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農林水産業

農林水産業は、生命を支える「食」と、安心して暮らせる「環境」に直結する重要な分野です。少子高齢化のなかで、農地・森林・海域の効率的な管理が重要となっています。
衛星データは、土地の状況を、航空機やドローンより広範囲で把握し、整備・更新をしていくことができます。また、衛星センサによっては、土地の地表温や乾燥度、海においては海面温度等が計測できることから、農作物のでき具合等も把握でき、農林水産業の収益向上にも繋がります(図1)。

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図 1:衛星データから解析した地表面温度

このような技術を活用して、世界の主要耕作地の作柄判断を通じて国内外の食料安全保障に貢献するため、農林水産省は衛星データを活用して、国・地域ごとの気象・植生に関わる情報を、農業気象情報衛星モニタリングシステム(JASMAI)を通じて提供しています(図 2)。JASMAIはJAXAが技術移転をして農林水産省が構築したシステムであり、JAXAのGCOM-WやGPMなどの衛星データから作成されている気象(降水量、土壌水分量、地表面温度など)や植生に関わる衛星データが活用されております。

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図 2:農業気象情報衛星モニタリングシステム(JASMAI)のトップ画面
(引用:農林水産省 Webサイトより)

また、水産業では、遠洋漁業に役立つ世界規模の海面水温や潮流、気象情報等を、インターネットを通じ提供するシステムが現在使われており、そこにはJAXAの地球観測衛星データも活用されています(図 3)。「エビスくん」は多くの沖合漁業の漁船に導入されており、漁獲量の増加、漁場探索時間と燃料費の削減に貢献しています。

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図 3:海象・気象情報サービス「エビスくん」で提供される海面水温の画面
(引用:一般社団法人 漁業情報サービスセンターWebページより)

さらに、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)の観測データを用いた海洋環境の把握や水産・漁業への利用に向けた情報を「しきさい水産利用サイト」でまとめてお知らせしています。(図4)

図4:しきさい水産利用サイト

「しきさいポータル」では、例えば、「しきさい内湾モニタ」として「しきさい」が日本国内の内湾を観測して得た懸濁物質濃度とクロロフィルa濃度、海面水温などの情報を公開しています。(図5)懸濁物質濃度やクロロフィルa濃度のデータは、「海水の清浄度」など内湾の環境状態の監視や、改善のための対策検討に活用されることが一般的には知られていますが、このデータは逆に、プランクトンや魚貝類や藻類のえさが豊富であることを示しています。また、海面水温はこれら海の生き物(魚や貝、海苔などの海藻等)の活動を大きく左右するので、漁場の予測や養殖場での管理などに役立ちます。

例えば、JAXAは広島県立総合技術研究所水産海洋技術センターと協力しながら、以下のページで広島県のカキ養殖等の漁業者に水温データを配信しています。2024年の夏時期から「しきさい」の観測データを追加し、それまでの点の観測から内湾の海洋環境の面的な把握に活用されています。

リンク:広島県立総合技術研究所水産海洋技術センター

図5:しきさい内湾モニタ

また、「しきさい流れ藻モニタ」では、「しきさい」が観測した流れ藻指数と大気上端輝度の3バンドRGB画像を公開しています。(図6)

図6:しきさい流れ藻モニタ

このように、農林水産業における情報収集を行う際に、衛星データが活用されています。今まで人や航空機で行ってきた作業を、衛星データを併用もしくは代替することでより効率的に実施できることが期待できます。また、衛星データと他のデータを組み合わせることで、Society5.0やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった社会の実現に、貢献していきます。

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