メインビジュアル

パリ協定への貢献

パリ協定の枠組みの下、各締約国は、統計データから算出した自国の温室効果ガス排出量の一覧表(インベントリ)を作成し、報告することが義務付けられていますが、地球全体を均一に測定できる衛星から得られたデータは、地上観測により得られたデータを補完して、各国が報告するインベントリの正確性を確認する科学的根拠としての役割が期待されています。
2009年、日本は、世界初の温室効果ガス観測専用の衛星である温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を環境省、JAXA及び国立環境研究所(NIES)が共同で開発し、また、2018年には、「いぶき」の観測精度を向上させた「いぶき2号」を打上げ、2機は現在も観測を続けています。

現在、米国航空宇宙局(NASA)や、欧州において温室効果ガス観測衛星の打上げ・運用の計画を持つ欧州宇宙機関(ESA)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)及びドイツ航空宇宙センター(DLR)、欧州気象機関(EUMETSAT)と協力関係を構築し、気候変動枠組み条約締約国会議(COP)をはじめとした各種会議等において、宇宙から得られた温室効果ガス観測データに基づく最新の知見を提供しています。

パリ協定とは:
パリ協定は、2015年12月に気候変動枠組条約第21回締約国会議(UNFCCC COP21)で採択され、2016年11月に発効した、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みです。長期目標として、「世界的な平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度より十分低く保つとともに、1.5度以内に抑える努力すること」を掲げ、すべての国が5年ごとに削減目標を提出・更新する仕組みなどを規定しています。
温室効果ガス濃度の把握のためには、これまで地上観測が主たる方法でしたが、「いぶき」のような人工衛星が定常的に運用されるようになり、地上と宇宙の両方から監視ができるようになりました。地上観測には地域的な特徴を細かく把握できるメリットがあり、人工衛星観測には地球全体の温室効果ガスの濃度を均一に測定できるというメリットがあります。衛星は、地球全体を単一のセンサで測定するので、測定機器や手法の違いによる影響を受けずに、空間的に均一に測定することができます。
2019年、京都で開催された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第49回総会において、排出量インベントリの作成・報告にかかる改良ガイドライン(「2006 年IPCC国別温室効果ガスインベントリガイドラインの2019 年改良」)が採択されましたが、衛星観測データは各国が報告するインベントリの正確性を確認するための手段の一つとして、役割が規定されました。

リンク:
パリ協定(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page24_000810.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000119.html
https://www.env.go.jp/press/106691.html

最新情報を受け取る

人工衛星が捉えた最新観測画像や、最新の研究開発成果など、
JAXA第一宇宙技術部門の最新情報はSNSでも発信しています。