利用研究

2020.06.04(木)

全球降水観測計画(GPM)二周波降水レーダ研究プロダクト(バージョン06X)のリリース開始について

JAXAおよび米国NASAは、全球降水観測計画(GPM)二周波降水レーダ研究プロダクト(バージョン06X)のリリースを開始しました。本データは「GPM DPR Level 2 V06X Experimental productデータ利用ユーザー登録」のページでユーザ登録後に取得できます。
このバージョン06Xは、2018年5月21日に実施したKa帯降水レーダ(KaPR)のスキャンパターン変更に対応した初めてのプロダクトとなります。このスキャンパターンの変更により、Ku帯降水レーダ(KuPR)とKaPRの2種類の情報に基づく、より高精度な降水推定手法を観測幅全体に適用することを実現しました。

JAXAおよびNASAは、2018年5月21日にKaPRのスキャンパターンを図1のように変更しました。KaPRの高感度ビーム(図1ではピンク色で表示)は、従来、観測幅の中心付近を観測していました(図1左)。スキャンパターンの変更後、KaPRの高感度ビームは、KaPRのマッチドビーム(黄色で表示)の外側を観測することで、KaPRによる245km観測幅を実現しました(図1右)。変更の詳細は「GPM/DPR Level-2 ATBD」をご覧ください。

2018年5月21日実施したKaPRスキャンパターン変更の概念図。

図1: 2018年5月21日実施したKaPRスキャンパターン変更の概念図。

左図は変更前、右図は変更後のスキャンパターンを示す。

2019年09月04日 10:35(世界標準時)にDPRで観測したハリケーン「ドリアン」の観測結果。a) KuPR、b) KaPRマッチドビーム, c) KaPR高感度ビーム, d) KaPR (bとcの合算)。

図2: 2019年09月04日 10:35(世界標準時)にDPRで観測したハリケーン「ドリアン」の観測結果。a) KuPR、b) KaPRマッチドビーム、c) KaPR高感度ビーム、d) KaPR (bとcの合算)。

図2は、2019年09月04日10:35(世界標準時)にDPRで観測したハリケーン「ドリアン」の観測結果です。米国立ハリケーンセンターによると、ドリアンは現代の記録では北西バハマ諸島を襲った最強のハリケーンで、多数の死者を出すなど、バハマ諸島に壊滅的な被害をもたらしました(米国ハリケーンセンターの報告)。

2019年09月04日10:35(世界標準時)に「ドリアン」はフロリダ半島の東海上に位置し、観測幅が245kmのKuPR(図2a)では、「ドリアン」の渦巻き状の構造が広域で見ることができます。他方、従来、観測幅が125kmのKaPR(図2b)では、「ドリアン」の中心部分のみしか観測できませんでした。今回、スキャンパターンを変更したKa帯降水レーダの高感度ビーム(図2c)をあわせることで、KaPRで245kmの観測幅を実現し、図2dのように、KaPRでも「ドリアン」の渦巻き状の構造をはっきりと見ることが可能となりました。

DPRでは、KuPRとKaPRにより、同じ降水を2つの周波数で観測することにより降水の推定精度ならびに感度を向上させました。さらにKuPRとKaPRの観測結果の違いを利用することで、霰や雹などの固体降水を検出するなど、様々な降水タイプの分類手法が可能となりました。2018年5月に実施したスキャンパターンの変更により、このようなDPRの2種類の降水レーダ観測による研究成果創出の加速が期待できます。

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