2022.11.04活動報告
CONSEO設立総会Day2イベントレポート
2022年10月12日(水)、X-NIHONBASHITOWER co-working & conference spaceにて、「衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)設立総会Day2イベント」を開催しました。
9月7日(水)の設立シンポジウムに続く今回のDay2イベントでは、会員の皆様と重点的に議論すべきと考える論点のうち、特に衛星地球観測の目指すべき将来像について、多様な分野から有識者をお招きし、基調講演とパネルディスカッションを行いました。
日時・場所
2022年10月12日(水)13:30-17:15 オンライン配信・会場参加
開会挨拶
角南会長より開会のご挨拶がありました。
「国際社会では新型コロナウィルスの感染拡大・ウクライナ情勢など、今まさに世界は不確実性と危機に直面しています日本においては線状降水帯や激甚災害が増加しており、台風などの被害に脅威を感じている方も多いのではないでしょうか。まさに人類は気候変動にどう取り組んでいくかが問われており、将来を見据えて強靭な社会構造を築いていくことが重要です。
衛星地球観測は、陸域・海洋・大気など多様な環境情報を適切なタイミングで得ることによって、災害発生時の迅速な対応やカーボンニュートラル、或いはSDGsの実現などの多様な課題解決に貢献できます。また、近年はベンチャー企業含む民間企業の宇宙活動が活発となり、官主導から官民連携の時代を迎えています。デジタル分野では、ソサエティ5.0の実現・スマートシティの構築・AI技術発展などの更なるデジタル化が進んでいます。
こうした激動の時代において、産学官による日本の衛星地球観測にかかる戦略を総合的に纏めるとともに、具体的な連携活動を推進し、新たな衛星データの利用によって社会に貢献することを目指し、衛星地球コンソーシアム(CONSEO)を立ち上げました。
本日は設立総会Day2ということで、激動の時代においても未来を見据え、様々な視点から、現在そして未来社会に貢献することを目指し、ご尽力されている方々にお集まりいただきました。衛星地球観測がもたらす将来性・可能性を感じていただければと思います。
衛星地球観測コンソーシアムが目指す未来と取り組みについて
平林毅 JAXA第一宇宙技術部門衛星利用運用センター長
「衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)が目指す未来と取り組みについて」をテーマに、提言書の策定に向けた議論の進め方や、策定における本日のディスカッションの位置付けについてご説明いただきました。政府における衛星戦略を議論する場が整い、民間による宇宙事業の活発化、官主導から官民共創の時代へといったCONSEOの設立背景、PURPOSE/VISION/MISSION を掲げてCONSEOが目指すものは何かというお話がありました。また、衛星地球観測を活用したより良い未来を描くためのアプローチや、将来像の議論・提言のまとめに向けた議論の進め方、分科会・WGの開催についてお話いただきました。
■CONSEOの目的
- ・我が国の衛星地球観測分野の全体戦略等にかかる提言をまとめ政策議論に貢献すること
- ・産学官の連携を推進し、地球観測市場の飛躍的な拡大、研究開発成果の社会実装を促進すること
- ・衛星地球観測の意義価値を発信し、社会全体で衛星地球観測を活用する機運を醸成すること
基調講演
多様な分野から、産学共創や気候変動に関する3名の有識者の方に基調講演(オンライン)をいただきました。
①「未来を実装する」
馬田隆明 東京大学産学協創推進本部FoundX ディレクター
デジタル技術の社会実装には何が必要なのかをテーマとする基調講演です。DX(デジタルトランスフォーメーション)の100年くらい前に起こった変化であるEX(エレクトリックトランスフォーメーション)を振り返り、EXから示唆を得るというお話がありました。技術の社会実装には、技術的なイノベーションだけではなく、制度や組織、仕事のやり方などの補完的イノベーションも必要であり、テクノロジーで社会を変えることと同様に、社会を変えてテクノロジーを活かしてくことが重要とのご講演をいただきました。
社会実装するために「課題を見つけるために、まず理想の未来・インパクトを提示せよ。良いインパクトを掲げて、共感と納得を得て多くの人を巻き込んでいく。」という方法論、社会を変えることでテクノロジーを活かすのだというお話は、まさに衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)の目標を見事に言語化していただいたものでした。
②「宇宙から地球を見て感じたこと」授気候変動対策への貢献に向けた地球観測
油井亀美也JAXA宇宙飛行士/CONSEOアンバサダー
油井宇宙飛行士が2015年に第44次/第45次長期滞在クルーのフライトエンジニアとして国際宇宙ステーション(ISS)に約142日間滞在した際に宇宙から地球を眺めてどう感じたか、また、宇宙から見た地球の美しさと脆弱性への気付きについて、国際宇宙ステーションから撮影された胸に響く画像とともに伝えていただきました。
地球観測は、衛星観測によってデータを集めるというところが主な役割となるが、データだけではなくて、いろいろな人たちの心に訴えるような、人間が見てどのように感じるか、データと気持ちの2つを合わせて地球の未来を作っていけると良いという内容のご講演をいただきました。
③「気候変動対策への貢献に向けた地球観測」
三枝信子 国立環境研究所地球システム領域長
「地球丸ごとより良い未来に向けて」
気候変動対策に向けた衛星地球観測の貢献をテーマに、昨年から今年にかけて公表されたIPCC第6次評価報告書の内容を引用しながら、衛星地球観測への期待についてお話がありました。気候変動が及ぼす観測された影響と経済効果に対し、2度の温度上昇を抑えることによる経済効果は、その緩和コストを上回るそうです。地球規模でのカーボンニュートラルとして、人為起源の排出・吸収だけではなく、自然起源の吸収・排出も含めてトータルでカーボンニュートラルを実現することが大切であり、そのためにはAFOLU(農業・林業・その他土地利用部門)におけるモニタリングが重要となります。
