2026.07.24活動報告
ネイチャーポジティブシリーズ第1弾「衛星データ×自然資本可視化テクノロジーが切り拓く、ネイチャーポジティブ事業の実装」イベントレポート
2026年7月17日 CONSEO事務局
2026年6月12日、X-NIHONBASHI TOWERにて衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)によるネイチャーポジティブシリーズの第1弾として「衛星データ×自然資本可視化テクノロジーが切り拓く、ネイチャーポジティブ事業の実装」が開催され、衛星観測データの事業実装に関心を持つ多くの方々にご参加いただきました。このイベントは、2025年11月に開催した特別セミナー「宇宙の視点からとらえるネイチャーポジティブの未来」を踏まえ、ネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる考え方)に向けた衛星データの強みや利用可能性の検討を目的とし、衛星データを活用した自然資本の可視化によるビジネスへの活用や事業実装について活発な議論が行われました。
【第一部:Keynote】 サイエンスが定義する「自然の価値」
シンク・ネイチャー最高科学責任者であるアッテ・モイラネン博士より「生物多様性クレジット・オフセットを成功させるための要件」と題し、基調講演が行われました。講演では、生物多様性オフセットやクレジット化を検討するために重要となる、生態学的損失量の測定方法などが紹介され、オフセットの定量化や損失と獲得のバランスなど、自然配慮型のアクションを進めるうえで重要となる各概念について、詳細に解説いただきました。その上で、データの精緻化のみにこだわるのではなく、一定程度の単純化や推定を交えつつ、実装に向けたアクションを重視していくことがネイチャーポジティブを推進する上で重要であると述べられました。
講演を行うモイラネン博士
【第二部:Tech & Implementation】衛星運用×グランドトルースによる「社会実装」
第二部では、「広域モニタリングを『事業のインフラ』へ変える統合分析」と題したパネルディスカッションが行われました。ここでは、衛星データの強みである広域性、継続性、客観性を活かしつつ、それらを自然資本分野での意思決定に結び付ける「インテリジェンス」とするために必須となるグランドトルース(現場での実測データ)との連携・統合について議論が行われました。特に、事業実装において衛星データの利活用に対する投資を促進するためには、経済的合理性をいかに構築するかが重要なポイントであるとの認識が示されました。
パネルディスカッションの様子(左から五十里氏、山内氏、久保田氏、渡邊氏)
初めに、株式会社シンク・ネイチャー執行役員の五十里翔吾氏より、「株式会社シンク・ネイチャーの取組紹介」が行われました。講演では、衛星データの利活用によって収益を創出している同社の実績をもとに、衛星データの付加価値を高め、ビジネスとしての活用を推進していくための同社の取組について説明が行われました。その中で、収益性を意識し、事業戦略上の意味を持つ「インテリジェンス」としてデータを活用するために、顧客の課題解決につながるロジックをサービス提供者自らが設計することの重要性が強調されました。また、図書館やアカデミアに蓄積された情報を収集・整理し、グランドトルースのデータとして整備するという地道な作業が重要であるとの認識が示されました。
続いて、株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域宇宙システム事業推進部事業開発グループ地球環境計測チーム長の山内淑久氏より、同社の取組が紹介されました。同社では、複数の衛星やセンサーを統合し、高頻度かつ高品質な地球観測データを提供する事業構想や、自然資本観測に向けた同社の取組が紹介されました。また、住友林業との共同事業である「Next Forest社」におけるカーボンクレジットの事業例等、衛星データを活用した自然資本の可視化や、カーボンクレジットによる価値創出、さらには自然環境と社会・経済活動の両立を目指した持続可能な環境保全への取組も紹介されました。ここでは、インフラ事業者として、市場ニーズを踏まえながら地域課題の解決に資する形で衛星を活用していくという、同社のバックキャスト型の事業戦略が示されました。
パネルディスカッションの様子(左から五十里氏、山内氏)
その後に行われた全体討論では、衛星観測データ活用の課題として民間事業者側のニーズに結びつけていくことの重要性が議論されました。衛星データを活用したソリューション事例を具体的に示すことに加え、衛星観測データとグランドトルースデータを戦略的に統合する中で、潜在的なニーズを掘り起こしていく必要性が議論されました。生物多様性分野への投資を事業として成立させるにあたり、ソリューションベースのエコシステムをいかに構築するかという視点が重要であるとの認識が示されました。
こうしたエコシステムの実現に向けて、JAXAがこれまで蓄積してきた観測データと民間衛星事業者との連携強化による需要創出や、CONSEO等のプラットフォームを通じたニーズとシーズをマッチング、さらに、実証事業への投資拡大など、さらなる官民の連携に対する期待も述べられました。
会場の様子
ご参加いただいた皆様、ご協力いただいた関係者の皆様に事務局一同心より御礼申し上げます。