メインビジュアル

大気領域

―大気/雨雲の動きを見極める―

大気環境物質(エアロゾル)、温室効果ガス、水循環、雨雲などの観測を行っています。また、それらのデータを利用するための研究を行っています。

大気環境物質(エアロゾル)監視

黄砂、PM2.5などの大気汚染物質、火山灰、森林火災等によるエアロゾルは、視程の悪化、車や家屋、農作物への付着、健康被害など、人々の生活環境に影響を及ぼしています。太陽光を反射・吸収する効果があるため、地球温暖化の進行にも大きく影響していると言われています。

JAXAでは、JAXAや国内外の衛星データを複合的に利用することでエアロゾルの量や種類を推定し、得られた情報を研究機関や一般利用者に提供する活動を行っています。

また、実測された衛星データをエアロゾル輸送モデルのコンピュータシミュレーションに組み込む(データ同化)ための研究開発も外部機関と協力して行っています。黄砂やPM2.5などのエアロゾルが、いつ、どこに、どのぐらいの濃度で飛来するかが分かるようになり、日常の環境情報の一つとして使われるようになることを目指しています。

拡大

気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)で観測した2020年9月9日のアメリカ西海岸可視画像と森林火災の場所(赤で表示)。森林火災による黄色がかった煙が太平洋側に大量に放出されている様子が分かります。

温室効果ガスの観測

JAXAでは、環境省(MOE)、国立環境研究所(NIES)とともに温室効果ガス観測ミッションの地球観測衛星を用いて温室効果ガス(二酸化炭素、メタン)の観測を行っています。

2009年1月に打上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は、地球全体の二酸化炭素とメタンの10年スケールの変動を観測し続けています。地球大気の二酸化炭素濃度は、化石燃料消費による排出と光合成による吸収のバランスの上に成り立っています。光合成の活動量は季節の影響を受けるため、季節や地域によって二酸化炭素濃度は常に変化していますが、平均化すると地球大気の二酸化炭素濃度は年々増加していることが明らかとなっています。2015年12月には、地球大気全体の月別二酸化炭素平均濃度が初めて400ppmを超過し、400.2 ppmを記録したことがわかりました。

現在では、2018年10月に打上げられた温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)も観測を行っています。2023年度には、温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)も打上げられる予定です。

拡大

地球大気中の二酸化炭素濃度の推移(南北断面)

拡大

「いぶき」によって観測された2015年3月17日の関東地域下層CO2濃度

水循環・雨雲観測

気候変動による豪雨・干ばつ等の極端現象が近年頻発しており、地球規模での水循環の解明が重要となっています。

JAXAでは、複数の衛星データを利用して得られた衛星全球降水マップ(GSMaP)を開発し、データ提供を行っています。全球降水観測(GPM)主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)のデータを基準として、JAXAの水循環変動観測衛星「しずく」のマイクロ波放射計データや、静止軌道衛星のデータなどを組み合わせることで、準リアルタイムで高精度高分解能な降水データ提供を実現しています。

特に、降雨レーダなどの地上観測設備が整っていない国や地域においては、GSMaPのような降雨情報が非常に重要となります。これまで衛星データを利用していなかった、災害分野や農業分野などの新たな分野のユーザーを開拓し、複数の現業機関や企業での定常的な利用が広まりつつあります。

拡大

衛星全球降水マップ(GSMaP)による令和2年7月豪雨の様子
(2020年7月5日17:00の24時間降雨量)

最新情報を受け取る

人工衛星が捉えた最新観測画像や、最新の研究開発成果など、
JAXA第一宇宙技術部門の最新情報はSNSでも発信しています。