災害情報

2021.12.27(月)

フィリピンに被害をもたらした台風Raiの衛星による降水観測

2021年12月23日現在、台風22号Rai(ライ)がフィリピンを横断した影響で大雨が発生し、約400人の死者など被害が甚大であることが報道されています(参考:JIJI.COM

JAXAでは、全球降水観測(GPM)計画の下、GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)と、複数の衛星を組み合わせて作成した衛星全球降水マップ(GSMaP)により、宇宙から世界の雨を観測しています。降水状況の把握に関する情報提供の観点から、フィリピンに被害をもたらした台風22号Rai(ライ)の衛星降水観測事例を報告します。

本稿で紹介するJAXAの衛星降水観測情報は、フィリピンのマニラ観測所(Manila Observatory)による台風Raiに関するレポートでも情報源の一つとして利用されています(図1)。そのレポートでは、リアルタイムで得られるGSMaPによる24時間積算降水量が示されており、SNSの定期的な投稿において、投稿時にどの地域で大雨が降っているかを示すために用いられています。

図1. Manila Observatoryによるレポートの抜粋(データソース:Manila Observatory

【衛星全球降水マップGSMaPによる台風Raiに伴う降水量の時間変化】

台風Raiは、図2に示した経路図の通り2021年12月13日(以降すべて世界標準時UTC)に、フィリピンの東に位置するカロリン諸島にて発生し、西進して12月16日にフィリピンに上陸し、甚大な被害をもたらしました。フィリピン通過後も南シナ海で再び勢力が強まって徐々に進路を北向きに変えて12月20日に熱帯低気圧に変わりました。図2から、フィリピンの通過前から通過後の数日間にわたって強い勢力が維持されていることがわかります。

図2. 台風Raiの経路図。経路は最大風速によって色分けされており、赤・濃い紫は最大風速が64ノット(33m/s)以上の「強い台風」(気象庁区分)を示す。オレンジ色の領域は図4-5に示すGPM主衛星の観測域。

図3は、GSMaPを用いて作成した2021年12月13日から12月20日までの雨の時間変化を示しており、フィリピン東海上から西進する様子がとらえられています。宇宙からの衛星観測データを用いることで、陸上から遠く離れた海の上も含む、世界中の雨分布を知ることができるため、気象分野のみならず、防災分野でも利用されています。

図3. GSMaPによる台風Raiに伴う2021年12月13日~20日(UTC)の降水量の時間変化。
(上が1時間降水量、下が積算降水量)

【GPM主衛星が観測した台風Raiによる降水の三次元観測】

GPM主衛星は、12月15日にフィリピンに上陸する前の台風Raiに伴う降水を観測しました(図4)。GPM主衛星には、日本が開発した二周波降水レーダ(DPR)が搭載されています。DPRは立体的な降水観測が可能であるため、地表付近の降水量だけでなく、三次元の降水の立体構造を捉えることができます。図4に示したとおり、台風内に背の高い発達した雨雲の塔がとらえられています。これは、雨が生成される際の潜熱(※)の形で上空に熱を運ぶことから「Hot tower」とも呼ばれる現象で、高度20kmまで発達した雨雲が、GPM/DPRによって観測されており、非常に高度高くまで対流が発達したケースと考えられます。降水の立体構造の動画は図5をご覧ください。
※潜熱:
水蒸気(気体)が雨粒(液体)に変わることを凝結するといいますが、「潜熱」とは水蒸気が凝結して雨粒になる時に発生する熱のことを指します。台風では、この潜熱がエネルギー源となります。

図4. GPM/DPRが観測した台風Raiの眼周辺の雨雲の塔
(2021年12月15日3:40 UTC頃)
図5. GPM/DPRが観測した台風Raiの降水立体構造
(2021年12月15日3:40 UTC頃)

このようなGPM/DPRの観測データは、気象庁の数値気象予報での利用を通して、私たちの日々の生活にも役立てられています。JAXAは今回のフィリピンでの災害の様な被害を少しでも軽減できることを目指して、衛星による観測データの精度向上に努めており、数値モデルとの連携を通して予測精度の向上にも貢献していきます。

関連サイト

GSMaPウェブサイト
GPMウェブサイト
台風データベース

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