2026.10.20活動報告
衛星データによるインフラ管理の現在地と課題とは
~CONSEOインフラDX勉強会 Vol.2イベントレポート~
2026年9月10日(木)、X-NIHONBASHIにて「CONSEOインフラDX勉強会 Vol.2 ―宇宙の視点を、現場を支える技術の一つに―」が開催されました。
昨年の第1弾に続く今回は、前回の約200名を大きく上回る約450名の方にお申込みいただき、衛星データ事業者だけでなく、建設・維持管理に携わる行政、民間企業、大学・研究機関など、幅広いインフラ関係者にご参加いただきました。今回は、インフラ分野における衛星データの可能性を発信するだけでなく、インフラ側・衛星側の双方から「実際にどう使っていくか」を考える場として、現場への実装や、その中で見えてきた課題に焦点を当てた議論が行われました。
■【第一部 インプットセッション】
インフラメンテナンス国民会議 会長 家田氏
第一部では第三部での討議につながる視点を提供するセッションとして、3名の登壇者による話題提供が行われました。
インフラメンテナンス国民会議会長および政策研究大学院大学の家田 仁 氏による講演では、インフラの維持管理における、本質的なマネジメントへの転換をテーマに話題提供がありました。道路や下水道をはじめとしたインフラの状態やリスクを国民に「見える化」することの重要性や、分野を越えた情報の統合、インフラの課題を国民・社会全体で「わがこと」として共有していくことの必要性が語られ、その実現に向けた衛星への期待も示されました。
国土交通省 総合政策局
公共事業企画調整課 草野氏
続いて、国土交通省 総合政策局 公共事業企画調整課の草野 真史 氏は、総合的なインフラを管理する行政の立場からの視点として、国土交通省が進めるインフラマネジメントの取組みについて紹介しました。インフラの老朽化や職員・建設業の担い手の減少、維持管理コストの増加といった現状において、インフラの予防保全は「人間ドック」と同義であると強調。その上で、新技術の導入・活用や、複数の自治体・分野が連携してインフラを管理する「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」などの取組みが紹介されました。
国土交通省 総合政策局
公共事業企画調整課 草野氏
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 吉田氏
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局の吉田 邦伸 氏からは、国土強靭化や災害対応、インフラ点検、国土管理などの分野において、衛星データ活用の事例が広がっている現状を紹介するとともに、「成長戦略」をはじめとする政府方針においても、衛星データの活用促進や関連市場の拡大が重要な施策として位置付けられていることが示されました。さらに、2026年9月に国土交通省が策定した「国土交通省インフラ分野の衛星データ利用に関する取組方針」について紹介があり、災害時の状況把握やインフラ点検をはじめとする分野で、官民の衛星データ活用を進めている現状や、さらなる活用拡大による価値創出への期待など、今後の展望についても語られました。
■【第二部 インフラ×衛星データ 最新ソリューション・社会実装セッション】
株式会社Synspective 小澤氏
第二部では、衛星データを活用しながらインフラ管理を実際に行っている民間企業や研究機関が、具体的な社会実装事例やそれに伴う課題を紹介しました。
株式会社Synspectiveの小澤 剛 氏は、自社の小型SAR衛星「StriX」を活用したインフラモニタリングや災害時の対応事例について紹介いただきました。2026年8月の千葉県で発生した豪雨では、衛星による撮影から約1時間で浸水域の解析結果を提供できたとのこと。その一方で、撮影したデータを地上へ下ろすまでに時間を要し、10時間以上かかったケースもあり、迅速なデータ提供が今後の課題であると共有されました。
株式会社Synspective 小澤氏
株式会社QPS研究所 徳永氏
株式会社QPS研究所の徳永 博 氏からは、自社衛星QPS-SARを活用した砂防堰堤(えんてい)の除石管理支援サービス開発について紹介がありました。砂防堰堤は土石流の土砂をせき止める役割を有します。同社は衛星画像から溜まった土砂の変化を捉え、一定量を超えると管理者に通知するシステムを日本工営株式会社、株式会社デジオンとで共同開発しています。このようなシステムを整備することで、現地確認の負担軽減や効率的な維持管理を支援するサービスをビジネス展開していくということです。