また、パリ協定における進捗確認としてグローバルストックへの貢献など、私たちがまさに直面している気候危機への対策において地球観測を利用する具体的な方法と、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの実現に向けて、衛星地球観測による貢献への期待について示していただきました。
パネルディスカッション
会場にお集まりいただいた各分野の有識者・オピニオンリーダーの方々にご登壇いただき、「地球デジタルツイン・メタバースが基盤となる未来」、スマートで持続的な食料生産の未来」「カーボンクレジットによる持続的な未来」の3つの切り口によるパネルディスカッションを通じて、これらの将来社会像についてご議論いただきました。
①「地球デジタルツイン・メタバースが基盤となる未来」
パネリスト:内山裕弥(国土交通省)、佐藤航陽(株式会社スペースデータ)、佐藤正樹(東京大学)
ファシリテーター:村木祐介(JAXA)
最初のセッションでは、非常に先進的なデジタルツイン、メタバースの取り組まれている産学官のオピニオンリーダーにご登壇いただきました。量子コンピューティングなど計算機能力の飛躍的な拡大とともに、デジタルツイン・メタバースも今後利用が飛躍的に進むと予測されます。国都交通省の都市デジタルツイン(PLATEAU)での衛星データ活用への期待や、メタバース空間上でシミュレーションし現実世界に反映するなど仮想空間ファーストとなる未来が紹介されました。具体的に、衛星地球観測データを使用した気象モデルをメタバース上でシミュレーションする将来像など、気象の制御検証も、もはやSFではないとのお話がありました。
②「スマートで持続的な食料生産の未来」
パネリスト:上原健一(農林水産省)、櫻庭康人(株式会社天地人)、水上陽介(オーシャンソリューションテクノロジー株式会社)
ファシリテータ:藤原謙(ウミトロン株式会社)
2つめのセッションでは、最近重要なテーマとして取り上げられる機会の多くなった「食料生産」について、未来に向けて衛星地球観測データをどのように役立てられていくかを念頭に、デジタル技術を活用した「より持続的・より強靭」な食料生産、そして食料確保の未来像を描きながら、衛星地球観測が果たし得る役割について、パネリストの皆様とご議論いたしました。農林水産省の「みどりの食料システム戦略」のコンセプトを現場にどう取り込んでいくかという農業の問題や、環境が変化しこれまでの経験と勘が使えなくなっていく状況下で、これらをデジタル化するとともに、気候変動の影響を受ける農林水産業について衛星データもデジタル化と合わせて活用してもらうための方策についてご意見を伺いました。衛星地球観測データの活用による生産性と持続可能性の両立についての取り組みや未来像など、まさに理想・インパクトを提示することの重要性が分かりました。
③「カーボンクレジットによる持続可能な未来」
パネリスト:坪井俊輔(サグリ株式会社)、本郷尚(株式会社三井物産戦略研究所)、志村幸美(三菱UFJ銀行)
ファシリテータ:武藤正紀(株式会社三菱総合研究所)
3つ目のセッションでは、カーボンクレジットによる持続可能な未来をテーマに、カーボンクレジットが生み出す価値循環と衛星データの貢献について、、現場の第一戦でご活躍されるパネリストの皆様とご議論いたしました。カーボンクレジットの需要を踏まえたルール策定や政策側の後押しの必要性や、ファクトの把握及び実施状況やクレジットの信頼性の検証のために、衛星地球観測データ活用の有用性が示されました。
今後、需要をふまえたルール化が国内外で進む想定だが、制度化に向けてユースケース創出やその水平展開が重要になっていくため、CONSEOがハブとして機能していくよう、期待が示されました。
閉会挨拶
高薮縁副会長より閉会のご挨拶をいただきました。
「現在、私たちが直面する気候危機では、世界中で迅速かつ抜本的な対策を講じる必要があります。人類が迅速に正しい行動を起こすためには、気候変動に関する諸現象の精度の高いモニタリングやメカニズムの理解に基づいて、出来る限り多くの人にその必要性をきちんと理解してもらうことが必要です。
地球衛星観測は、約70年もの間、大気や海洋・陸域、生態系、災害監視など多くの観点で精度の高い継続的な観測を確立し、社会生活の重要なインフラとなるとともに、大量のデータを蓄積してきました。近年では、小型衛星がスピーディな技術開発を遂げています。気候変動現象のモニタリングやメカニズムの解明には、精度の高い継続観測を強靭なバックボーンとすること、そして新規技術の素早い開発を上手に組み合わせたベストミックスの観測を進めることが重要です。
産学官の幅広い分野の方々に観測技術の現状を知っていただき、蓄積された膨大な観測データの有効活用を考えていくことが大切です。現在のIT技術と産業界のアイデアによって生活や産業の発展にデータを活用できると考えており、CONSEOでの活発な情報交換を通じて、持続可能な社会実現のために衛星地球観測が利用されることを期待しています。」
当日の会場風景
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CONSEOが目指す未来と取り組みについて (CONSEO事務局 平林氏)
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デジタルツインとメタバースをテーマにパネルディスカッション①を実施
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「スマートで持続的な食料生産の未来」と題したパネルディスカッション②
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カーボンクレジットに関して現状と未来について議論したパネルディスカッション③