災害
2022.07.13(水)
埼玉県での記録的な大雨の観測
2022年7月12日夜の埼玉県を中心とした記録的な大雨により、道路の冠水や土砂崩れなどの被害が発生しています。JAXAでは、降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星による宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施いたしました。
図1はGPM主衛星に搭載されている日本が開発した二周波降水レーダ(DPR)が観測した大雨の分布です。埼玉県北部を中心に局地的な豪雨が観測されており、川越周辺では100 mm/h近い 降水量が人工衛星でも観測されています。
図2は、GPM主衛星などの複数の降水を観測する人工衛星から開発した「衛星全球降水マップ(GSMaP)」の統計データから算出した2022年7月12日9:00~翌日8:59(日本時間)の豪雨指標を示しています。ピンクに色付けされた領域が、2022年の7月12日9:00~翌日8:59(日本時間)の24時間の雨が、過去22年の同じ24時間の平均雨量と比較して、どの程度極端に雨が多い事例であったか示しています。川越周辺の濃いピンクの領域では、過去統計からも稀な発生頻度の大雨が降っていたことがわかります。
図3の動画は、図1で示した埼玉で発生した大雨の三次元立体構造を観測した結果を示しています。赤色で示された局地的に降水量が多い領域では、高さ10km程度まで雨雲が発達していた様子が観測されています。
GPM/DPRは、7/8夜遅くから7/9未明にかけて熊本周辺で発生した記録的な大雨も観測していました。図4には、図1,3の埼玉周辺の大雨との比較を示します。どちらも地上に大雨をもたらした事例ですが、衛星が観測した立体構造から、九州地方の降水システムは15km以上の高い高度まで発達していることに対し、関東地方の事例では、図3からもわかるようにそれほど高くまで発達していないという違いがみてとれます。
このような、鉛直方向も含めた降水の立体構造の違い等の様々な特徴は、雨の降る仕組みを理解し、予測精度を向上するために重要なのです。
また、GPM/DPRの観測データは、2016年3月から気象庁の数値気象予報にも定常的に使われており、日々の天気予報でも役立てられています。2022年6月30日には、気象庁での数値予報システムでのGPM/DPRデータの利用方法が改良されたことで、さらなる降水予測の精度向上にもつながっています。
JAXAは、GPM/DPR等の地球観測データを活用して、現況の把握や災害予測の精度向上などに今後も貢献していきます。