気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change) の評価報告書や、国連気候変動枠組条約(UNFCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)で採択されたパリ協定から明らかなように、地球温暖化をはじめとする気候変動への対応については、世界的な政策課題として各国が取り組んでいます。
JAXAは、地球観測衛星を開発、運用しており、気候変動の実態解明は、これらの衛星の大きな役割の一つです。気候変動の状況を把握するためには、多様な環境要因を“面的に”“全球規模で”“定期的に”観測し、長期間のモニタリングによって変化を抽出することが必要です。そのため、このような測定が実現可能な地球観測衛星が有効な手段となります。また、地球観測衛星と従来の地上観測や航空機観測などと組み合わせることで、気候変動モニタリングの精度向上が期待されています。
気候変動に伴う地球環境の変化を具体的かつ正確に把握・予測することを目的に、2004年に必須気候変数(ECV: Essential Climate Variable)が、国際機関が連携して設立した全球気候観測システム(GCOS:Global Climate ObservingSystem)によって制定されました。ECVとは、地球の気候を特徴づける重要な物理学的・化学的・生物学的変数であり、現時点で図1に示す通り、54の変数を観測することが求められています。ECVに係る観測により得られた気候データ(ClimateDataRecord)は、1)気候変動を理解し予測するため、2)気候変動の影響を緩和し、適応するための手段の指針とするため、そして3)気候変動のリスクを評価し、異常天候の潜在的な原因を明らかにするために必要な実証的証拠としての記録となります。
JAXAは、大気、海洋、陸面、雪氷といった地球の環境変動を長期にわたってグローバルに 観測することを目的とした気候変動観測衛星(GCOM-C)「しきさい」や水循環観測衛星(GCOM-W)「しずく」等を運用しており、これらの観測データはECVへの貢献が期待されています。図2に示す通り、GCOM-Cによる観測が、大気・陸域・海洋の全ての分野で18個のECVに貢献するように、他の地球観測衛星の観測も含め、合計26個のECVの観測にJAXAの衛星は貢献しています。