2021年7月5日現在、活発化した梅雨前線が日本列島付近に停滞し、東海・関東南部を中心に甚大な被害が発生しています。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。
JAXAでは、降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施いたしました。
図1は衛星全球降水マップ(GSMaP)による7月1日~3日(世界標準時)の平均降水量(図1左)と、過去21年分のGSMaPの統計から算出した2021年7月1日~3日の豪雨指標(図1右)の分布を示しています。6月末に日本南海上にあった梅雨前線は7月に入ってから北上し、太平洋側を中心に大雨となりました。図1左に示した衛星による降水情報では、土砂災害などの被害が報告されている東海・関東南部を中心に3日間の平均で50mm/dayを超える大雨が続いていたことがわかります。
図1右には、過去21年間のGSMaP統計値から算出した2021年7月1日~3日の豪雨指標を示しており、濃いピンクの領域が、2021年の7月1日~3日(世界標準時)が過去21年分の7月1日~7月3日(世界標準時)の平均雨量と比較して、どの程度極端に雨が多い事例であったか示しており、東海・関東を中心に強い豪雨傾向が捉えられています。
図1. 2021年7月1日~3日(世界標準時)の衛星全球降水マップ(GSMaP)による平均日降水量 [mm/day](左)と豪雨指数(90, 95, 99パーセンタイル値)(右)
さらにJAXAでは、全球降水観測計画(GPM)の主衛星に搭載されている雨雲スキャンレーダという名でも知られる二周波降水レーダ(DPR)で、高精度に三次元で世界の雨を観測しています。図2には、雨雲スキャンレーダが、梅雨前線に伴って発生した東海・関東地方の一部を観測した際の三次元の降水の立体構造を示しています。熱海周辺では、高さ10km以上まで雨雲が発達していた様子が観測されています(三次元動画はこちら )。
宇宙から三次元で雨を高精度にはかることのできる衛星は、この雨雲スキャンレーダ(DPR)1機のみであり、立体的な降水の観測により、各地の雨の特徴の理解が深まることで、雨を推定する気象予報モデルの改善に貢献できます。DPRの観測データは、2016年3月から気象庁の数値気象予報にも定常的に使われており、日々の天気予報にも役立てられています。
JAXAは、Withコロナ社会での防災・避難対策の見直し等が求められる中、DPRやGSMaPといった地球観測データを活用して、現況の把握や災害予測の精度向上などに貢献していきます。