2025.07.09活動報告

GOSAT-GW打上げ応援イベント レポート

2025年7月9日 CONSEO事務局

衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)は、2025年6月28日 (土)、東京・日本橋のX-NIHONBASHI TOWERにて、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」の打上げを応援するイベントを開催しました。
前日に「いぶきGW」という愛称が発表されたばかりの本衛星。当初予定されていた6月24日の打上げは延期となり、改めて6月29日の打上げが予定されている中での開催となりました。
会場には学生やご家族連れなど幅広い世代に来場いただき、YouTubeライブ配信や岐阜かかみがはら航空宇宙博物館でのパブリックビューイングも同時開催されました。司会進行はCONSEO広報アンバサダーの桝太一さんが務め、翌日の打上げへ向けてGOSAT-GW衛星への理解を深め、今後の活躍への期待が一層高まるイベントとなりました。

衛星地球観測と気候変動科学について

CONSEO事務局の杉田尚子氏による開会挨拶では、CONSEOの趣旨やこれまでの取組みについての説明に加え、前日に発表された「いぶきGW」という愛称について紹介されました。

その後、JAXA第一宇宙技術部門 地球観測統括付シニアアドバイザーの沖理子氏が登壇し、地球観測衛星にはどのような種類があり、それらの特徴について紹介した上で、今回のGOSAT-GWがTANSOとAMSRという2つのセンサーを有することを紹介しました。
また、私たちの暮らしに大きな影響を及ぼす気候変動に対処するためには、まず今何が起きているのかを知り、その仕組みを理解し、将来を正しく予測することが重要であり、そうした「気候変動科学」を支えるうえでも、地球全体を長期的かつ継続的に観測する「衛星地球観測」が不可欠であると述べました。

GOSAT-GW TANSOに詳しくなれるお話

「GOSAT-GW」に搭載される2つのセンサーのうち、まずは温室効果ガスを測るTANSO-3について国立環境研究所の藤縄環氏よりビデオ出演でご紹介いただきました。打上げ延期に伴い、種子島宇宙センターでの対応のため、会場での登壇は叶いませんでしたが、TANSO-3がこれまでのTANSOシリーズに比べて、より細かくCO₂の排出源に着目した観測が可能になることや、国際的にも期待が寄せられていることなどが解説されました。

GOSAT-GW AMSRに詳しくなれるお話

続いてGOSAT-GWのもう1つのセンサーであるAMSR3について、JAXA第一宇宙技術部門 地球観測研究センターの山地萌果氏が登壇し解説が行われました。
AMSRシリーズが20年以上にわたり地球の水循環を観測し続けてきたことに加え、直径約2メートルという大型のアンテナが、わずか1.5秒で1回転しながら地球全体の水の動きをとらえている様子が紹介されました。
そしてGOSAT-GWでは、海面水温や海氷分布をこれまで以上に細かく、高い精度で計測できるだけでなく、高緯度域の積雪など従来は観測が難しかった領域にも対応できるようになっている点が強調されました。

GOSAT-GWが活躍することが楽しみになるお話

続くトークセッションでは、実際に衛星データを活用する立場から、気象庁・一般社団法人漁業情報サービスセンター・国立極地研究所の3名の専門家が登壇。気象・水産・極域というそれぞれの分野におけるGOSAT-GWの可能性と期待について語っていただきました。

気象庁の村田英彦氏からは、天気予報の精度を支える数値予報モデルには、現在すでに多くの衛星観測データが活用されていることに加え、GOSAT-GWや今後打上げが予定されているひまわり10号などの新たな衛星のデータによって、さらに予測精度の向上が期待されていることが紹介されました。
こうした精度向上は、気象情報に依存する防災対応や交通インフラの運用などにおいて、より的確な判断を可能にするといった社会経済面での効果にも触れられました。

漁業情報サービスセンターの斎藤克弥氏からは、近年の温暖化等の影響により日本周辺の海域で歴史的な高水温が観測され、「海が変わった」と実感される中で、魚が獲れにくくなっている現状が紹介されました。また、漁業従事者の減少も進む中、スマート水産業の推進や衛星観測データの活用が不可欠であるとのお話もあり、漁業の現場では、魚の移動経路を把握するうえで、経験や勘に加えて衛星データを用いた判断が日常的になっていることも紹介されました。
さらに、GOSAT-GWが打ち上がることで沿岸域でも水温を観測できるようになり、観測範囲が拡大することで、スマート水産業が更に加速するとの見通しを示されました。

そして、国立極地研究所の矢吹裕伯氏からは、衛星観測データを用いて、北極・南極の海氷情報をほぼリアルタイムで公開している取組が紹介されました。また、温暖化の影響などによって北極の氷が急速に減少しており、2025年には冬季にも関わらず、海氷域面積が衛星観測史上最小を記録した事例などについても触れられました。
急激な環境変化により、従来の海氷予測手法では対応が難しくなりつつある中、GOSAT-GWの打上げによって海氷分布の把握精度が向上し、極地を航行する船舶の安全性が高まることが期待されており、北極海航路の利用など新たな漁場の開拓といった経済活動の拡大にもつながり、私たちの暮らしや産業にも影響を与えることが語られました。

それぞれの立場からのリアルな話に、衛星観測データが私たちの暮らしと密接に関係していることが実感できるトークセッションでした。

打上げ映像解説&GOSAT-GWプロジェクトマネージャからメッセージ

イベント後半では、JAXAでロケット開発に携わっている宇宙輸送技術部門 事業推進部の小谷勲氏による打上げ映像解説が行われ、GOSAT-GWの打上げでH-ⅡAロケットは最終号機となることが紹介されました。
ロケットの構造やこれまでの経緯などの解説後、2012年に打上げられた「GCOM-W(しずく)」の打上げ映像を用い、当時を振り返りながら打上げ現場での様子や関係者の心境など、桝さんとの掛け合いを交えて語っていただきました。
会場からはロケットや人工衛星の色の理由や、衛星が高速で地球を周回し続けられる仕組みなどについて質問が寄せられ、その意外な答えに多くの参加者が驚きや関心の声をあげていました。

さらに、GOSAT-GWプロジェクトマネージャを務めるJAXA第一宇宙技術部門の小島寧氏からのビデオメッセージも届けられ、衛星や打上げへの熱い想いが語られました。

今回の打上げ応援イベントには、現地・オンラインを合わせて多くの方々にご参加いただき、イベント終了後も参加者から熱心なご質問が寄せられるなど、本イベントに対する高い関心がうかがえました。

休日のイベントにも関わらず多くの参加者にお集まりいただき、またご登壇者の皆様には入念にご準備いただき、CONSEO事務局一同、心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

※当日の動画や、プログラムや講演で使用された資料については、下記のページよりご覧いただけます。
https://earth.jaxa.jp/conseo/news/20250529-1.html