災害
2018.06.15(金)
「しきさい」が捉えたハワイ、キラウエア火山2018年の活動(5月)
ハワイ島キラウエア火山(図1)では、2018年4月30日にプゥオオ火口で陥没が起きた後、5月3日からイーストリフトゾーン山麓のプナ南地区で、割れ目噴火が始まりました(米国地質調査所)。17日にはキラウエア山頂のカルデラ内にあるハレマウマウ火口で爆発的噴火が起きました。この後も、プナ南地区での割れ目噴火が続き、付近の住宅が焼失する等、多数の被害が生じています。
図1 キラウエア火山とイーストリフトゾーンの位置。大きさと範囲は図2の「しきさい」の画像に対応している。
「しきさい」の画像によって、このキラウエア火山の活動を捉えることができました。図2に赤外画像によって観測した溶岩流の発生状況を示します。5月5日の画像では、キラウエア火山山頂のカルデラ(ハレマウマウ火口を含む)とプゥオオ火口に熱異常が認められます。これは陥没や爆発のため、これらの地点で一時的に熱放出が高まったためと思われます。また、プナ南地区には、イーストリフトゾーンの伸長と同じ東北東―西南西方向に並ぶ微弱な熱異常(矢印)が認められます。これらが初期の割れ目噴火発生地点とその噴出物に当たると思われます。16日の画像では,熱異常域が拡大すると共に、東北東へ伸長していることから、活動が活発化していることが推定されます。また、噴出した溶岩流の先端が南方向に向き、斜面を下り始めていることが見て取れます。5月下旬の画像では、南東に向かって斜面を流下した溶岩流が、海岸付近まで達していることがわかります。ここで海への溶岩の流入(ocean entry)が起きています。画像の撮影日の違いにより、熱異常の形状と場所が若干異なることから、溶岩流は少しずつ噴出地点と流下経路を変え、幾度も斜面を流れ下っていることが推定されます。一方で、可視画像により、溶岩の噴泉活動に伴う噴煙(火山灰を含むため黒っぽい色調となる)や、溶岩が海に流入することによって発生した水蒸気由来の白色噴煙(水滴を主体とするため白っぽい色調となる)が捉えられています(図3)。さらに、溶岩が海水に流入しすることで発生した変色域(溶岩に由来する鉄、アルミニウム、珪素等の成分による)も認められます(図4)。
図2 「しきさい」によって捉えたハワイ、キラウエア火山の溶岩の発生状況。2018年5月5日、16日、20日、23日、27日の観測画像(250m解像度の熱赤外波長の観測データで作成した輝度温度画像 ※温度の単位はK:Kelvin=摂氏℃+273.15)。右側にプナ南地区の拡大画像を示す。
図4 「しきさい」によって捉えたハワイ、キラウエア火山の変色水。2018年5月20日の観測画像(250m解像度の可視・近赤外波長のデータから大気の影響を補正して海面の赤・緑・青色を推定しRGBに割り振ったカラー合成画像)
キラウエア火山はハワイ島の南東部に位置する標高1,247mの楯状火山で、ハワイで最も活発な火山です。山頂での噴火に加え、山頂から伸びるイーストリフトゾーン、サウスウエストリフトゾーンに沿って、割れ目噴火が頻繁に発生しています。溶岩の粘性が低いため、噴火は溶岩噴泉と溶岩流噴出を中心とした比較的静穏なものとなる場合がほとんどです。今回の活動は1983年にイーストリフトゾーンで始まった活動の一部とみなされています。
(文章:金子 隆之、東京大学地震研究所、2018年6月13日)
観測画像について
図2、3、4
観測衛星 | 気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C) |
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観測センサ | 多波長光学放射計(SGLI) |
観測日時 | 2018年5月5日、2018年5月16日、2018年5月20日、2018年5月23日、2018年5月27日(図2) 2018年5月23日(図3) 2018年5月20日(図4) |