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2019.04.05(金)

春が来た

先週末から関東でも桜の開花が一気に進み、三寒四温の春らしい陽気となってきました。

今回は2017年12月に打ち上げられた気候変動観測衛星「しきさい」で観測された、春を感じる画像をいくつか紹介します。

日本の上空に春が来た!

図1は「しきさい」による、今年の1月3日と3月20日の日本周辺のカラー画像です。1月の図中の冬によく見られる大陸からの強い寒気の吹き出しによる筋状の雲が3月にはなくなりました。一方、3月の画像では、特に春先に多く観測されるエアロゾル(大気中に浮遊する微粒子)が日本上空全体にうっすらと広がり始めた様子がわかります。また、3月は1月に比べ太陽高度が高くなってきているため画像全体が明るく見えており、季節が春になりつつあることを示しています。

 

図1 「しきさい」で観測された日本周辺のカラー画像(左:2019年1月3日、右:2019年3月20日)。
人の目で見た色に近くなるように赤(VN08: 673.5nm)/緑(VN05: 530nm)/青(VN03: 443nm)のチャンネルの観測データをR/G/Bに割り当てた。

植物に春が来た!

図2は「しきさい」のプロダクト(観測データをわかりやすい物理量に変換したもの)の一つである、植生指数の8日平均の画像です(左:2019年1月初旬、右:同3月下旬)。植生指数は植物の活動度の指標となる値で、1に近いほど植生の活動度が高いことを表します。九州の筑紫平野などで春になって植物で覆われている面積が広がっていることがわかります。

図3は九州の筑紫平野と関東平野の植生指数の季節変化を表しています。図2の画像でも確認できるように、筑紫平野と関東平野を比較すると、毎年、筑紫平野の植物の方が関東よりも急速に春を迎えます(1月から4月にかけて、傾きが急になっている)。筑紫平野がふた山になっているのは、二毛作の影響と考えられます。

 

2019年1月1~8日九州地方

2019年3月22~29日九州地方

2019年1月1~8日関東地方

2019年3月22~29日関東地方

図2 「しきさい」で観測された日本周辺の8日平均植生指数画像(左:2019年1月1~8日、右:2019年3月22~29日)。緑が濃いほど植生の活動度が高い。下は九州地方と関東地方の周辺の拡大図。

「しきさい」観測データから得られた関東平野(赤線)と筑紫平野(青線)の平均植生指数の季節変化(破線:2018年、実線:2019年)

図3 「しきさい」観測データから得られた関東平野(赤線)と筑紫平野(青線)の平均植生指数の季節変化(破線:2018年、実線:2019年)

海面水温に春が来た!

図4は「しきさい」の海面水温プロダクトの1か月平均の画像(左:2019年1月、右:同3月)です。日常生活では春になりだんだんと気温が上がってきているのを感じますが、海面水温では逆に1月より3月が温度が低くなっているのがわかります。(右図の方が、10~20℃に相当する緑色の領域が広がっています。)

これは水のほうが空気よりも熱容量が大きい(温まりにくく冷めにくい)ためで、通常、海面水温の季節変化は気温の移り変わりよりも1~2か月遅れることが原因です。図4の青枠で囲まれた領域の平均海面水温に対して、去年(2018年)と今年(2019年)の季節変化を示したものが図5になります。

2018年の平均海面水温の変化を見ると2~3月で最も低く、9月に最も高くなっていることがわかります。過去の季節変化を参考にすると、今後4月以降9月にかけて、海面水温がどんどん上昇してくことが予想されます。

 

図4 「しきさい」で観測された日本周辺の月平均海面温度画像(左:2019年1月、右:2019年3月)。
青枠で囲んだ領域の平均温度の季節変化は図5参照。

「しきさい」観測データから得られた北緯25-30東経140-145(図4青枠の領域)の平均海面温度の季節変化(青線:2018年、赤線:2019年)。2018年6-7月の破線は観測データを再処理中。

図5 「しきさい」観測データから得られた北緯25-30東経140-145(図4青枠の領域)の平均海面温度の季節変化(青線:2018年、赤線:2019年)。2018年6-7月の破線は観測データを再処理中。

海の中に春が来た!

図6は「しきさい」による、今年1月と3月の海のクロロフィルaの濃度分布です。クロロフィルaは、海洋生物や動物プランクトンの餌となる植物プランクトンがどれくらい存在しているかを示します。海中に春が訪れ植物プラクトンが増加することにより、日本海のクロロフィルa濃度が上昇していることがわかります。

陸地と同様、海の春の訪れの時期は地域に大きく依存します。日本海の北緯40度以南は、すでに春季のブルーム(植物プランクトンの増殖)が発生していてますが、それより北の地域はこれから春になる見込みです。例年通りなら北海道沖は4-5月頃、オホーツク海は6月以降にクロロフィルa濃度が高くなり、春を迎えます。

 

図6 「しきさい」で観測された日本周辺の月平均クロロフィルa濃度の画像(左:2019年1月、右:2019年3月)
人の目で見た色に近くなるように赤(VN08: 673.5nm)/緑(VN05: 530nm)/青(VN03: 443nm)のチャンネルの観測データをR/G/Bに割り当てた。

雪と氷の世界に春が来た!

図7は「しきさい」が観測した昨年12月から今年3月までの海氷と積雪の分布(1ヵ月の統計)です。白色の領域が1か月ずっと雪または氷に覆われていた領域、水色から青色にかけて雪や氷に覆われていた時期が少ないことを表します。
過去の記事でもご紹介したようにオホーツク海から南下してきた流氷は1月下旬に北海道に接岸し、2月に流氷シーズンのピークを迎えていました。3月に入り南端の流氷が融解し始めている様子が画像の白色から水色に変化した領域が増えていることからもわかります。

「しきさい」で観測された日本周辺の月統計積雪海氷分布の画像(左から、2018年12月-2019年3月)

図7 「しきさい」で観測された日本周辺の月統計積雪海氷分布の画像(左から、2018年12月-2019年3月)

「しきさい」はほとんどのチャンネルで250mの高い空間分解能で観測できます。植生指数や海面水温などの物理量を高解像度で長期間に渡って観測することができるため、地球各地の季節変化や平年との違いを宇宙から知ることができます。

また、今年3月はまだ大規模な黄砂は観測されていないとのことですが、例年3月~4月は大陸からの風に乗って日本列島に飛来する黄砂が観測されることが多くなります。

「しきさい」は黄砂の観測に有利な近紫外、熱赤外の波長のチャンネルを持ち、250mの高い空間分解能で観測することができます(去年の黄砂記事)。これらの観測は気象庁の黄砂予報の精度向上などに貢献することが期待されています。

観測画像について

画像:観測画像について

図1、2、4、6、7

観測衛星 気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)
観測センサ 多波長光学放射計(SGLI)
観測日時 図1:2019年1月3日(左)、2019年3月20日(右)
図2:2019年1月1~8日(左)、2019年3月22~29日(右)
図4:2019年1月(左)、2019年3月(右)
図6:2019年1月(左)、2019年3月(右)
図7:左から2018年12月、2019年1月、2019年2月、2019年3月

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