利用研究

2015.11.02(月)

JAXA世界の雨分布リアルタイムの公開について

JAXAの地球観測研究センター(EORC)では、気象庁の静止気象衛星「ひまわり」の観測領域について、現在時刻の降雨情報を提供するGSMaPリアルタイム版(GSMaP_NOW)を開発し、「JAXA世界の雨分布リアルタイム」ウェブサイトから公開を開始いたしました(図1)。

 GSMaP(Global Satellite Mapping of Precipitation)は複数のマイクロ波放射計による降雨推定と、静止気象衛星の赤外放射計による雨域の移動推定を組み合わせて作成される衛星全球降水マップであり、「JAXA世界の雨分布速報」ウェブサイトを通じて、観測終了から4時間後に画像とデータを一般に提供しています。さらに、2014年9月からは、全球降水観測(GPM)計画の日本プロダクトの一つとなりました。
 GSMaP準リアルタイム版(GSMaP_NRT)では、衛星データの収集に3時間を費やし、1時間でデータ処理することで観測終了後から4時間後の提供を実現しました。この処理プロセスは、精度確保のために多くの観測データを収集することと、利用用途の拡大のために可能な限り提供速度を早くすることの両者のトレードオフを考慮して設定されました。しかしながら、GSMaP_NRTの利用者が増加(2015年9月末で約1600名)し、さまざまな分野で利用されるようになるにつれて、特にアジアの気象機関や洪水予警報の関係者から、より早い提供に関するリクエストが増えてきました。
 このようなリクエストに応えるため、入力データの待ち合わせを30分に短縮し、さらに静止気象衛星の赤外放射計による雨域の移動推定を30分だけ外挿することにより、「リアルタイム相当」の降雨情報を推定するGSMaPリアルタイム版(GSMaP_NOW)を開発しました。入力データは30分以内に入手できるものに限定されるため、GPM主衛星のGMIや、「しずく」搭載のAMSR2直接受信データ、NOAA衛星やMetOp衛星に搭載されているAMSU直接受信データを利用し、さらに静止気象衛星「ひまわり8号」の赤外放射計データを利用しています。GSMaP_NOWは0.1度格子・1時間平均の降雨分布ですが、更新頻度は30分毎で、たとえば、11:30頃に、10:30-11:29の期間の1時間平均降雨分布が公開されます。
 なお、入力のマイクロ波放射計データが少なくなるため、GSMaP_NOWの精度はGSMaP_NRTに比べると定性的に低くなる傾向があります。GSMaP_NOWの精度検証として、気象庁のレーダアメダス解析雨量(雨量計で補正されたレーダ解析雨量)と日平均・0.25度格子で比較したところ、2015年10月3日~20日の期間について、二乗平均平方誤差(RMSE)は平均で0.20mm/h、相関係数は0.59となりました。同一期間について同様に比較したGSMaP_NRTの場合はRMSEが0.19mm/h、相関係数が0.65であり、GSMaP_NOWの精度は、期間を通じてGSMaP_NRTの精度とほぼ同等か少し低い程度という結果を得ています。
 このようにほぼリアルタイムで降雨情報が提供されることにより、現業ユーザがより迅速に降雨モニタリングに適用することや、雨が降ってから洪水が発生するまでの時間が短い河川流域での洪水の予警報に適用するなど、GSMaP_NOWの利用可能性が広がります。また、GSMaP_NOWの「ひまわり」観測範囲外への拡張についても、将来の課題として検討しています。

観測画像について

図1

観測衛星 全球降水観測主衛星 (GPM Core Observatory)
水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)
MetOP衛星シリーズ
NOAA衛星シリーズ
静止気象衛星ひまわり8号
観測センサ マイクロ波放射計(GMI)
高性能マイクロ波放射計(AMSR2)
改良型マイクロ波探査計(AMSU-A/MHS)
改良型マイクロ波探査計(AMSU-A/MHS)
可視赤外放射計(AHI)
観測日時 2015年11月02日 09:00-09:59 (JST)
2015年11月02日 00:00-00:59 (UTC)

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