス」号による油流出事故(日本時間2023年3月1日に沈没、積み荷である約800トンの産業用燃料油等の一部が周辺海域に流出)が発生しました。前回の報告では、事故後3月15日及び3月23日の「だいち2号」(ALOS-2)合成開口レーダ(SAR)による観測結果を掲載しましたが、今回は、SARの時刻付近の潮流及び海上風についての重畳を行い、油流出の推定結果との比較を行いました。

ミンドロ島付近の潮流及び海上風:

潮流については、HYCOM(Hybrid Coordinate Ocean Model_米国の世界海洋データ同化実験(GODAE)の一環として研究が進められている、ハイブリッド座標を用いたデータ同化モデル)を利用しました。海上風については、ERA5(ECMWF Reanalysis v5_欧州中期予報センター(ECMWF)が数値モデルと観測データの同化により導出する第5世代の再解析データ)を利用しました。
図1及び図2に3月15日及び3月23日の「だいち2号」の観測時刻に最も近い潮流(左)及び海上風(右)と油の推定範囲の重畳した図を示します。タンカーの沈没推定位置(赤の「x」印)に最も近い格子において、3月15日の潮流は西向きの流れ0.20m/s、海上風は南向き3.81m/s(図1)、3月23日の潮流は北西向きの流れ0.18m/s、海上風は南向き2.07m/sでした(図2)。両日とも油流出方向は潮流の流れとおおよそ一致しています。3月15日は風速が3月23日よりも倍近く強かったため、西向きに流れ出した油は、風に流されて南向きに流れを変えたものと考えられます。このように油の流れは潮流及び海上風によって変化している様子がわかります。

図1:3/15の「だいち2号」による油の推定範囲とほぼ同時刻の潮流(左)及び海上風(右)データを重畳したもの
図2:3/23の「だいち2号」による油の推定範囲とほぼ同時刻の潮流(左)及び海上風(右)データを重畳したもの

参考:過去の油流出観測による観測協力について

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