気象・環境

2015.11.30(月)

観測史上最大に迫るエルニーニョ現象

昨年7月に「5年ぶりのエルニーニョ現象?」という記事を掲載しましたが、いよいよ今年になってエルニーニョ現象が本格化し、1950年以降の観測史上最大だった1997/98年のエルニーニョに迫る勢いです。2015年11月10日の気象庁の発表では、10月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+2.7℃で、1997年に次いで、2番目に大きい値を記録しました。

エルニーニョとは、赤道の貿易風が弱まることで、通常低い中・東部赤道太平洋の海面水温が上昇する現象を指します。エルニーニョやその逆の現象であるラニーニャは海上で発生する現象ですが、衛星によって、その発生から消滅までの様子をはっきり捉えることができます。とくに、マイクロ波放射計は、雲を透過してその下の海面の温度を観測することが可能であるため、大規模な対流システムが発達する熱帯海域でも頻度高く観測をすることができます。図1は、JAXAが打ち上げた水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)に搭載の高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)が観測した、2015年11月21日~25日のインド洋から太平洋にかけての熱帯海域の海面水温です。図中の□の領域は、エルニーニョに関連する監視海域を示しています。これだけでは、水温が高いのかどうかよくわかりませんが、図2に同じ期間について平年値からの差(偏差)を示します。水色~緑色がほぼ平年の状態で、赤色は水温が平年よりも高い状態、青色は低い状態を示しています。この図から、中・東部赤道太平洋の広範囲に渡って、平年よりも3℃近く水温が高いことがわかります。エルニーニョ監視海域であるNINO.3の平均海面水温偏差の変化を、2002年から現在まで表示したのが図3です。

さて、エルニーニョによって海面の温度分布が変わった結果、熱帯において強い対流の発生場所が変わり、大気の循環場や雨の分布も変わってしまいます。図4は、2014年2月打上げの日米共同ミッションである全球降水観測(GPM)主衛星搭載の二周波降水レーダ(DPR)による、図1と同じ領域の、2015年10月1日~-11月28日の積算地表面降水量分布です。図1で水温の高い領域に対応して、雨が多く降っていることがわかります。一方、図5は、2015年と2014年の同じ期間で差をとった結果です。赤色が2014年に比べて2015年に雨が多く降っている地域、青色が逆に雨が少ない地域です。2015年に中東部赤道太平洋で強いエルニーニョに対応して雨が増加している領域が広がっている一方で、インドネシア付近などの海洋大陸で、雨が非常に減っていることがわかります。このような大気と海洋の変化が、異常気象の原因ともなるのですが、実際に、今年の7月以降、インドネシアにおいて、エルニーニョによって雨季の開始が遅れ干ばつとなったために、野焼きによる火が雨で鎮火せず、過去最大とも言われる深刻な森林火災が続いています。

最後に、エルニーニョが発生するとき、熱帯の海面の温度はどのように変化するのか、AMSR2の打ち上げ以降の観測の動画で見てみましょう。図6は、AMSR2による2012年7月24日から2015年11月23日までの期間の海面水温偏差のアニメーションです。2012年7月頃は、東部赤道太平洋は少しだけ水温が高いところもありますが、その後しばらくは水温がやや低めの状態が続きます。2014年の4月頃から東部赤道太平洋で水温が高めの領域が広がり始め、2014年夏頃にエルニーニョの状態になりました。この水温の高い状態が今年の夏になってさらに強化され、現在のような強いエルニーニョ状態になりました。通常エルニーニョは、北半球の冬季に最も強くなる場合が多く、気象庁の予報でも、今年の初冬に極大になることが予想されています。今回のエルニーニョが観測史上最大を更新するのかどうか、今後も継続的な監視が必要です。

図6 GCOM-W/AMSR2による2012年7月24日~2015年11月23日の5日平均の海面水温偏差の動画。

観測画像について

画像:観測画像について

図1~2,6

観測衛星 水循環変動観測衛星 しずく(GCOM-W)
観測センサ マイクロ波放射計(AMSR2)
観測日時 2015年11月21日~25日 (図1~2)、2012年7月24日~2015年11月23日 (図6)

図3

観測衛星 地球観測衛星Aqua(NASA), Coriolis, 水循環変動観測衛星 しずく(GCOM-W)
観測センサ 改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-E (JAXA), WindSat, マイクロ波放射計(AMSR2)
観測日時 2002年7月~2015年11月

図4,5

観測衛星 全球降水観測主衛星(GPM主衛星)
観測センサ 二周波降水レーダ(DPR)
観測日時 2015年10月1日~11月28日 (図4~5)、2014年10月1日~11月30日(図5)

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