2026.5.29活動報告

GSTCE 『Earth Observation 2.0 ― Insight-as-a-Serviceの実態と、非宇宙分野のユーザへの普及を阻む壁の克服』 イベントレポート

2026年5月13-14日、シンガポールで開催された宇宙会議GSTCE(Global Space technology Convention & Exhibitionにおいて、『Earth Observation 2.0 ― Insight-as-a-Serviceの実態と、非宇宙分野のユーザへの普及を阻む壁の克服』をテーマにパネルディスカッションが行われました。

  • ・イベント開催日時:2026年5月13日(月) 11:25 – 12:10
  • ・パネルディスカッション: Earth Observation 2.0 ― Insight-as-a-Serviceの実態と、非宇宙分野のユーザへの普及を阻む壁の克服/Earth Observation 2.0: The Real Business of Insight-as-a-Service and How the Industry Can Overcome Slow Adoption by Non-Space End Users
  • ・モデレーター: Raha Hakimdavar、SST Think Tank評議会メンバー
  • ・パネリスト:
    Andrew Canales、SkyFi社 最高収益責任者(CRO)
    Beverley Postma、Grow Asia社 役員(ED)
    Clinton Libbey、Kumi Analytics社  創業者兼代表取締役
    杉田尚子、JAXA地球観測プログラム戦略室 計画マネージャ/CONSEO 事務局員
    Steven Ward、Delloite社 マネージング・ディレクター兼気候変動・サステナビリティ部門責任者

GSTCEのパネルディスカッション「Earth Observation 2.0」では、地球観測の社会実装を進めるうえで、技術そのものよりも「利用者に価値をどう届けるか」が重要な論点となりました。登壇者は、衛星データをそのまま提示するのではなく、現場の意思決定に役立つ情報として届けることこそが、普及の鍵だと強調しました。

なかでもCONSEO事務局員でJAXA地球観測プログラム戦略室の杉田尚子氏は、「人々が求めているのはデータではなく情報である」と述べ、地球観測の価値は、データの種類そのものではなく、利用者が必要な答えを得られるかどうかにあると指摘しました。そのためには、提供側から利用側までをつなぐシームレスなバリューチェーンを整え、公共部門が産学官を結ぶハブとして機能することが重要。実際にJAXAは、330社を超える企業等が参加する衛星地球観測コンソーシアムを通じて、非宇宙分野を含む多様な企業との連携を進めていることを紹介しました。

他のパネリストも、それぞれの立場から同様の方向性を補強する発言を行いました。SkyFi社 最高収益責任者(CRO)のAndrew Canales氏は、普及を阻む最大の壁は宇宙ではなく地上の「ラストワンマイル」にあると指摘し、複雑な契約や複数のプラットフォームが障壁になっていると述べました。地球観測データの活用を拡大するには、ユーザが日常的に利用する業務システムにデータを組み込み、容易にアクセスできることが重要であり、SkyFiのようなデータ利用の簡素化を図る取り組みの重要性を強調しました。Grow Asia社 役員(ED)のBeverley Postma氏は、農業従事者が求めているのはデータそのものではなく、実際に意思決定に役立つ具体的な情報であると指摘しました。さらに、農業従事者はリスク回避志向が強く、信頼関係に基づいて意思決定を行うため、肥料業者や農協といった信頼できる仲介者を通じてデータ提供することが、地球観測データの普及において重要であると強調しました。Kumi Analytics社 創業者兼代表取締役のClinton Libbey氏は、利用者が必要としているのは衛星画像そのものではなく、そこから導かれる意思決定に資する情報であり、地球観測データは目に見えない形でシステムの中に組み込まれるべきであると述べました。一方、Delloite社 マネージング・ディレクター兼気候変動・サステナビリティ部門責任者のSteven Ward氏は、技術を前面に出すのではなく、成果起点でサービスを設計し、既存の業務システムに自然に組み込むべきだと強調しました。

議論全体を通じて示されたのは、地球観測の普及の成否は技術の高度さそのものではなく、情報を使いやすい形で社会や産業の現場に届ける仕組みに依存しているという点です。杉田氏が指摘したように、その実現には公共部門、産業界、研究機関が連携し、利用者本位で価値を設計していくことが不可欠です。Earth Observation 2.0は、技術の進化に加えて、届け方の進化によって初めて社会実装が進む段階に入っています。

Photo Credit: Singapore Space & Technology Think Tank

パネルディスカッション登壇者

左からDr Raha Hakimdavar (SST Think Tank)、Andrew Canales (SkyFi)、
Beverley Postma (Grow Asia)、Clinton Libbey (Kumi Analytics)
杉田尚子 (JAXA)、Dr Steven Ward (Deloitte)

Photo Credit: Singapore Space & Technology Think Tank
産官学連携により地球観測データの社会実装を推進するCONSEO事務局・杉田尚子氏