利用事例
2023.08.04(金)
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」への貢献
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保するための目標で、8個のターゲットが含まれています。多くは飲料水や公衆衛生に関するものですが、淡水の生態系に関するものも含まれており、「2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含む水に関連する生態系の保護・回復を行う」というターゲット6.6が設定されています。
このターゲット達成の進捗を測るために設定されている指標は「水関連生態系範囲の経時変化」(指標6.6.1)です。非常に多様な水に関わる生態系を1つの指標でまとめているため、この指標は5つのサブカテゴリーに分類されています。それらは、①植生湿地、②河川と河口、③湖沼、④帯水層、⑤人工水域で、このうち「植生湿地」には、沼地、湿原、泥炭地、水田、マングローブが含まれます。
一方、JAXAでは衛星でマングローブを監視する重要性についてSDGs以前から着目しており、マングローブ林の損失や劣化を防ぐための取り組みを進めてきました。この取り組みは「K&C Global Mangrove Watch (GMW) 1」呼ばれるもので、2011年から世界のマングローブ林の状態と変化のマッピングを開始しました。

GMWは、JAXAの陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)などの衛星に搭載された合成開口レーダー(SAR)のデータを使用し、1996年まで遡ってマッピングを行い、ラムサール条約事務局など関係機関にデータを提供しています。マングローブが広がる熱帯や亜熱帯地域は雲が多く、光学衛星では十分なデータを得られない場合があります。しかし、SAR衛星を使えば天候に関係なく地表のデータを取得できるため、現在は毎年マップを更新しています。
ターゲット6.6の担当機関である国連環境計画(UNEP)は、JAXAのGMWに注目し、2019年に指標6.6.1の情報を抽出するためのデータにすることを公式に決定しました。GMWのデータは以前から無償で公開されており、2020年にUNEPがデータの使い方を記した方法論書を作成・公開したことで、各国は国内のマングローブ面積の変化量を自ら算出することが可能となりました。
さらにUNEPは、指標6.6.1の対象となっている水関連生態系の地理空間情報をウェブブラウザで取得できる「淡水生態系エクスプローラー」を開発し、2020年に公開しました。現在は、世界中のマングローブがどこで、どの程度増えているのか、減っているのかを誰でも容易に地図上で確認することができます。

1 JAXAが主導する国際的な共同研究プロジェクト「京都・炭素観測計画」の活動の一つ
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