新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前後の空港の変化について

記事更新日: 2020/12/25
お知らせ

2020/12/25:有料駐車場の台数変化に関する観測結果を追加しました。

2020/09/11:フランス・シャトールー空港(CHR)、イギリス・ボーンマス空港(BOH)、インド・ムンバイ空港(BOM)に2020年5月~8月の比較結果を追加しました。 詳細はこちら

2020/07/20:観測結果に新千歳空港、仙台空港、福岡空港、鹿児島空港、那覇空港の結果を追加しました。 詳細はこちら

2020/06/25:記事を公開しました。

概要

合成開口レーダ(SAR)を用いると、地表面を昼夜ならびに天候を問わずに観測することができます。 JAXAのALOS-2搭載のL-band SARであるPALSAR-2と欧州のセンチネル1搭載のC-band SARを組み合わせることで、世界の代表的なハブ空港における飛行機の状況、特に駐機場での飛行機の新型コロナウイルス感染症の流行前後の変化などを観測しました。 同じ観測データからは、飛行場に隣接する駐車場の新型コロナウイルス感染症の流行前後の変化も確認することができます。

なお、晴天が続く地域においては、欧州の光学衛星であるセンチネル2の利用による観測も行いました。

観測結果

日本、アジア太平洋、米国、欧州等を対象として、2019年など過去の観測データと2020年における観測データを比較し、空港の飛行機、駐車場の車などの新型コロナウイルス感染症の流行前後での変化を観測しました。 ALOS-2、欧州のセンチネル1のSARで観測したデータをカラー合成したり、時系列的にアニメーションにすることで、この変化をわかりやすく可視化することができます。

ここで紹介するデータについては、2020年の新型コロナウイルス感染症流行後のデータを赤色、2019年など過去のデータに青と緑を割り当ててカラー合成したものです。そのため、2020年だけが明るく観測されたところは赤色、2019年だけが明るく観測されたところは青緑色に表示されます。(画像によっては色の割り当てが異なる場合があります)

例えば、空港によって差異がありますが、駐機場やそれ以外の場所で全般的に2020年の新型コロナウイルス感染症流行後は飛行機とみられる赤色が増えていることがわかります。 逆に空港のゲートは青色になっていることが多く、2020年には飛行機がゲートにいない、すなわち、飛行機の運用がされていないことがわかります。 同様に、飛行場に隣接する駐車場にも青色が多く、2019年に比べて、2020年には駐車している車の数も減少していることがわかります。

また、航空会社によっては、飛行機を保管・維持保守するために、違う空港に移動させているケースがあります。米国のBirmingham-Shuttlesworth international Airport (BHM)、オーストラリアのAlice Springs Airport (ASP)、フランスのChateauroux Centre Marcel Dassault Airport (CHR)、イギリスのBournemouth Airport (BOH)などについては、2020年に飛行機の数が増えたことがわかりました。

Alice Springs Airport (ASP)については、晴天が継続しているため、欧州の光学衛星であるセンチネル2を使って、同様の比較を行いました。 光学画像では一目で飛行機とそれ以外が識別でき、駐機場に飛行機が増えていることがわかります。

世界各地の空港を地図で表示

図1-1:ALOS-2による羽田空港の2019/11/28(赤)、2020/03/19(緑)、2020/05/14(青)のカラー合成画像
(駐機場において青、緑、水色に見える部分(画素)は2020年に増加した航空機を表す)
図1-1を高解像度で表示(7.0MB)

図1-2:ALOS-2によるBournemouth Airport (BOH)の2019/05/22(緑、青)と2020/05/20(赤)の観測画像
(赤く表示された部分(2020年のデータに対応)に駐機された航空機が増加している)


図1-3:センチネル2によるAlice Springs Airport (ASP)の2020/03/09(上)と2020/05/28(下)の比較
(下の画像では駐機された航空機が増加している)
観測結果(有料駐車場の台数変化)

