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2010.02.17(水)

火山と太陽光発電の島・テネリフェ島、スペイン

テネリフェ島は、スペイン領のカナリア諸島に属しています。カナリア諸島は、アフリカ北西部のモロッコと西サハラの沖から約100kmのところにあり、7つの島からなります。火山活動により生成された島々で、アフリカ大陸から隔絶されているため、固有な生物種が生息しています。環境保全の面で、ハワイやガラパゴス諸島と並び重要な地域です。歴史的には、アメリカ大陸への中継地として栄えました。現在では高級リゾート地になっています。

テネリフェ島は、カナリア諸島で一番大きい島で、スペインの最高峰であるテイデ山(3,718 m)があります。また、北西にあるラ・パルマ島には、口径10.4mのカナリア大望遠鏡が設置されています。東隣のグラン・カナリア島にはスペイン国立宇宙航空技術研究所(INTA)の地上局があり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のアンテナも設置されています。

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図1 テネリフェ島

図1は、左半分をランドサット7号が2002年2月に、右半分をALOS(だいち)が2009年7月に撮影したテネリフェ島の全景です。島の大きさは、2,034km2で、沖縄本島の約1.7倍に当たります。島の中心部にある大きなカルデラを擁した火山が、テイデ山です。現在は活動を停止していますが、1700年代の噴火では、大きな被害をもたらしました。現在ではロープウェーが架けられており、頂上近く(3,555m)まで行くことができます。右上の海岸沿いにある町が、州都のサンタ・クルス・デ・テネリフェです。

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図2 サンタ・クルス・デ・テネリフェの拡大画像

図2は、サンタ・クルス・デ・テネリフェの拡大画像です。アメリカ大陸への中継地として15世紀にスペイン人が征服した際に、勝利の印として十字架(クルス)を建てたために、サンタ・クルスの名前が付けられています。17世紀〜18世紀にはイギリスもこの地の支配を狙いましたが、撃退されています。ネルソン提督が右腕を負傷したのも、この時の戦闘です。

サンタ・クルス・デ・テネリフェの北方約8 kmにあるテレシータス海岸は、サハラ砂漠の砂で造った人工海岸です。また西方約8kmにあるテネリフェ北空港では、1977年3月にボーイング747型機2機による衝突事故が発生しています。このため、霧が発生しにくい南部にテネリフェ南空港が新設されました。

なお、空港の右上にあるサン・クリストバル・デ・ラ・ラグーナ旧市街は、1999年に世界遺産に登録されています。

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図3 テネリフェ南空港と太陽光発電施設

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図4 太陽光発電と風力発電施設

(Google Earthで見るテネリフェ太陽光発電施設(kmz形式、1.66MB高解像度版))

図3は、島の南東部の拡大画像です。左下に見える空港は、テネリフェ南空港です。空港の東約5kmほど、山の麓にひし形の人工構造物が見えます。これが太陽光発電施設の太陽光パネルです。図4が太陽光発電施設の拡大画像です。画像中央ペラダ山の麓に、規模の異なる3つの太陽光パネルが設置されているのが分かります。また、東側の太陽光パネルの両側に風力発電用の風車が全部で26基並んでいるのがわかります。

スペインは、ドイツとともに太陽光発電に盛んに取り組んでいます。地球温暖化の原因とされている二酸化炭酸の排出を低減する上で、我が国にも大いに参考になるところです。

テネリフェ島の太陽光発電

テネリフェ島では、日本企業が事業主体となり、太陽光発電プロジェクトが実施されました。プロジェクトスタートからわずか2年弱、2008年後半から操業を開始しています。大型の太陽光発電所は、12.6メガワット(MW)の発電が可能で、今後25年間にわたって操業を続けていく計画です。石炭火力発電所と比較すると、1年当たり約7,200トンのCO2排出削減効果があります。


観測画像について

観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)及び パンクロマチック立体視センサ(PRISM)
観測日時: 2009年7月25日11時54分頃(世界標準時)(AVNIR-2)
2009年10月25日11時54分頃(世界標準時)(PRISM)
地上分解能: 10 m(AVNIR-2)および2.5 m(PRISM)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

AVNIR-2 は、4つのバンドで地上を観測します。図は、いずれも可視域のバンド3(610 〜 690ナノメートル)、バンド2(520〜600 ナノメートル)とバンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。

濃緑: 森林
明るい緑: 農地、草地
明るい青灰色: 市街地
茶色: 裸地
白: 建物、雲

PRISMは地表を520〜770 ナノメートル(10億分の1メートル)の可視域から近赤外域の1バンドで観測する光学センサです。得られる画像は白黒画像です。前方、直下、後方の観測を同時に行いますが、ここでは直下視の画像を使っています。

AVNIR-2の、バンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青色に割り当てカラー合成したAVNIR-2画像を「色相(Hue)」、「彩度(Saturation)」、「明度(Intensity)」に変換(HSI変換)し、明度をPRISM画像で置き換えて再合成することで見かけ上、地上分解能2.5 mのカラー画像を作成することができます。図2、3はこのように高分解能の白黒画像と低分解能のカラー画像を組み合わせて合成された高分解能のカラー画像、つまりパンシャープン画像です。

観測衛星: ランドサット5号 (米国)
観測センサ: セマティック・マッパー (TM)
観測日時: 2002年2月11日(世界標準時)(図1)
地上分解能: 30 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

ここでは米国地質調査所の画像検索サイト USGS Global Visualization Viewerから無料でダウンロードしたデータを用いました。可視域のバンド3 (630〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)、バンド1 (450〜520ナノメートル)に赤、緑、青色を割り当ててカ ラー合成したので、肉眼で見たのと同じ色合いとなります。

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