JAXA地球観測の概要

人工衛星で宇宙から社会に貢献する

近年の夏の暑さや「ゲリラ豪雨」「線状降水帯」などの大雨によって「地球温暖化」を肌で感じている方は多いのではないでしょうか。こうした地球温暖化をはじめとした気候変動、あいつぐ自然災害、これらは地球規模で取り組むべき重要な課題となっています。
この課題に立ち向かい、地球環境の将来予測を行うためには、現状を客観的に把握することが重要です。そのためには地上からの観測だけでなく、地上からは近づくことが困難な陸地や海も含めて広範囲に宇宙から地上を観測することが必要となります。これらのデータを蓄積し、活用する手段を提供することで、社会に貢献することを目指します。

人工衛星での地球観測の特長

  1. 世界中を観測することができる
    人工衛星は高い高度から一定の軌道で観測することができるため、地上からではなかなか近づくことができない山間部、砂漠、海洋、北極、南極といったアクセスが困難な場所も含め世界中の各所を一つの衛星で観測することができます。

  2. 定期的に長期間、観測することができる
    地震や火山活動による地殻変動や隆起は定期的に観測することで、地表面の変化を捉えることができます。
    また、気候変動は1年、2年の観測データから把握することはできません。
    気候変動にかかわる様々なデータを何十年も渡って観測することで、気候変動予測の精度向上に役立てています。
  1. 広域の情報を早く、均一に収集できる
    地球観測衛星は主に、極軌道の一種である太陽同期準回帰軌道という軌道を飛んでおり、高度800km上空を地球の表面をなぞるように飛んでいるため、数日~十数日で全球(全世界)を観測することができます。
  1. 迅速、頻繁な観測
    地球観測衛星は定期的な観測だけでなく、災害発生時に緊急観測を行っています。夜間でも、雨が降っていても観測することができる合成開口レーダ(SAR)を搭載している「だいち」シリーズによって地形の変化を観測したデータを提供することで、防災ヘリのルート検討等に活用されています。
令和6年能登半島地震2022年9月26日と2024年1月1日の観測データによりピクセルオフセット法で検出した地殻変動図
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  1. 様々な情報が得られる
    地球観測衛星は観測する目的にあわせて、様々なレーダ、センサが搭載されており、陸、海、氷、大気など多様な観測を行っています。
    気候変動は二酸化炭素などの温室効果ガスだけでなく、色々な原因でおきているため、長期かつ、複数の地球観測衛星で観測されたデータを組み合わせることで、気候変動予測の精度向上に役立てられています。
地球観測衛星データからわかること
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主な利用分野

  • 気候変動(研究分野)
    地球温暖化をはじめとする気候変動への対応については、世界的な政策課題として各国が取り組んでいます。
    気候変動の状況を把握するためには、大気領域、海洋領域、陸域の多様な環境要因を“面的に”“全球規模で”“定期的に”観測し、長期間のモニタリングによって変化を抽出することが必要です。
    JAXAでは地球観測衛星で観測し、データを提供することで気候変動モニタリングの精度向上に貢献しています。

  • 防災・災害対策
    陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)をはじめとした人工衛星は、広い範囲を定期的に観測することができます。JAXA衛星利用運用センター(SAOC)では、自然災害による影響を最小限に抑え、安心して生活できる社会を作るために、災害対策に関する活動を行っています。

  • 海洋状況把握(MDA)・安全保障
    海に囲まれる日本では海洋環境や洋上の船舶の把握、いわゆる「海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)Jが重要です。広大な海洋は衛星以外での観測は難しく、JAXAは日本の政府機関に様々なMDA情報(海洋、船舶)を提供しています。また、海洋以外についても政府機関への衛星データの提供やデータ利用技術についての協力を行っています。

  • 農林水産業
    農林水産業は、生命を支える「食」と、安心して暮らせる「環境」に直結する重要な分野です。衛星データを使うと、土地の状況を、航空機やドローンより広範囲で把握することが可能です。農作物のでき具合等も把握できるため、農林水産業への利用が広がっています。

  • 土木・インフラ
    地球観測衛星に搭載された合成開口レーダ(SAR)センサを活用することで、一度に広域を観測し、都市の地盤沈下やインフラ施設の監視を行うことができます。土木・インフラの老朽化と維持・更新のコスト増大、現場の人員不足・熟練作業者不足等の社会課題解決にも役立てられています。

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