海洋状況把握（MDA）での衛星データ利用分野

海洋状況表示システム（海しる）への貢献

「海洋状況表示システム」（海しる）は、2016年7月の総合海洋政策本部決定及び2018年5月閣議決定された第3期海洋基本計画に基づき、我が国の海洋状況把握（MDA）の能力強化に向けた取組の一環として、関係府省及び政府関係機関が保有するさまざまな海洋情報を集約し、地図上で重ね合わせて表示できるよう構築した情報サービスで、海上保安庁により運用されています。JAXAは海しるに対して、衛星データによるさまざまな海洋に関する観測データをリアルタイムに提供するとともに、データ利用に関する技術協力を行っています。

図 3-1 海洋状況表示システム（海しる）への協力支援イメージ

関連リンク
海洋状況表示システム（海しる）

油流出監視

海洋における油流出は、沿岸の人間活動や海洋生物などの生態系、海洋資源、海洋環境等に大きな影響をもたらします。最近でも2020年8月に発生したモーリシャス沖における座礁事故による油流出事故は、モーリシャス沿岸に燃料の油が流れ着き、沿岸の動植物や漁業活動に対して大きな被害をもたらしました。油流出のように広い領域に影響をもたらす災害に対して、合成開口レーダで観測を行うことにより、その全容を把握することが可能であり、その情報を迅速に関係機関や現地の対策チーム等に提供することにより、油防除作業、環境分野の支援活動等による被害の最小化に貢献しています。

図3-2 だいち2号によるモーリシャス沿岸における油流出事故の観測

漁業資源管理

衛星データを利用することで、漁場を知ることが出来るため、漁船の燃料の節約など、効率的な漁業を行うことが可能になりました。一方で近年漁獲量の減少が指摘され、水産資源そのものの減少が心配されていることから、漁獲量を適切に管理して、漁業資源を持続的かつ最大限に利用できるようにすることが求められています。そのような資源管理の効果を損なうような違法、無報告、無規制（IUU）漁業を抑制することが重要視されています。そのような中でJAXAは、しずく、しきさい、だいち2号等の観測データや衛星AISによる船舶情報等により、外洋における漁場の把握や漁船の操業、漁獲量の評価、違法漁船の監視等を通じて、水産資源管理に役立つものと期待し、現在研究を進めています。

関連リンク
水産政策の改革について（水産庁）

北極海航路の開発への貢献

近年、地球温暖化が進んだ影響により、北極海での海氷面積が減少傾向にあることから、夏季の北極海航路を利用した船舶の航行について、注目が集まっています。JAXAは、国土交通省国土技術政策総合研究所、国土交通省北海道開発局、青森県及び北海道大学と共同で、JAXAの衛星搭載船舶自動識別装置（SPAISE）及び衛星による海氷データの提供を行うことにより、北極海航路の船舶の航行実態把握とそれに対応した港湾整備への活用可能性を検証する研究を進めています。また衛星による海象や気象の状況とAISデータを組み合わせた北極海航路での船舶最適航路探査も検討されています。