2020年7月9日現在、活発化した梅雨前線が九州付近に停滞し、九州地方を中心に甚大な被害が発生しています。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。
JAXAでは、降水状況の把握に関する情報提供の観点から、衛星全球降水マップ(GSMaP)や水循環変動観測衛星「しずく」など、宇宙から雨や水蒸気を観測しているデータを用いて解析を実施いたしました。
図1は衛星全球降水マップ(GSMaP)による7月2日~7日(日本時間)の降水量の時間変化(図1上)と、積算降水量(図1下)の分布を示しています。降水量の時間変化をみると、梅雨前線に伴う降水帯が、日本周辺のみならず、海上も含め東西に長くのびており、九州周辺では、雨雲が次々と発生・発達して西から東へ流れ、九州周辺で断続的な強い雨をもたらしています。積算降水量をみると、7月2日以降の降り始めから5日間の積算で、500mmを超える雨が、九州の広い範囲で観測されています。
図1. 2020年7月2日~7日(日本時間)の衛星全球降水マップ(GSMaP)による
1時間降水量 [mm/h](上)と積算降水量[mm](下)の時間変化
図2には、図1に示した衛星全球降水マップ(GSMaP)を統計的に解析して、豪雨指標として表した結果を示しています。濃いピンクの領域が、2020年の7月1日~7月7日(世界標準時)が過去20年分の7月1日~7月7日(世界標準時)の平均雨量と比較して、どの程度極端に雨が多い事例であったか示しており、九州周辺の強い豪雨傾向が捉えられています。
図2. 2020年7月1日~7日(世界標準時)における持続的な豪雨の指標(90, 95, 99パーセンタイル値)。
濃いピンクは、過去20年の7月1日~7日(世界標準時)の平均降水量のうち上位1%の降水強度(99パーセンタイル値)以上に相当する降水があった領域を示しています。
さらに図3には、水循環変動観測衛星「しずく」GCOM-Wに搭載されている高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)によって観測された7月2日~7日(日本時間)の水蒸気量(鉛直方向に積算した値)の平均値を示しています。この期間中の梅雨前線周辺、特に九州南西側の東シナ海を中心に、水蒸気量が非常に多い状況であったことがわかり、海上からの湿った空気が線状降水帯による持続的な豪雨につながった一因である可能性が示唆されます。
図3. 水循環変動観測衛星「しずく」による2020年7月2日~7日(日本時間)の水蒸気量(鉛直方向に積算した値)[kg/m2]
JAXAは、withコロナ社会での防災・避難対策の見直し等が求められる中、GSMaPやしずくなどの地球観測データを活用して、今後も現況の把握や災害予測の精度向上などに貢献していきます。
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