災害

2023.03.31(金)

フィリピン・ミンドロ島沖におけるオイルタンカー転覆事故による
油流出の「だいち2号」による観測

フィリピン共和国ミンドロ島沖で沈没したオイルタンカー「プリンセス・エンプレス」号による油流出事故(日本時間2023年3月1日に沈没、積み荷である約800トンの産業用燃料油等の一部が周辺海域に流出)に対し、日本の国際緊急援助隊(以下、JDRと記載)が派遣され、油流出状況の情報収集や、油回収作業の現場確認、技術指導等が行われました。
このJDR活動へ派遣されている海上保安庁からの要請を受け、JAXAは陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)によるミンドロ島沖の緊急観測を実施し、油の流出範囲の解析を行いました。本解析結果は、JDRにより、現地の活動を支援する情報として利用されました。

船舶沈没場所付近の「だいち2号」による海面観測結果:

今回の流出事故はミンドロ島沖約東20キロメートル地点で発生しました。
図1に船舶沈没事故発生場所付近の地図を示します。
JAXAは事故発生以降、3月25日(以下、現地時間に統一)までに合計6回の「だいち2号」による事故現場であるミンドロ島沖東海域ほか周辺海域の観測を実施しました。この内、3月15日00:01、3月23日23:55の撮像結果を紹介します。

各画像で、レーダから照射した電波の反射が強い陸地(島)、船舶などは明るく(白く)見えています。一方で海面は反射が弱いため暗く(黒く)、油が海面に浮遊している場所はさらに暗く(黒く)なります(詳しくは、2020年に発生した「モーリシャス沿岸における油流出事故を受けた「だいち2号」の観測協力」の「解説」をご参照下さい)。

3月15日の画像(図2)では、沈没推定位置から島の方向(南西)に油の流出が拡がっている様子が分かりました。
3月23日の画像(図3)では、3月15日と同じ場所から継続して油が流出していると推定されますが、流出方向が北西に変わったことが分かります(図4)。
今後も引き続き観測を行い、油流出状況の確認を行うとともに、その解析結果を提供、協力していく予定です。

図1:船舶沈没事故発生場所付近の地図
図2: 3/15_00:01(現地時間)オフナディア角32.9°高分解能モード(分解能10m)
プリンセス・エンプレス号の沈没推定位置からミンドロ島方面(南西方向)に向かって油が流れている様子が見える。
図3:3/23_23:55(現地時間)オフナディア角19.4°高分解能モード(分解能10m)
沈没推定位置から北西方向へ油が流れている様子が見える。
図4:3/15と3/23の油の推定範囲を比較したもの

センチネルアジア及び国際災害チャータへの画像提供について:

なおJDRへの支援に加え、「センチネルアジア」及び「国際災害チャータ」からもJAXAに観測要請があり、これら枠組みにも一連の「だいち2号」の観測画像を提供しています。

今回の事故に対して、数多くの光学、合成開口レーダ(SAR)画像の解析結果が、「センチネルアジア」及び「国際災害チャータ」のウェブサイト(以下、URLを参照)に公開されています。光学とSARにより見え方は違いますが、沈没推定位置から油が流出し続けている様子や、その流出方向が日によって刻々と変化している様子が分かり、ALOS-2で見られた南西から北西への流出方向の変化とも整合していることが分かります。この解析結果及び両情報サイトについても、JDRに送られ、現地での油防除活動に役立てられました。

「センチネルアジア」は、宇宙技術を活用してアジア太平洋地域の災害管理への貢献を目的とする、国際協力プロジェクトです。地球観測衛星画像などの災害関連情報をインターネット上で共有し、自然災害による被害を軽減することを目指しています。「センチネルアジア」には宇宙機関に加え、衛星データを解析し被害状況などの情報を提供する研究機関や、提供されたデータや情報を防災活動に利用する防災機関等、合計113の機関が加盟しています(2023年3月現在)。「国際災害チャータ」は、大規模な災害が発生した際に地球観測衛星の画像をユーザに提供する国際協力の枠組みです。現在、JAXAを含む17の宇宙関係機関が参加しています。

関係機関との意見交換:

3月30日JAXA東京事務所にて、海上保安庁警備救難部環境防災課とフィリピン油流出事故の衛星情報利用について意見交換を行いました。「だいち2号」から解析した海上の油流出範囲は、同課を通じ現地に派遣された日本の国際緊急援助隊やフィリピンコーストガードに提供されました。(海上保安庁警備救難部環境防災課は、海洋汚染等海上における災害の防止を担当し、今回の国際緊急援助隊に職員を派遣しています。)
衛星情報を活用することで広範囲の状況や遠方の把握ができ、効果的な事故対応ができたと、国際緊急援助隊及び同隊を通じ現地のフィリピンコーストガードからも謝意を頂きました。
国内関係機関との連携を含め、今後も災害等の支援に協力していきます。

参考:過去の油流出観測による観測協力について

最新情報を受け取る

人工衛星が捉えた最新観測画像や、最新の研究開発成果など、
JAXA第一宇宙技術部門の最新情報はSNSでも発信しています。