災害

2022.01.26(水)

衛星観測によるトンガ火山島噴火の噴煙やエアロゾルに関する解析結果

2022年1月15日のトンガ王国の火山島であるフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴火では、顕著な噴煙やエアロゾルが発生しました。本稿では、「しきさい」搭載の多波長光学放射計(SGLI)、ならびに、マイクロ波放射計が捉えた噴煙やエアロゾルに関する科学的な知見について報告します。

SGLIが捉えた噴煙(エアロゾル)の様子

「しきさい」搭載の多波長光学放射計(SGLI)は、近紫外から熱赤外波長の19のチャンネルによって250m~1kmの空間解像度で全球を観測するセンサです。トンガの火山噴火に伴い放出されたエアロゾルについても、太平洋からインド洋の高層を移動していく様子を短波長赤外のチャンネルを用いて追跡することができました。また、斜め方向を観測するSGLIの機能を用いて、そのエアロゾルの高度(海面からの高さを)推定することができました。

図1-1:SGLIの1.38µm波長のチャンネルの画像。東経30度~西経150度の南緯40度~赤道の範囲を表示。白の領域は観測幅の範囲外を示す。おおよそ赤楕円で囲った範囲の水色に見える分布がトンガの火山噴火に伴うエアロゾルと推測されます。

図1-1はSGLIの1.38 µm波長のチャンネルで観測した2022年1月15日~22日までの画像です。SGLIの1.38 µm波長チャンネルは水蒸気の強い吸収帯にあるため、地表や大気下層からの光は大気中の水蒸気によって吸収されて見えなくなりますが、逆にそれを利用して、大気の高層にある雲やエアロゾルの散乱光を選択的に捉えることができます。1月15日の噴火当日のトンガ周辺域から、西に広がりながらエアロゾルが移動した様子が捉えられています。

SGLIには望遠鏡を軌道方向に斜め(地表での天頂方向からの角度がおおよそ53度)を向けて観測する機能があります。この斜め視による観測対象の見え方の違いを立体視のように用い、おおよその分布高度を推定することができます(図1-2)。

図1-2:SGLIの多方向視によるエアロゾルの高さ推定
図1-3:SGLIの多方向視による分布高度の推定(トンガ周辺、2022年1月15日)
図1-4:SGLIの多方向視による分布高度の推定(オーストラリア東北部、2022年1月17日)
図1-5:SGLIの多方向視による分布高度の推定(インド洋、2022年1月20日)

図1-1のうち、1月15日、17日、20日について、SGLIが多方向観測を行っていた範囲で、エアロゾルの分布と思われるパターンについて観測角度の違いによってどのくらいずれて見えるかを調べ、高度に換算してみました(図1-3、1-4、1-5)。

その結果、エアロゾルが分布する高度は図1-4と1-5の両者で同じ28km程度であると推定されました。一方で雲の分布高度は対流圏の高度に対応するように約15km以下であり、前者のエアロゾルが対流圏よりも上の成層圏に分布していると推測されます。
今回の噴火に伴うエアロゾルの量はそれほど多く無いと言われていますが、高い高度のエアロゾルは長期間維持される場合があるため、今後もその分布や量を「しきさい」で注意継続的に監視していく予定です。

マイクロ波放射計が捉えた噴煙の様子

衛星全球降水マップGSMaPは10台程度の世界各国のマイクロ波放射計の観測を複合して作成していますが、利用しているマイクロ波放射計のうちの1台である、米国のDMSP-F16衛星搭載のSSMISが、噴火の約40分後にあたる2022年1月15日4:52(世界標準時)頃に火山の上を通過し、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴煙の特徴を捉えていました。SSMISは、150GHz~183GHz帯の高周波チャンネルを備えており、大気中を鉛直探査する機能があります。具体的には、150GHzは対流圏中層に感度があり、150GHz, 183±7GHz, 183±3GHz, 183±1GHzの順に、より高い高さに感度のある高度が変化します。

図2-1はSSMISの輝度温度分布(マイクロ波放射計が観測する基本的な観測量)を示しています。図2-1では、噴煙粒子によるマイクロ波の散乱のために、輝度温度が周辺に比べて低下(黄~青色)している特徴がわかります。対流圏中層に感度がある150GHzの図(左上)では、火山付近で輝度温度がもっとも低く(青色)、火山から遠ざかるとともに、輝度温度が上昇する分布を示しています。他方、対流圏上層に感度がある183GHz±1GHzの図(右下)では、中心部付近で輝度温度が高く、火山から少し離れた地点で輝度温度が低い(青色)特徴があります。米国での解析で、噴煙に伴う雷の分布が同心円状に広がっている結果が報告されています。このことから、183GHz±1GHzの輝度温度分布図(右下)では、雷を伴うような高高度の噴煙粒子の特徴を捉えていることが考えられます。マイクロ波放射計による噴煙粒子の解析は、アイスランドの火山などで例があり、今後に期待できる分野です。

このようなSSMISの高周波チャンネルと似たチャンネルが2023年度に打上げ予定の温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW) 搭載の高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)で利用可能になる予定です。AMSR3は水平分解能が高いことから、このような噴煙を観測する場合に、より詳細な観測情報を得ることが出来ると期待されます。

図2-1:DMSP-F16 SSMISの輝度温度分布(2022年1月15日4:52世界標準時)

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