2026.08.07活動報告

『GOSAT-GW』TANSO-3温室効果ガス観測データ利用の未来~ビジネス利用拡大に向けて~ イベントレポート

2026年8月19日 CONSEO事務局

2026年6月25日、CONSEOと環境省はX-NIHONBASHIにて「『GOSAT-GW』TANSO-3温室効果ガス観測データ利用の未来~ビジネス利用拡大に向けて~」を共催しました。当日は衛星観測データの活用に関心を持つ事業者など多くの方々にご参加いただきました。温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」は2025年6月に打ち上げられ、約1年が経過しました。GOSAT-GW搭載の温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)による観測データは、気候変動科学の発展や政策の推進に貢献するのみならず、ビジネスへの活用も見込まれています。本イベントでは、温室効果ガス観測データ利用の状況と将来の展望等について議論が行われました。

本イベントの講演者による集合写真

基調講演

本イベントでは、GOSAT-GWや衛星データに携わる4人が基調講演をそれぞれ行いました。まず国立環境研究所地球システム領域長の谷本浩志氏が「GOSAT-GW/TANSO-3温室効果ガス観測が可能にする新しいサイエンス」と題し、打ち上げから1年が経過したGOSAT-GWの現在のデータ解析状況と今後の活用に向けた展望を紹介しました。その中で、温室効果ガス観測は気候変動対策の根拠となる科学的エビデンスを提供するものであり、人工衛星観測が地球規模での排出量把握に大きく貢献していることが示されました。そしてTANSO-3が提供する高頻度・高解像度観測データの活用を産学官の連携により脱炭素社会の実現に向けて社会実装や政策立案に結び付けていく重要性を強調しました。
続いてJAXA第一宇宙技術部門GOSAT-GWプロジェクトチームミッションマネージャの岡村吉彦氏が「GOSAT-GW/TANSO-3の概要と運用状況」を報告し、開発者の視点からGOSATシリーズ及びGOSAT-GWの概要とTANSO-3の特徴・運用状況を説明しました。特にTANSO-3に搭載された面的観測や広域・精密観測モードが、従来よりも高頻度・高解像度な観測を実現したこと、温室効果ガス排出状況の把握能力が飛躍的に向上したことが説明され、観測データが幅広い分野で活用される期待が述べられました。

基調講演を行う
国立環境研究所の谷本氏

続いて中央大学研究開発機構助教である大場章弘氏は「IPCCにおけるボトムアップとトップダウンの手法融合への協同作業とBTR(Biennial Transparency Report:隔年透明性報告書)作成支援の取り組み」と題して講演しました。ここでは、モンゴルにおいて環境省と共同で開発したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)における温室効果ガス排出量算定のボトムアップ手法と、衛星観測データや大気モデルを用いたトップダウン手法を組み合わせたハイブリッド手法を用いた排出量検証結果が、世界で初めてBTRの前身となる国連報告書に採用された事例が紹介されました。中央アジア諸国等へのBTR作成支援や技術展開や、衛星データを活用した排出量算定・検証手法のIPCC方法論への反映や国際的なガイドライン化を推進していく考えが述べられました。
最後に、「衛星データが導くサステナブル金融の新たな航路」と題し、株式会社三菱UFJ銀行産業リサーチ&プロデュース部宇宙イノベーション室室長である橋詰卓実氏が講演し、サステナブル金融においては企業の脱炭素への取組を客観的かつ透明性の高いデータに基づいて評価することが重要であり、衛星観測データがその基盤となるエビデンスを提供する可能性を有すると述べました。それにより透明性の高いデータに基づいた公平な市場形成が、積極的に脱炭素に取り組む企業への資金供給の促進になるとの期待が示されました。

基調講演を行う三菱UFJ銀行の橋詰氏

【パネルセッション】テーマ1「GOSAT-GW」TANSO-3温室効果ガス観測データ利用の未来~TANSO-3データプロダクトに関する現状と今後の見通し」

パネルセッションでは、基調講演を行った4名によるディスカッションが行われ、GOSAT-GWとTANSO-3の開発・運用状況や技術的特徴を踏まえ、広域・高分解能観測による温室効果ガス観測の高度化とその科学的・社会的意義について活発な議論が行われました。また、TANSO-3データを活用した排出量の透明性向上やトップダウン解析の高度化は、各国の温室効果ガスインベントリの検証やIPCCへの活用につながる可能性を持つといいます。そして、金融・産業分野では客観的な衛星データがサステナブルファイナンスやメタン排出管理などの意思決定を支える重要なエビデンスとなる認識が共有されました。さらに、衛星データの利活用拡大には、地上観測との連携や国際協力、産学官の連携による検証や標準化が重要であることが確認され、データの一般提供開始を契機として多様な分野での利活用を促進し、気候変動対策や脱炭素社会の実現に貢献していく期待が示されました。

パネルディスカッションの様子

【パネルセッション】テーマ2「GOSAT-GW」TANSO-3温室効果ガス観測データ利用の未来~TANSO-3プロダクトデータのビジネス利用拡大への期待と課題~」

続いてパネルセッションのテーマ2として、一般社団法人SPACETIDE代表理事兼CEOである石田真康氏をモデレーターとして、実際にGOSATのデータの利活用を進めている企業を招いての議論が行われました。初めに4名のパネリストによる簡単な事業紹介が行われ、損害保険ジャパン株式会社の矢野敬祐氏、株式会社Archeda城戸彩乃氏、サグリ株式会社の小林健史氏、株式会社Tellusの山﨑秀人氏よりそれぞれの事業報告として衛星データの活用例などが報告されました。

第2部のパネルディスカッションの様子

その後の全体討論では、主としてGOSAT-GWデータのビジネス活用の可能性をテーマに議論が進められました。まず各社の衛星データの活用状況が確認されるなかで、GOSAT及びGOSAT-2の観測データの利用に関して、レベル4プロダクト(全球のCO2/CH2吸収排出量/濃度を可視化したもの)の衛星データの提供への期待が大きいものの、現実としては多くの事業者がまだ活用できていない状況が明らかになりました。その原因としては、民間企業側ではデータの解析能力や人材不足、投資対効果への不透明感が活用の障壁となって活用や投資などの運用が進まないことが現場の生の声として挙げられました。そこで、民間企業がデータの利活用への投資判断を行いやすい環境整備と、解析基盤や制度整備を含めた官民連携によるエコシステムの構築が今後の社会実装に向けた重要な課題であると結論付けられ、今後のバリューチェーン構築のための協力の必要性が強調されました。

ご参加いただいた皆様、ご協力いただいた関係者の皆様、事務局一同心より御礼申し上げます。