ロサンゼルス国際空港(LAX)付近の有料駐車場の車の増減を解析しました。 特に、有料駐車場の車の数が少ない日は、実際の1日の駐車台数と連動していることに注目しています。

2020年4月、3つの国際宇宙機関(NASA、JAXA、ESA)が、1日のさまざまな時間帯に衛星画像解析した結果、駐車ロット内の車の数に大きな変動が見られました。このパターンは、1週間のさまざまな時間や冬休みに旅行者が飛ぶ場合に予想されるパターンと一致しています。しかし、パンデミックの安全制限により旅行がほぼ停止したため、駐車中の車が一定数となっており、空港近くの区画に出入りする車が少ないことを示しています。

LAXのレポートは、NASA、JAXA、ESAによる、コロナウイルスの拡散を防ぐため、空港等の封鎖によって引き起こされた世界中の空港やその他の交通ハブの変化を定量化するための取り組みの一環です。科学者たちは、JAXAのALOS-2とESAのCopernicus Sentinel-1の合成開口レーダ(SAR)データと、NASAが処理したPlanetのSkySatからの高解像度光学リモートセンシングデータの2種類の衛星観測リモートセンシングデータを組み合わせて解析しています。 Planetのデータは、NASAの商用小型衛星データ収集プログラムの一環としてNASAに提供されています。
これらのデータセットを組み合わせることで、空港の駐車場のパターンの変化をより総合的に評価できます。衛星画像を使用して、これらの区画や世界中の車の数の変化を毎日監視できますが、光学カメラは雲を透視できないため、曇りや雨の日の変化を追跡する機能が制限されます。 Sentinel-1衛星とALOS-2のレーダシステムは、雲や雨を透過し、昼と夜の両方で観測を行います。この機能により、SAR衛星がその地域を通過するたびに、つまり週に数回、駐車パターンなどの変化を観測することができます。結合されたデータセットは、単一の衛星システムよりもCOVID-19に関連する人間の活動の変化をよりよく追跡できます。
図2-1に示すLAXの駐車場の車密度指数の時系列変化グラフは、2019年12月と2020年9月の車の総数の時間変化を観察しています。


図2-1. 2019年12月から2020年9月の自動車密度グラフ。

4月、カリフォルニアの初期のパンデミックによる封鎖の影響の波がある程度の落ち着きがみられた頃、ALOS-2とSentinel-1の両方の衛星でLAXに駐車された車の数が減少しつつあることを示しています。観測タイミングは、Sentinel-1は午前6時と午後6時(PST)に、ALOS-2は正午と深夜12時(PST)に通過します。両衛星で観測した車の数の指数は類似しており、COVID-19の影響のピーク時に比べ車が少なく、駐車場に出入りする車が少ないと予想されます。
図2-2は、ALOS-2衛星に搭載されたPALSAR-2機器からのLAXのカラー合成SAR画像を示しています。画像の色は、観測された時期で色付けしていて、青/緑が目立つエリアは、パンデミック規制の前の1月11日に有料駐車場に駐車された車を示しています。赤色が目立つエリアは5月30日に駐車した車が少ないことを示します。白い領域は建物です。


図2-2. ALOS-2LAXデータ。

図2-3と図2-4は、PlanetのSkySat画像と人工知能(AI)を使用した車の検出を赤で示しています。最初の画像は、ALOS-2のSAR画像に対応する、1月の駐車場への車の集中を示しています。 Planetデータを使用した7月の画像では、有料ロットにある車の数がはるかに少なくなっています。レンタカーの駐車台数は依然として多く、需要が少ないことを示しています。


図2-3. 1月のPlanet SkySat画像のAI解析による車の数の推定

図2-4. 7月のPlanet SkySat画像のAI解析による車の数の推定

全体として、PlanetのSkySatは、1月9日に3,708台、7月8日に1,943台の駐車を推定しました。これは、ALOS-2とSentinel-1のSARデータに対応しています。

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関連リンク

ALOS/ALOS2 User Interface Gateway2 (AUIG2)

地球観測研究センターALOS利用推進研究プロジェクト

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