日本工営株式会社 松本氏
日本工営株式会社の松本 定一 氏からは、衛星データ利用の敷居を下げる取組が紹介されました。例えばインフラ管理における衛星データの実務的活用として、衛星画像を自ら解析する必要なく地盤の変化をWebブラウザ上で確認できる「LIANA」や、茨城県の約720kmの堤防を衛星で確認し、詳細な調査箇所を抽出する「一次スクリーニング」の事例で、これらはすでに実際の業務に組み込まれ始めているとのことです。
日本工営株式会社 松本氏
国際航業株式会社 佐藤氏
国際航業株式会社の佐藤 真人 氏は、衛星やGNSSなど複数の計測技術を組み合わせたインフラモニタリングを紹介しました。工事現場において衛星データが価値となるのは、点検先などを絞り込めることだと指摘。また地下工事では、衛星で捉えた地表面の変動が工事によるものかを見極めるなど、解析結果を現場の判断に使える情報へ変換するまでに、多くの人手と時間を要することがボトルネックになっています。このようなプロセスをAIで自動化する取組みを行っているとのことです。
東京大学 生産技術研究所 竹内氏
東京大学 生産技術研究所の竹内 渉 氏からは、InSARを活用した道路土構造物の維持管理の効率化について紹介がありました。新技術の利用が予算や技術のある地域に偏ってしまうことから、日本全国の地表面変動を把握できる「J-GMS」を作成。誰もが広く利用できる公共的なデータ基盤をつくる取組みが共有されました。
東京大学 生産技術研究所 竹内氏
株式会社天地人 木村氏
地盤変動や地表面温度などの衛星データと他の情報を統合することで効率化や新しいソリューションの実現につながります。JAXAスタートアップである株式会社天地人は衛星データと漏水履歴や水道管の情報、さらには地質などのデータを組み合わせ、水道管の漏水リスク診断を行う、いわば「水道管の健康診断」を実施しています。株式会社天地人の木村 紋子 氏は、衛星データとAIを活用したサービス「宇宙水道局」において漏水リスクの高い場所から優先的に調査することで、従来の調査手法と比較して漏水の発見効率を約6倍に高めた事例もあると紹介しました。
■【第三部 討議セッション】
最後の討論セッションでは、「今のインフラ管理はこのまま続けられるのか?」「衛星データをこれからのインフラマネジメントにどう組み込み、広げていくか?」という二つの問いを軸に、JAXAの青出木 悠人氏によるモデレーションのもと、登壇者による議論が行われました。
国土交通省 国土技術政策総合研究所の祢津 知広 氏からは、従来のインフラ管理の手法では予算や担い手が限られ、今後も、インフラを今のまま継続して使い続けることが難しくなるなかで、建設業界だけではなく、多様な分野の技術や知見を結集し、それぞれの強みを活かして統合的にマネジメントしていくということの重要性が語られました。その実現に向けて、観測の機会が年々増えている衛星データをまず利用してみること、そして業務のカスタマイズをしていくことの重要性について説明がありました。
他の登壇者からは、衛星ありきではなく、まず現場で困っていることやニーズをもとに、衛星で何ができ、何ができないのかへの理解を深めつつ、業務のどこに組み込めるのかをともに探していく必要があるとの所見も挙がりました。
また、衛星だけではできないことを他の技術で補いながら、現場に合わせた事例を積み重ね、その事例を広く世に知ってもらうことも重要との話がありました。導入した自治体の事例を見て他の自治体にも利用が広がるなど、CONSEOやインフラメンテナンス国民会議のようなコミュニティ等での横のつながりや口コミが果たす役割について共感する発言もありました。また衛星データ事業を始めるにあたって、最初の実証相手をどう見つけ、実績につなげていくのかといったヒントも共有されました。
インフラ事業者、民間企業、行政、宇宙関係者がそれぞれの立場で衛星データの活用を「自分ごと」として捉え、まず使ってみること、事例を積み重ね、その可能性を発信し続けていくこと。インフラの予防保全に衛星データを活かしていくための方向性が示される討論となりました。
討議セッションの様子
国土交通省 国土技術政策総合研究所の祢津氏も登壇
勉強会後の懇親会にも多くの方にご参加いただき、それぞれの分野を越えて、登壇者や参加者同士で活発な交流が行われました。今回の勉強会で生まれたつながりが、今後の新たな取組みやインフラマネジメントでの衛星データ活用につながっていくことを期待しています。
ご登壇、ご参加いただいた皆様に、CONSEO一同心より御礼申し上げます。