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2019.05.14(火)
「しきさい」が捉えた日本列島の展葉
5月も半ば近くになり茶摘みや田植えをしている光景も見られる季節がやってきました。
今年は東北地方南部から九州にかけて桜の満開日が昨年より遅い所が多かったようですが、5月になって気温も上がり美しい新緑が見られる所も多くなっています。今回は、250m解像度で高頻度に観測できる「しきさい」が捉えた日本列島の森林で展葉が広がっていく様子を紹介します。
*展葉:植物が芽吹きから葉が開いていく事
図1は、「しきさい」搭載の多波長光学放射計(SGLI)が2019年4月から5月にかけて観測したデータから作成した日本列島のカラー画像です。この画像では展葉前の落葉樹林域は茶色、展葉後の森林域は緑色に見えていますが、緑色に展葉した部分が徐々に東日本の山岳域に広がっていく様子が分かります。
図2は、富山県周辺の2019年4月16日と5月4日の観測画像です。4月16日の時点では展葉していない所でも、5月4日には雪解けが進み徐々に山岳域に展葉が進んでいく様子が分かります。環境省生物多様性センターによる自然環境保全基礎調査植生調査を参照すると、4月16日の時点ですでに濃い緑色の部分(矢印A)は常緑針葉樹林、4月16日の時点では茶色に見えるが5月4日には明るい緑色に変わった部分(矢印B)は落葉広葉樹のミズナラやブナ林に対応するようです。4月から5月にかけて明るい緑色に変わった部分は落葉広葉樹林の展葉によるものと思われます。
図2 2019年4月16日と5月4日の富山県周辺のカラー合成画像。赤:緑:青にSGLIのVN08(673.5nm):VN06(565nm)&VN05(530nm):VN04(490nm)&VN03(443nm)&VN01(380nm)のチャンネルをそれぞれ割り当てた。
図3は、福島県から関東地方北部にかけての観測画像です。2019年4月23日(中央図)と2019年5月5日(右図)の画像を比較すると今年も徐々に福島県や関東地方北部で展葉や雪解けが進んでいく様子がわかります。また昨年2018年4月22日(左図)と2019年4月23日(中央図)の画像を比べると、2019年4月23日は阿武隈高地や関東北部の山地で緑色の領域の広がりがやや小さく(例えば図中の矢印の場所)、今年は昨年よりもこの地域の展葉の進行がやや遅くなっていたと推測されます。国土交通省気象庁による桜の開花・満開情報によると、福島市、水戸市、宇都宮市などでは桜の満開日が昨年より6日~11日ほど遅かったという報告があり、福島県から関東地方にかけての森林の展葉時期も同じように昨年より遅かった可能性があります。
JAXAでは、「しきさい」のデータを用いて推定した植生密度の大小が分かる指標データ(NDVIやEVI)や植物群落内の葉量を示したデータ(LAI)を公開中です。今後も炭素循環の変動メカニズム解明や気候数値モデルの高精度化などに寄与するデータ作成・提供を進めていく予定です。
観測画像について
図1~3
観測衛星 | 気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C) |
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観測センサ | 多波長光学放射計(SGLI) |
観測日時 |
図1:2019年4月~5月 図2:2019年4月16日(左)、2019年5月4日(右) 図3:2018年4月22日(左)、2019年4月23日(中)、2019年5月5日(右) |