「平成30年7月豪雨」により、九州、中国、四国、近畿地方はじめ、広い範囲で甚大な被害が発生しました。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。JAXAでは、全球降水観測計画(GPM)主衛星と全球合成降水マップ(GSMaP)で継続的に降水の状況を観測しています。JAXA地球観測研究センターでは、降水状況の把握に関する情報提供の観点から、GPMデータの解析を実施いたしました。
【概況】
2018年6月末に発生し、7月4日にかけて日本南海上から日本海を通って台風7号が日本に接近しました。さらに加えて、西日本と東日本に停滞している梅雨前線の活動が、7月5日から活発な状況が続き、西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となりました(図1)。
図1.
台風7号の経路図(左)と衛星全球降水マップGSMaPによる7月5日10:00から8日9:59の72時間積算降水量(右)
【GPM主衛星による大雨をもたらした梅雨前線に伴う降水の三次元観測】
GPM主衛星は、7月5日19:30頃および7月7日9:30頃(日本時間)に日本列島を通過し、活発化した梅雨前線に伴う降水を観測しました(図2,3)。GPM主衛星には、日本が開発した二周波降水レーダ(DPR)とNASAが開発したGPMマイクロ波放射計(GMI)が搭載されています。DPRは立体的な降水観測が可能で、地表付近だけでなく、高さ10kmまで広がる降水の鉛直構造を捉えています。
DPRによる立体的な降水の観測により、各地の雨の特徴の理解が深まることで、雨を推定する気象予報モデルの改善に貢献できます。このようなGPM主衛星の観測データは、2016年3月から気象庁の現業数値予報にも定常的に使われており、日々の天気予報にも役立っています。
【衛星全球降水マップGSMaPによる降水分布の時間変化】
衛星全球降水マップ(GSMaP)プロダクトはGPM主衛星データと水循環観測衛星しずくに搭載されたAMSR2をはじめとした複数のコンステレーション衛星群(GPM計画に参加する各国・機関の人工衛星群)データから全球の降水分布を算出しています。図4は2018年7月1日9時(日本時間)から7月8日8時(日本時間)までの地表での降水量の時間変化の動画です。6月末に発生した台風7号は、7月1日から4日にかけて日本南海上から接近して日本海を通過し、温帯低気圧化するまでの一連の様子が確認できます。さらに7月5日頃からは、西日本と東日本に停滞している梅雨前線が活発な状態が続き、近畿~中国四国地方をはじめ広い範囲で、数日間にわたって強い雨が続いていることがわかります。
最新のGSMaP観測画像については、JAXAの「世界の雨分布速報」ウェブサイトで公開していますので、ご覧下さい。