気象・環境
2018.07.25(水)
「しきさい」が捉えた日本の猛暑(7/14)
今年の夏は日本各地で過去最高気温を更新するなど記録的な猛暑となっています。
2017年12月に打ち上げられた気候変動観測衛星「しきさい」の観測でも日本の酷暑の様子を捉えました。「しきさい」は近紫外~熱赤外まで幅広い波長の観測を行うことができますが、この中の熱赤外の波長帯の観測によって地表面の熱の状態を知ることができます。
図1と図2は2018年7月14日の10:20頃と21:40頃に観測された熱赤外バンド(波長10.8µm, 12.0µm)から推定した地表面温度の画像です※。図の白色の領域は雲域を示しています(図1~図5共通)。
図1と図2で比べると昼間(図1)の方が夜(図2)よりも地表面温度が大きく、「しきさい」の観測時刻(10:20頃)は昼前にも関わらず、すでにかなり地表面の温度が上昇していたことがわかります。地表面温度の分布を植生分布(図3)と比較すると、東京や大阪などの大都市では日中は非常に温度が高く、夜間も温度が下がっていないのに対し、森林域では日中も夜間も比較的温度が高くなっていません。「しきさい」の観測によるとこの日は特に大都市域で地表面温度が50度以上と非常に高温となり、大都市域では夜も30度近いままの状態となりました。図4と図5はそれぞれ東京周辺、大阪周辺の拡大図です。「しきさい」の高空間分解能と高頻度の観測により、都市の中の大きな公園や緑地では周囲に比べて少し温度が低い様子やその昼夜の変化も見ることもできるようになりました。
図4 東京周辺の日中地表面温度と植生分布。
白色の領域は雲域を示しています。前橋や熊谷で非常に高温となっている一方、皇居や代々木公園では周囲に比べ少し温度が低くなっています。
図5 大阪周辺の日中地表面温度と植生分布。大阪城では周囲に比べ少し温度が低くなっていますが、その南部では非常に温度が高くなっています。
可視光の波長帯では太陽光の反射がほとんどのため昼間の観測しか行えませんが、熱赤外の波長帯は地球からの輻射(熱放出)を見ているため夜間でも観測を行うことができます。また、これまでの地球観測衛星の熱赤外観測に比べ、250mというより高い空間分解能で高頻度の観測を行えることも「しきさい」の大きな特徴の一つです。
※現在はデータ公開前の初期校正検証期間のため、地表面温度の精度は検証中です。「しきさい」観測データは2018年12月に公開され、その際の地表面温度プロダクトの精度は3度以下となる予定です。「しきさい」地表面温度プロダクトは長崎大学森山准教授が開発されたアルゴリズムを使用しています。
観測画像について
図1~5
観測衛星 | 気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C) |
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観測センサ | 多波長光学放射計(SGLI) |
観測日時 | 2018年7月14日10:20頃(図1、3、4、5) 2018年7月14日21:40頃(図2) |