災害
2010.08.11(水)
異例の猛暑で森林火災が続くロシア中西部
図1は、2010年7月27日にGOSAT(いぶき)が撮影した、モスクワ周辺の画像です。森林(濃い緑色)、草原や耕作地(明るい緑色)が一面に広がっているのがわかります。なお、画像の白い部分は雲です。
ロシアではこの約1ヶ月(2010年7月)の間、異例の猛暑が続いています。加えてまとまった雨も降らないため、各地で森林火災が発生しています。ロシア非常事態省によれば、7月末時点で、森林火災は17の州と共和国に広がっており、今後さらに火災が広がるおそれがあるということです。CNNによれば、ロシア当局は火災の原因の大半は、ゴミの焼却やタバコ、キャンプファイヤーやバーベキューでの火の不始末、と指摘しているようです。
画像中央の黄色い点にモスクワは位置しています。その北東約400km、工業都市ニジニノブゴロドでは、市街中心部に火災の煙が流れ込んで視界が悪くなっている上、子供や高齢者を中心に体調不良を訴える人が相次いでいるそうです。
モスクワ周辺の森林地帯では、地中に泥炭層と呼ばれる枯れた植物の堆積物がありますが、これも燃え出しています。泥炭層の火災は地中でくすぶり、火がなかなか消えないことから、消火活動が難航することが懸念されています。
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図2〜4は、7月27日、8月2日および8月8日に撮影されたモスクワ周辺の拡大画像です。緑色の丸印で森林火災が認められます。図2の画像ではニジニノブゴロドの周辺で火災が発生しており、その煙が北西に流れているのがわかります。図で白い部分は雲ですが、うす茶色や黄色の雲の様な部分が火災の煙です。
図3から、8月2日には、周辺で発生した大規模な火災の煙が、ニジニノブゴロド市街地を覆っているのが分かります。その6日後の8月8日(図4)、火災の煙はモスクワ市街をも巻き込んでしまいました。
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図5 ニジニノブゴロド南部の森林火災
(Google Earthで見るロシアの森林火災(kmz形式、4.40MB低解像度版))
図5はALOS(だいち)が2010年7月28日に撮影したニジニノブゴロド南部の森林火災です。画像周囲の緑色が森林や草原、耕作地ですが、画像中央の黒っぽい部分が火災の発生した地域です。南東部分と南西部分からは煙が上がっています。ここでは、依然として火災が続いていることが分かります。
記録的猛暑は、森林火災だけにとどまらず、過去数十年で最悪の干ばつももたらしています。ロシアのプーチン首相は、猛暑による干ばつ被害の拡大を受けて、小麦を含む穀物と穀物製品の輸出を一時禁止する政令に署名しました。ロシアは世界有数の小麦輸出国です。小麦価格の国際的な上昇が懸念され始めています。
観測画像について
観測衛星: | 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT) |
観測センサ: | 雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI) |
観測日時: |
2010年7月27日(世界標準時)(図1、2) 2010年8月2日(世界標準時)(図3) 2010年8月8日(世界標準時)(図4) |
地上分解能: | 500 m |
TANSO-CAIは、温室効果ガス測定の誤差要因となる雲やエアロソルの観測を行い、温室効果ガスの観測精度を向上します。
TANSO-CAIは、4つのバンドで地上を観測します。図1〜4は、いずれも可視域のバンド2(664〜684ナノメートル)、近赤外域のバンド3(860〜880ナノメートル)、可視域のバンド1(370〜390ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと似た色合いとなり、次のように見えています。
濃緑: | 森林 |
明るい緑: | 草原、耕作地 |
茶色: | 裸地 |
青: | 水域 |
白: | 雲 |
観測衛星: | 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS) |
観測センサ: | 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2) |
観測日時: | 2010年7月28日08時27分頃(世界標準時間)(図5) |
地上分解能: | 10 m |
地図投影法: | UTM(ユニバーサル横メルカトール) |
AVNIR-2 は、4つのバンドで地上を観測します。図5は、可視域のバンド3(610〜690ナノメートル)、バンド2(520〜600ナノメートル)とバンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなります。