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2010.09.01(水)
日本三景・天橋立と舞鶴市
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図1は、ALOS(だいち)が2009年4月に撮影した若狭湾西部の画像です。若狭湾は、東の敦賀湾(画像右端に見えている小浜湾の東方約30km)から西の宮津湾までの支湾からなっています。画像の左側に見える弓状の砂嘴(さし。運ばれた砂が鳥のくちばしの形に堆積した地形)が宮津市にある天橋立です。その東側、画像の中央には港湾都市として発展した舞鶴市があります。2つの市を分けるのは由良川です。画像から、若狭湾はリアス式の入り組んだ湾であることが分かります。湾に見える帯状の模様は、観測時に発生していた赤潮を捉えたものです。
天橋立は、逆さになって見ると天に架かる橋のように見えることからこの名前が付けられました。北側の傘松公園から「股のぞき」で見るのが由来です。丹後半島の東側の河川から流出した砂や小石が、天橋立西側の野田川の流れとぶつかり、砂礫が堆積して作られたと言われています。宮城県の松島、広島県の宮島とともに日本三景に数えられています。
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図2 天橋立の拡大画像
(Google Earth で見る天橋立(kmz 形式、3.94 MB低解像度版))
図2は、天橋立の拡大画像です。弓状の砂嘴は幅20〜170 mで、のべ3.6kmにわたり、歩いて対岸まで行くことができます。一帯には約8,000本の松が生え、その右側の部分は、白っぽくギザギザな形をしています。これは、砂の流出を防ぐため、一定の間隔で築かれた堤防に砂がたまっているためです。天橋立を浸食から守っています。
南側の文珠山山頂にある天橋立ビューランドからの眺めは、龍が天に登る姿に見えることで有名です。また、北側の傘松公園からの眺めは、斜め一文字に見える景観として人気があります。ここには「傘松」という松があるほか、「股のぞき」発祥の地という展望台があります。
天橋立の南側にある橋は旋廻橋です。天橋立と陸地をつないでいますが、船が通るたびに90度旋回するめずらしい橋です。かつては「久世戸の渡し」といわれ、渡し船で天橋立に渡っていましたが、大正12年に手動でまわる廻旋橋ができました。その後、橋の下を通る大型船舶が多くなり、昭和35年5 月から電動式になっています。
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図3は、舞鶴市の拡大画像です。市街は東舞鶴と西舞鶴、大きく二つに分かれています。東舞鶴は軍港から発展した地区で、軍需品や兵器の保管倉庫として明治から大正時代に建てられた赤れんが倉庫群が残っています。また赤れんが博物館は「れんが」をテーマとした博物館で、日本最古級の本格的な鉄骨構造のれんが建造物が元になっています。
西舞鶴は城下町から発展した地区で、戦国時代丹後を平定した細川幽斎(ゆうさい)・忠興(ただおき)親子によって築かれた田辺城の城跡は、現在、舞鶴公園として整備されています。
舞鶴港は、大型のコンテナ船が運航できる埠頭がありませんでした。そこで国際埠頭が舞鶴西港に建設されました。5万トン級のコンテナ船が就航できる多目的国際埠頭として2010年4月から使用されています。現在、中国と韓国との航路が就航しています。画像には建設中の国際埠頭が見えています。
岸壁の母
舞鶴港は、戦後、在外邦人の引き上げ港に指定され、大陸からの引揚げの拠点となりました。1945年から13年に渡って66万人余りの引揚げ者が舞鶴港から上陸しています。旧ソ連からの引揚げ船が着くたびに、桟橋では多くの家族や関係者が集まっていました。その中で一人の母親が注目されるようになりました。この人が「岸壁の母」と呼ばれるようになり、映画や流行歌のモデルとなりました。引揚げ者用の桟橋を見下ろす丘には、公園(舞鶴引揚記念公園)が開設され、1988年に記念館が建設されています。
観測画像について
観測衛星: | 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS) |
観測センサ: | 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)及びパンクロマチック立体視センサ(PRISM) |
観測日時: | 2009年4 月19 日10時52分頃(日本時間)(AVNIR-2、PRISM 同時観測) |
地上分解能: | 10 m(AVNIR-2)および2.5 m(PRISM) |
地図投影法: | UTM(ユニバーサル横メルカトール) |
AVNIR-2 は、4 つのバンドで地上を観測します。図は、いずれも可視域のバンド3(610〜690 ナノメートル)、バンド2(520〜600 ナノメートル)とバンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。
濃緑: | 森林 |
明るい緑: | 森林、草地、農地 |
明るい青灰色: | 市街地 |
茶色: | 裸地 |
青: | 水域 |
白: | 人工構造物、砂 |
PRISMは地表を520〜 770 ナノメートル(10億分の1メートル)の可視域から近赤外域の1バンドで観測する光学センサです。得られる画像は白黒画像です。前方、直下、後方の観測を同時に行いますが、ここでは直下視の画像を使っています。
AVNIR-2 の、バンド3 (610〜690 ナノメートル)、バンド2 (520〜600 ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青色に割り当てカラー合成したAVNIR-2画像を「色相(Hue)」、「彩度(Saturation)」、「明度(Intensity)」に変換(HSI変換)し、明度をPRISM 画像で置き換えて再合成することで見かけ上、地上分解能2.5 m のカラー画像を作成することができます。図2、3はこのように高分解能の白黒画像と低分解能のカラー像を組み合わせて合成された高分解能のカラー画像、つまりパンシャープン画像です。