災害

2019.12.05(木)

フィリピンに被害をもたらした台風Kammuriの発達した”雨雲の塔”

JAXAでは、全球降水観測(GPM)計画の下、GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)と、複数の衛星を組み合わせて作成した衛星全球降水マップ(GSMaP)により、宇宙から世界の雨を観測しています。今回は、2019年12月にフィリピンに被害をもたらした台風Kammuri(カンムリ)の衛星降水観測事例を報告します。フィリピンのマニラ観測所(Manila Observatory)では、台風Kammuriに関するレポートを公開しており、JAXAのGSMaPデータも情報源の一つとして役立てられています(図1)。

Manila Observatoryによるレポートの抜粋(データソース:Manila Observatory)

図1. Manila Observatoryによるレポートの抜粋(データソース:Manila Observatory

【衛星全球降水マップGSMaPによる台風Kammuriに伴う降水量の時間変化】

台風Kammuriは、11月26日(以降すべて日本時間)に日本の南東海上のマリアナ諸島にて発生し、西進して12月2日夜にフィリピンに上陸し、甚大な被害をもたらしました。

宇宙からの衛星観測データを用いる大きな利点として、陸上から遠く離れた海の上も含む、世界中の雨分布を知ることができることがあります。図2は、GSMaPを用いて作成した2019年11月26日から2019年12月4日までの雨の時間変化を示しており、フィリピン東海上から西進する様子がとらえられています。

図2. GSMaPによる台風Kammuriに伴う降水量の時間変化
(2019年11月26日9時~2019年12月4日8時)

【GPM主衛星が観測した台風Kammuriによる降水の三次元観測】

GPM主衛星は、11月30日3:30頃に台風Kammuriに伴う降水を観測しました(図3,4)。GPM主衛星には、日本が開発した二周波降水レーダ(DPR)とNASAが開発したGPMマイクロ波放射計(GMI)が搭載されています。DPRは立体的な降水観測が可能であるため、地表付近の降水量だけでなく、三次元の降水の立体構造を捉えています。

図3.GPM/DPRが観測した台風Kammuriの降水立体構造
(2019年11月30日3:30頃)

図4に示したとおり、台風内に背の高い発達した雨雲の塔がとらえられています。これは、雨が生成される際の潜熱の形で上空に熱を運ぶことから「Hot tower」とも呼ばれる現象で、高度15km以上にまで発達した雨雲が、GPM/DPRによって観測されています。

このようなGPM/DPRの観測データは、気象庁の数値気象予報での利用を通して、我々の日々の生活にも役立てられています。

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