MDAに利用される人工衛星データは、大きく分けて船舶動静を把握するためのデータと、気象/海象など海洋環境を観測するデータがあります。
人工衛星による船舶動静把握
人工衛星による船舶動静を把握するためには、衛星搭載の船舶自動識別装置(AIS)と合成開口レーダ(SAR)を利用します。AISは船名、船種、位置、針路、速度、目的地等の情報を周辺船舶や陸上局に向けて、信号を自動的に送信するシステムで、AIS受信機を衛星に搭載することで、衛星から約5,000kmの範囲の船舶の情報を知ることが出来ます。またSARでは、衛星から電波(マイクロ波)を地表に向かって照射し、船舶から反射した電波を受信することで、船舶の位置情報を知ることが出来ます。このAISとSARを組み合わせることにより、AIS信号を発信していない船舶の位置情報を含めて、広範囲の「船舶情報」を把握することが可能になります。
衛星搭載の船舶自動識別装置(AIS)
合成開口レーダ(SAR)
AISとSARの複合利用による船舶動静把握
関連リンク
衛星搭載船舶自動識別システム(AIS)実験(SPAISE)
https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/spaise/
陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)
https://www.jaxa.jp/projects/sat/alos2/index_j.html
https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/alos-2/
先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)
https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/alos-4/
海洋の状況(気象・海象)の観測
海洋における環境情報(海面水温やクロロフィル濃度等)は、海面水温やクロロフィル分布と、漁業の対象魚種が相関するため、漁場の把握に役に立ちます(図2-5)。また船舶の航行では、台風をはじめ強風域や強い降雨を避けるため、海上の気象/海象情報(海上風速や降水量等)が必要となります。
海洋は非常に広大であるため、これらの情報を収集するためには、人工衛星による観測が欠かせません。JAXAでは水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)や、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)及び気象庁の「ひまわり」のデータや、人工衛星による降水量データを複合させた全球の降水マップ (GSMaP) データを提供することにより、漁場の把握や海上の航行安全に役立てています。
漁場把握に利用するデータと観測する衛星:
・海面水温:しずく、しきさい、ひまわり
・海色(クロロフィルa濃度):しきさい、ひまわり
海上航行安全に利用するデータと観測する衛星:
・海上風速:しずく
・降水量(GSMaP):GPM/DPR、しずく
これらのデータは、海上保安庁が運用する「海洋状況表示システム」(海しる)にリアルタイムで提供され、いろいろな海洋情報と地図上で重ね合わせて表示することができるようになっています。
関連リンク
地球観測研究における海洋領域分野 -海洋環境を把握する
https://earth.jaxa.jp/ja/research/fields/ocean/
水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)
https://www.jaxa.jp/projects/sat/gcom_w/index_j.html
https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/gcom-w/
気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)
https://www.jaxa.jp/projects/sat/gcom_c/index_j.html
https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/gcom-c/
全球降水観測計画/二周波降水レーダ「GPM/DPR」
https://www.jaxa.jp/projects/sat/gpm/index_j.html
https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/gpm/
世界の雨分布速報(GSMaP)
https://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm
ひまわりモニタ
https://www.eorc.jaxa.jp/ptree/index_j.html