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2024.10.11(金)

南極海の冬季海氷域面積が衛星観測史上2番目の小ささに

2024年10月11日
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国立極地研究所(NIPR)は、北極域研究加速プロジェクト(ArCS II、注1)の一環で、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)に搭載された高性能マイクロ波放射計2(AMSR2) の観測データをもとに、南極・北極の海氷面積の時間的・空間的な変化を可視化し、北極域データアーカイブシステム(ADS、注2)のウェブサイトで公開しています。

図1は年代ごとの南極海の海氷域面積(注3)の季節変化を示しています。北半球と南半球では季節が逆転するため、9月は南極海にとっての冬となり、海氷域が1年の内で最も拡大するタイミングです。2024年の海氷情報を分析した結果、南極海の海氷域面積が、9月9日に2024年の最大面積(約17.1729百万平方キロメートル)を記録したことが明らかになりました。これは南極海の海氷域の最大面積としては衛星観測史上2番目に小さい面積であり、最も小さかった2023年より約8.28万平方キロメートル大きい値でした(図2)。また、夏季(2月)の海氷域面積においても2024年は2023年に次いで衛星観測史上2番目の小ささを記録しています(関連記事)。南極海では冬季も夏季も海氷域面積が極端に小さい年が2年連続で続いていますが、それらの年の冬季(9月)の海氷分布を比較すると、2024年はロス海でより低緯度側に海氷が張り出している一方で、リーセル・ラーセン海の北側で顕著な海氷後退が見られるなど、大気の状態が年によって異なることに対応して、海氷域が張り出している場所も変化しています(図3)。また、1979年から2024年までの46年間における海氷域面積最大値の小ささランキングトップ10には、2017年、2018年、2022年、2023年、2024年が含まれており、南極海の海氷域面積に急激な変化が見られ始めた2016年以降の年が特に目立っていることがわかります(表1)。このように、南極海におけるここ数年の急激な海氷減少は、地球温暖化や気候変動の影響を反映している可能性が高く、その原因の解明は今後の研究において重要な課題となるでしょう。

注1:北極域研究加速プロジェクト(ArCS II: Arctic Challenge for Sustainability II)
国立極地研究所が代表機関を務める国の北極域研究プロジェクト。自然科学、工学、人文・社会科学分野の研究者が参加し、地球温暖化の正確な実態把握と仕組みの解明、将来予測に基づき、異なる研究分野や社会との連携、国際協力を通して、持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。実施期間は2020年6月から2025年3月まで。https://www.nipr.ac.jp/arcs2

注2:北極域データアーカイブシステム(ADS)
GRENE北極気候変動研究事業(2011年~2016年)や北極域研究推進プロジェクト(ArCS、2015年~2020年)およびArCS IIにおいて、南極・北極で取得された観測データやモデルシミュレーション等のプロダクトを保全・管理するためのデータアーカイブシステム。https://ads.nipr.ac.jp/

注3:通常海氷域面積はデータ欠損による算出エラーを防止する為、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を利用しています。なお、ADS(https://ads.nipr.ac.jp/vishop/#/extent)では2日平均の速報値をご覧いただけます。

図1:南極海の海氷域面積の年間変動。黒線:2010年代平均、青線:海氷域面積の年間最大値が最も小さかった2023年、赤線:2024年(1月1日から9月28日まで)。
図2:南極海の海氷域面積年間最大値の経年変化(縦軸:16.5〜21.5百万平方キロメートル、横軸:1979〜2024年)。赤丸は2024年の年間最大値(約17.1729百万平方キロメートル)を示している。
図3:南極海の海氷密接度分布。左は海氷域面積最大値が最も小さかった2023年9月7日を、右は2
番目に小さかった2024年9月9日の分布を示している。橙色の線は、海氷域の平年の拡がりを表している。2024年は2023年に比べ、ロス海でより低緯度側に海氷が張り出しており平年と同水準の拡がりとなっているが、リーセル・ラーセン海の北側では顕著な海氷減少が確認できる。
順位 海氷域面積最大値(百万平方キロメートル) 日付
1 2023 17.0901 9月7日
2 2024 17.1729 9月9日
3 2002 18.0983 9月9日
4 1986 18.1306 9月18日
5 1989 18.1338 9月22日
6 2017 18.1383 9月12日
7 2018 18.1694 9月29日
8 2022 18.2054 9月14日
9 2008 18.2986 9月2日
10 1990 18.3071 9月29日
表1:1979年〜2024年における南極海の海氷域面積年間最大値の小ささランキングTOP10。

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