災害

2019.07.05(金)

活発化した梅雨前線による九州地方の記録的大雨の観測

2019年7月5日現在、活発化した梅雨前線が長期にわたって本州付近に停滞し、九州地方を中心に、各地で甚大な被害が発生しています。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。

JAXAでは、降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施いたしました。

図1は、九州地方で雨が降り始めた6月末以降の衛星全球降水マップ(GSMaP)による雨の時間変化を示しています。

衛星全球降水マップ(GSMaP)とは…複数の降水を観測する衛星データを用いて作成された世界の雨マップです。

6月27日の夕方以降に日本付近で発生した令和初の台風である台風3号「セーパット」が、関東から東海上にぬける6月28日頃、すでに線状の降水帯が九州にかかっている様子が確認できます。その後、雨雲は本州付近から東側にぬけるものの、6月29~30日にかけて梅雨前線に伴う広範囲での帯状の雨雲が、再び九州から関東、東北にかけてかかります。7月に入ってからも、東シナ海から九州、関東南東側にかけて東西に延びる帯状の雨雲が長期にわたって停滞し、7月3日以降は降水量も増加していることがわかります。7月4日には、一度梅雨前線が南側に移動しましたが、日本の南海上でも引き続き強い降水が観測されており、沖縄地方などでも引き続き注意が呼びかけられています。

衛星全球降水マップ(GSMaP)の大きな利点として、①日本周辺以外の海上を含む世界の雨の分布がわかること、②雲の情報ではなく、直接降水の量がわかること、の2つがあげられます。図2には、2019年6月28日から7月4日までの7日間の総降水量を示しています。図からわかる通り、世界的にみてもこの時期は、日本周辺が雨の多い地域となっており、特に日本域を拡大してみると、九州南部で600mmを超える雨がGSMaPによって観測されていることがわかります。

さらにJAXAでは、全球降水観測計画(GPM)の主衛星に搭載されている雨雲スキャンレーダという名でも知られる二周波降水レーダで、高精度に三次元で世界の雨を観測しています。図3には、雨雲スキャンレーダが、梅雨前線に伴う降水帯の一部を観測した際の三次元の降水の構造を示しています。ところどころで背の高い強い雨が観測されている様子がわかります。

宇宙から三次元で雨を高精度にはかることのできる衛星は、現在、この雨雲スキャンレーダ(DPR)1機のみであり、気象庁の天気予報での利用を通して日々の生活にも役立てられています。

関連サイト

最新情報を受け取る

人工衛星が捉えた最新観測画像や、最新の研究開発成果など、
JAXA第一宇宙技術部門の最新情報はSNSでも発信しています。