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2010.09.29(水)

金山で栄えた佐渡島

佐渡島の全景
佐渡島の全景

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図1 佐渡島の全景

図1は、ALOS(だいち)が2009年11月に撮影した新潟県佐渡島(さどがしま)の全景です。新潟港から日本海に出て、カーフェリーで約2時間半、高速艇で約1時間の沖合にあります。チョウのような形をした島の面積は約855km2で、東京23区とほぼ同じ、沖縄本島の3分の2ほどに相当します。

佐渡島は、画像から分かるように、中央部の国中平野、北部の大佐渡、南部の小佐渡の3つの地域に分けられます。大佐渡には大佐渡山地が走り、海岸線には断崖や奇岩など、日本海の荒波がつくり出した勇壮な自然の姿を見ることができます。それに対して小佐渡の山並はなだらかで、海辺には美しい砂浜が広がります。夏にたくさんの人々が海水浴を楽しむ光景は、さながら南国のリゾートのようです。

相川地区の拡大画像
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図2 相川地区の拡大画像

(Google Earthで見る相川地区(kmz形式、5.00MB高解像度版))

遠流の地として、また、世界有数の金山としての歴史

奈良時代、佐渡島は罪人を送る地のうち最も遠い遠流(おんる:流罪の中でもっとも重いもの)の地の一つに定められました。佐渡島に送られた人物には、承久の乱(じょうきゅうのらん、1221年)に加担した順徳上皇、幕府を批判したとされた日蓮、室町時代の能の大成者、世阿弥(ぜあみ)らがいます。彼らはこの島に、先進的な文化を伝える役割を担いました。佐渡島の人々の間で能が親しまれ、現在も30を越える能舞台が残っているのは、世阿弥の影響とも言われています。

佐渡島はもう一つ、世界有数の金銀の採掘地として歴史にその名を刻んでいます。古くから金銀の産出地として知られていたことは、平安時代の『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』に記述があることからも伺えます。

1600年の関ヶ原の合戦の後、徳川家康は佐渡島を直轄地(天領)とし、本格的な金銀山開発を進めました。図2は、数ある鉱山の中心として栄えた相川地区周辺の画像で、山間の奥に金山の跡があります。17世紀初めの最盛期には、この鉱山は年間で金400kg以上、銀25t以上の産出量を誇り、幕府の財政を支えました。それ以前は寒村に過ぎなかった相川地区には、全国各地から鉱山技術者や商人、採掘人たちが集まり、人口5万を数えるほどになりました。佐渡島の金銀山の評判は海外にも伝わっており、18世紀にヨーロッパで作られた日本地図に、「SADO(佐渡)」、「Minasd’Or(金鉱山)」と記されています。

佐渡の金銀山では、江戸、明治、大正、昭和の各時代にわたって、新技術を採り入れながら採掘が続けられました。しかし、産出量が次第に減ったため、1989年3月、ついにその歴史を閉じました。家康が管理を始めてから閉山までの間に採掘された金は約78t、銀は約2,300 tと推計されています。また、坑道の総延長距離は約400kmにも達します。日本最大の金銀山と称された佐渡金山跡は、現在、資料施設として公開され、往時の繁栄の様を伝えています。

両津港と加茂湖の拡大画像
両津港と加茂湖の拡大画像

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図3 両津港と加茂湖の拡大画像

(Google Earthで見る両津港(kmz形式、7.83MB低解像度版))

図3は、国中平野の北東部にある両津港と加茂湖の拡大画像です。両津港は、新潟港との間にフェリーが運航されている佐渡島の表玄関です。加茂湖は、両津港の背後に位置している湖で、1904年に湖口を開き、両津湾とつながったため、汽水湖となりました。カキの養殖が盛んに行われています。西岸には空港が建設されていますが、現在定期旅客路線は運航されていません。なお、加茂湖の南には佐渡トキ保護センターの施設が点在しています。

トキ

佐渡島にゆかりの深い鳥がトキです。かつては日本各地で見られたトキですが、乱獲や開発の影響で激減し、1971年には佐渡島で生息するだけになってしまいました。関係者による保護と繁殖が試みられましたが、残念ながら、2003年に日本産のトキは絶滅してしまいました。しかし、中国から贈られたトキが、佐渡トキ保護センターで飼育され、2010年8月現在、171羽まで増えています。トキは同センター野生復帰ステーションで、えさのとり方や長距離の飛び方、天敵の認知とそれらから逃げる方法などの訓練を終えた後、自然に放されます。日本で再び、野生のトキが見られる日も遠くないかもしれません。


観測画像について

観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)及び
パンクロマチック立体視センサ(PRISM)
観測日時: 2009年11月13日10時44分頃(日本時間)(AVNIR-2、PRISM同時観測)
地上分解能: 10 m(AVNIR-2)および2.5 m(PRISM)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

AVNIR-2 は、4つのバンドで地上を観測します。図は、いずれも可視域のバンド3(610〜690ナノメートル)、バンド2(520〜600ナノメートル)とバンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。

濃緑: 森林
明るい緑: 草地
茶色: 農地
青灰色: 市街地
青: 水域
白: 道路、裸地、雲

(図2、3)

PRISMは地表を520〜770ナノメートル(10億分の1メートル)の可視域から近赤外域の1バンドで観測する光学センサです。得られる画像は白黒画像です。前方、直下、後方の観測を同時に行いますが、ここでは直下視の画像を使っています。

AVNIR-2の、バンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青色に割り当てカラー合成したAVNIR-2画像を「色相(Hue)」、「彩度(Saturation)」、「明度(Intensity)」に変換(HSI変換)し、明度をPRISM画像で置き換えて再合成することで見かけ上、地上分解能2.5mのカラー画像を作成することができます。図2、3はこのように高分解能の白黒画像と低分解能のカラー画像を組み合わせて合成された高分解能のカラー画像、つまりパンシャープン画像です。

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