持続可能な開発目標
(SDGs: Sustainable Development Goals)への貢献
SDGsを定めた国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、地球観測と地理空間情報等を含む幅広いデータの活用を追及することが明記されています。国連及び各国の統計局による地球観測衛星データへの期待が高まっています。 JAXAは日本の航空宇宙の中核組織として、科学技術イノベーションを通じて、「持続可能な開発目標」などの地球規模課題に貢献することが使命であると考えており、2030アジェンダにもある通り、技術革新と様々なステークホルダーとの協力を通じて、世界が抱える課題の解決に挑み、誰一人取り残さない、安全で安心な社会の実現を目指しています。SDGs達成のためには、地球で何が起きているのか、そして我々はどのように対処できているのかを客観的に理解することが必要です。地球観測衛星は、宇宙から陸域、海洋、水、大気そして人間活動をグローバルに明らかにすることができます。この衛星から得られるデータや情報は、SDGs達成のためにより良い意思決定と適切な行動をとるための科学的根拠として、我々を導く手段であると考えています。
SDGsとは:
2015年9月、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える国連加盟国首脳の参加のもと、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。このアジェンダに記載されたのが2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標であり、17の目標と169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。この目標は、発展途上国だけではなく、先進国も取り組むものとして、世界中で活動が行われています。
JAXAの地球観測衛星による具体的なSDGsへの貢献:
宇宙から森林変化を監視し、豊かな熱帯の管理を目指す
◆JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)
独立行政法人国際協力機構(JICA)とJAXAは、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)を用いて77か国の熱帯林の伐採・変化の状況をモニタリングし、インターネットにアクセスできる環境であれば誰でも手軽に伐採状況を確認することができる「JICA-JAXA熱帯雨林早期警戒システム(JJ-FAST)」サービスを提供しています。
JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST:英語のみ)
JJ-FAST概要(プレスリリース)
宇宙から海の環境を見守る
◆地球観測衛星による海洋環境、海上活動の把握
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」では、海洋環境や水産資源の保全、持続可能な利用が目指されています。海は広大であり※、その環境状態や、漁業活動などを把握するのに、広域な観測を得意とする地球観測衛星が貢献できます。JAXAでは海洋環境(赤潮や油の流出など)や洋上の船舶を観測する技術を開発し、衛星観測データとあわせて海洋の保全を担う関係省庁に提供することにより、SDGs目標の達成に寄与していきます。
※例えば、日本の領海・EEZ(排他的経済水域)を合わせた広さは約447万キロメートル、日本の国土面積の約12倍にもなります。
さらに海洋は、大気の循環を含めた熱や水の循環といった地球規模の気候変動に極めて大きな役割を果たしています。地球温暖化は海洋環境への影響が大きいことも指摘されており、私たちの生活にも深く関係しています。このため、複数の衛星観測の連携や現場観測・数値モデルとの融合を通じて、海面水温や風速などの海洋状況の把握や、海洋環境の将来予測に役立つことを目指します。
宇宙から降雨を観測、洪水被害を軽減する
◆衛星全球降水マップ(GSMaP)(世界の雨分布速報)
JAXAは、日本、米国、欧州の気象衛星のデータを統合し、1時間毎の世界の降水データを提供する「衛星全球降水マップ(GSMaP)」を公開しています。台風や豪雨等の自然災害において、地上の雨量計や気象レーダによる観測が難しい地域や、海上の降水分布の状況把握の改善は、気象防災機関において大きな課題となっています。GSMaPは、このような課題を抱える気象機関や防災機関において利用されており、利用ユーザは、世界約140か国に広がっています。さらに、この衛星降水データによって国際河川等で観測情報が入手できない上流域の降水量を把握し、地上データも活用することで、数日前に下流地域の洪水を予測する取組を進めています。
https://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm
宇宙から農業を観測、食糧の安定供給に貢献する
◆衛星データを作物生育監視に活用(衛星農業気象監視システム)
世界の農作物の生産状況を正確に把握できれば、食料価格の極端な変動に歯止めをかけ、農業市場の適正化や食料の安定供給に貢献することが期待できます。地球観測衛星から得られる作物の作付状況や、作物の生育に大きく影響を与える降水量、日射量、温度などの農業気象情報は、世界の農作物の生産状況の把握に活用されています。また、JAXAが開発した衛星農業気象監視システムの一部(JASMAI)は、JAXAの成果が活用されており、農林水産省によって運用されています。
JASMIN (農業市場情報に貢献するためのJAXA衛星観測システム)
JASMAI(農業気象情報衛星モニタリングシステム)
大気汚染から人々の健康を守る
◆大気汚染物質監視(ひまわりモニタ)
JAXAは、ひまわり8号のカラー画像及び地球物理量データのクイックルック画像を表示できるウェブサイト「JAXAひまわりモニタ」を公開しています。宇宙からの地球観測によりエアロゾルやPM2.5の流れを把握することによって、発生地点を特定し、地上観測網を補強して汚染予測情報を的確に発信し、大気汚染による健康被害を防止することに貢献します。
SDGs指標に対する取り組み
SDGsでは目標に対する達成度を評価するため、169のターゲットそれぞれに指標が設定されています。指標は国連統計委員会(Statistical Commission)とSDGインディケータ機関間専門家グループ(IAEG-SDGs)によって制定されていて、IAEG-SDGsの地理空間情報作業部会(WGGI)に専門家としてJAXAも参加しており、NASA等とともに指標算定に有用な衛星データの使い方などについて助言をしています。各指標の計算方法や使用データの情報などはメタデータとして国連統計部から公開されています。
JAXAはSDGs指標への地球観測データの活用の促進を進めており、SDGs指標11.3.1「人口増加率と土地利用率の比率」、SDGs指標15.4.2「山地グリーンカバー指数 」の日本の指標の計算において、ALOS高解像度土地利用土地被覆図が利用されています。また、SDGs指標6.6.1「水関連生態系範囲の経時変化」については、JAXAが公開している全球マングローブマップ(Global Mangrove Watch)がマングローブに関する公式のデータソースとしてメタデータに記載されています。
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」への貢献
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」への貢献
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」への貢献
SDGs Geospatial Roadmap / Japanʼs National Experience in Producing SDG15.4.2
https://storymaps.arcgis.com/stories/d93fb8faa2e84f2fad508ff8859abc93
Estimation of the SDGs indicator 11.3.1 in Japan
https://storymaps.arcgis.com/stories/3f9feba2bb7d4e04b0e00f50cc2d7a50